未来の電子書籍はこんな形になっているかもしれない

皆さんは“電子書籍”という単語を聞くと、どんな形をイメージするでしょうか?

多くの方は、タブレット端末やスマートフォンを用いた媒体を思い浮かべるのではないかと思います。

しかし、実は将来的な電子書籍を読むデバイスは、そのまま「本」の形になっていくのではないか、とも考えられているのです。今回は、それを実現する未来の電子書籍に関わるテクノロジーをピックアップしてみました。

デバイスと本の融合が起きる?

紙の同じ薄さの電子ペーパーが登場

こちらは海外のニュースサイト「CNET」が公開した電子ペーパーを搭載するタブレット端末のデモンストレーションで、筆の質感の調整や表示されるガイドで図形を描くなど、紙にメモを書く要領でスラスラとペンを走らせる様子が窺えます。

電子ペーパーは主にKindleなど、電子書籍を読むタブレット端末で使用されている、極薄のディスプレイです。

文字が浮き上がる仕組みとして、内部には白と黒の非常に細かいマイクロカプセルが入っていて、それらを電動泳動方式によってペーパー内のマイクロカプセルを浮き沈みさせて文字を出現させています。

電子ペーパーのメリットは、現行のディスプレイに比べて消費電力が少なく、それでいて十分な情報量の文章を表示することができることです。

現在の電子ペーパーは白黒の出力しか出すことはできませんが、国内では富士通でカラーの電子ペーパーが開発されており、他にもKindleが採用したEink社の電子ペーパーも「Advanced Color ePaper」という現在の電子書籍リーダーのシステムを応用してカラーの電子ペーパーが開発されました。

富士通のカラー出力が可能な電子ペーパー
http://www.fujitsu.com/global/about/resources/news/press-releases/2010/0507-01.html 

Eink Advanced Color ePaper
http://www.eink.com/electronic-ink.html

上記の動画で紹介されているようなタブレット端末で使用されている電子ペーパーは現在よりも薄くなり、紙と同様の薄さで且つ曲げることもできるようになるようです。

この電子ペーパーが安価で量産されるようになれば、何百頁も重ね、本と同じように背表紙を付けたり、光沢紙状のカバーや革製の高級感あふれるカバーなど、思い思いの表紙をデザインすることができる新しいタイプの「本」になるかもしれません。

現在の本と同様に頁をめくり、読み終えたらパタンと閉じることができる。しかも電子書籍なので、一冊で様々な本を表示することができる。そんな電子書籍が出てくると思うと、私はワクワクしてしまいます。

1-2.表紙をタッチして様々なジャンルの本に変身

この本型電子書籍が実現したとします。すると、小説を読み終えた後に頁を閉じて表紙から魚の図鑑を選択すれば、あっという間に先ほど読んでいた物語の文章が、色とりどりの魚たちが掲載された図鑑に変身するでしょう。

タブレットで書籍を選択する感覚とは違う、まるで本棚から本を取り出すのに近い動作に置き換わっていくかもしれません。

本を持ち運ぶ感触はそのまま

デバイスと本が合わさることによって、外へ出かけたときには1冊の本をカバンに入れて取り出し、手に取って頁をめくる動作が電子書籍でもできるようになるでしょう。

旅行の際にもかさばらず、それでも本の形を維持したまま、沢山の書籍を持っていけるというのも魅力的です。

ちなみにクラウドファンディングのプロジェクトには、マンガ「北斗の拳」を1冊で読める電子本「全巻一冊 北斗の拳」にて、本の質感を保つ工夫を施した電子書籍の開発が進んでいたりするので、上記のような電子ペーパーの「本」も現実味を帯びてくるかもしれませんね。


革新的な電子本「全巻一冊 北斗の拳」|Kickstarterより)

未来の電子書籍から考えられること

スマートデバイスと電子ペーパーの組み合わせが主流に

読書に特化した本型のデバイスの実現と同時に、電子ペーパーを搭載したスマートデバイスを使用する機会が当たり前の日常に変わっていくのではないかとも考えられます。

皆さんが手にしているスマートフォンにも電子ペーパーが普及すれば、欧州を中心に販売されているYota Phoneのように、よりバッテリーの消耗を押さえたモデルが続々と登場するでしょう。

本以外に雑誌、新聞のような形のデバイスが登場

ユーザーの生活スタイルに合わせた電子ペーパーのデバイスも登場しそうです。

電子ペーパーの大きさによっては、雑誌と同じ大きさと感覚のデバイスや、1枚の新聞紙のように大きな電子ペーパーも出てくるかもしれません。

普段はまっさらな紙に、デバイス等を通して自分の欲しい情報が通知されるようになることで、一瞬で情報誌や新聞の号外に様変わりする世の中になったら面白そうですよね。

デバイスを壁や窓、家具等に貼ってニュース・広告を読むようになる

透過できる大型の電子ペーパーをディスプレイとしてリビングの壁や窓に張り付け、情報を見る習慣も出てくると思われます。寝室の天井にスクリーンがあれば起きた直後にニュースを見ることができ、キッチンの冷蔵庫に張り付けて食材の確認やレシピの検索する用途に使われるでしょう。

しかし、時々アクセス時に企業の広告を飛ばす必要が出てくるのは、避けては通れない道になりそうです。

おわりに

今回は、電子書籍に関わるテクノロジーのあれこれについて書いてきました。

しかし、ここに書いたデバイスと本の融合はあくまでも将来的な予想でしかありません。

未来の電子書籍はタブレット端末自体が変化を遂げる場合もあれば、別の技術から思わぬ形で新しいタイプの本が誕生することもありうるでしょう。それだけ未来を正確に予想するのはとても難しいことなのです。

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普段は仕事をしながら執筆と音楽活動を行っています。微力ではありますが、私の書いた記事が皆様のお役に立つ情報でしたら幸いです。愛読書は「WIRED」。