読書としてのTRPG ルールブック読み専のススメ

ダイスを転がしながら、皆で一つの物語を作る……テーブルトーク・ロールプレイングゲーム(TRPG)!

「知ってる」「動画で見たことある」という人は多いですが、「実際に遊んだことがある」という人は意外に少ない遊びです。何しろ色々とハードルが高いんですよね。ルールブックは高い(モノによっては1万円くらいする!!)し、一緒に遊ぶ友達が必要だし、むずかしそうだし、時間がかかるし、友達が必要だし、友達が必要だし、友達が必要だし……。

本当は文庫本サイズのルールブックなら1000円以下のもけっこうあるんですけどね。とはいえ安くても高くても、友達が付属していないのは事実……。

そんな貴方と私に朗報です。TRPGは、誰かと一緒に遊ばなくても楽しいのです!!
TRPGは、読書の対象としても十二分に楽しいモノ。今回は、そんなTRPG読書の楽しみを紹介しましょう。

TRPGって聞いたことあるぞ

読書好きな方々の中には、興味がなくともTRPGという単語をご存知の方も多いでしょう。何しろ、TRPGを遊んでいることを公言している作家さんは意外に多いのです。『fate』シリーズの奈須きのこ先生や『HELLSING』『ドリフターズ』の平野耕太先生は有名ですし、小説『ゴブリンスレイヤー』なんかはモロにTRPGが元ネタになっていますね。

では、TRPGって何でしょうか?

ゲームデザイナー・遊戯史研究者である保多琳氏によれば、TRPGとは以下のように定義されています。

TRPGは、基本的に一人が司会進行役のGMを担当し、他の参加者はプレイヤーとなって、各人一人、ゲーム世界の主役プレイヤーキャラクター(PC)を操作する。そして、GM運営の下、即興で物語をつくりあげていく協力型のゲームである

保多琳「TRPGの歴史、特徴から実地での活用について」『遊戯史研究』(28)

TRPGという表記は、テーブルトーク・ロールプレイングゲームの略。TRPGには国内・海外問わず多彩なシステムがあるので「定義はこれ!」と決めることは難しいのですが、ひとまず、GM(ゲームマスター)とPL(プレイヤー)とで物語を作るゲーム、とざっくり理解して頂ければと思います。

すなわちTRPGは、基本的にGMとPL数人で遊ぶゲームな訳です。PS4やSwitchとの違いはやっぱりそこで、人が集まらなきゃ遊べないゲームです。
だからこそハードルが高いんですよね。まず一緒に遊ぶ友達が必要だし、場所の確保が必要だし、予定をあわせる必要があるし……そもそも「周りにTRPGを遊んでいる人がいない」ってなると、なかなか始めるのが難しいもの。

TRPGのルールブックを買っても、一緒に遊んでくれる友達が付属していない!
という叫びは、ある種の「TRPGあるある」です。

そこで私は主張します。TRPG読み専を楽しみましょう!友達がいなくたって泣かない!

ルールブックを買ったからといって、絶対に遊び尽くさなきゃいけない訳ではありません。ルールブックは“ブック”です。本です。本である以上、そこには読書の楽しみがあります。

TRPGは、読むだけの読み専でも充分に楽しめるのです!!

TRPG読書のたのしみ

TRPGは読むだけで楽しい!!
資料として読んでも楽しいし、小説のように読んでも楽しいし、参考にするにも楽しい……!!

……とはいえ、TRPGはもともと遊ぶために作られたもの。中には、やはり友達と一緒に遊ばないと魅力に気づけないものもあります。ぼっち読み専歴3年以上を誇る私くらいになるとだいたい何を読んでも楽しくなれちゃう訳ですが、最初の一冊はやっぱりちょっと不安ですよね。

そこで今回は、独断と偏見による「読み専オススメTRPG」を紹介します!それぞれ資料のように読んで楽しいもの、小説のように読んで楽しいもの、参考に読んで楽しいものと揃えてあります。気になったものがあれば、ぜひ読んでみてくださいね。

資料を読む:クトゥルフ神話TRPG

ルールブックは読むだけで楽しい。その筆頭はまさにコレ。
2019年現在、TRPG界でおそらくいちばん有名なやつ。

『Call of Cthulhu クトゥルフ神話TRPG』です!!

クトゥルフ神話のクの字も聞いたことのない!って人がいるでしょうか。読書好きなら名前くらいは知ってるはず。多くの作品でモチーフや元ネタとして頻出するのがアメリカの小説家・ラヴクラフトが創り上げた架空の神話であるクトゥルフ神話なのです。

頼りない現実の薄皮を一枚剥げば、旧き神々や外なる神の深淵が垣間見える狂気の世界。そんなクトゥルフ神話の世界で冒険したり探索したり、死んだり殺されたり発狂したり入院したりできるのが、こちらのクトゥルフ神話TRPGでございます。

ゲームやライトノベルでお馴染みのニャル様ことニャルラトテップをはじめ、大いなるクトゥルフ、アザトース、ティンダロスの猟犬に魔導書ネクロノミコンなど基本的な知識はだいたい全部載ってます。小ネタも雰囲気たっぷりで、ラヴクラフト作品の舞台となる1920年代の薬物情報や、クトゥルフ神話世界の宇宙的年表なんかまでとにかく資料が豊富。これを読むだけで妄想は膨らみ、狂気が忍び寄り、魂が異界へと繋がります(容量用法を守って正しくお読みください)。

クトゥルフ神話の入門書としても優秀ですが、設定にはラヴクラフトともその高弟ダーレスともちょっとだけ異なる部分があるので、資料として使う場合はそこだけ注意ですね。

人気のシステムだけあって、YouTubeにもニコニコ動画にもリプレイ動画が無数に投稿されているのも特徴です。リプレイ動画とは、実際のセッションの記録を動画に起こしたもののとこと。読まずに見ても楽しい動画ばかりですが、読んでから見ればもっと楽しくなるはず。

値段は約6000円程度と高めですが、読み応えは抜群。読み専でも充分に満足できます。さらには副読本として、クトゥルフ神話に登場するモンスターが網羅された『マレウス・モンストロルム』もオススメです!

世界を読む:永い後日談のネクロニカ

世界観のエモを楽しむ、クトゥルフ神話とはまた違った読み味のシステムはこちら。
表紙がちょっとエロ……いえ、ちょっとグロいのでやや閲覧注意。

ゾンビ&SF&百合

『永い後日談のネクロニカ』です!!

こちらはタイトルにある通り「後日談の世界」を舞台としたシステムです。
後日談の世界は、その名の通り「終わってしまった世界」です。終末戦争によって文明は滅び去り、主を失ったままゾンビ兵器が永久に戦いを続けている世界。そこで何の因果か、自我に目覚めてしまったゾンビ少女たちの悲劇が主題となっています。

そう、主役はゾンビ少女たちなのです。

死んだはずの自分が目覚めてみれば、地獄のような終末世界。今にも発狂寸前の精神をすり減らしながら、朧げな記憶と未練、そして姉妹たちとの絆だけを頼りに旅をする。そんな救いのない世界が魅力的な一冊です!

どうして世界は滅んでしまったのか?
どうしてゾンビ少女たちが目覚めたのか?
そもそも、この世界のゾンビとは何なのか?
この辺りの設定を読むだけでも、心臓がぎゅっとなること請け合いです。心肺停止ではありません。

ダークでグロテスクで救いのない、しかしほんの一握りの温かみある世界。そこにエモの片鱗を感じる人であれば、読むだけでもめちゃくちゃ楽しめます!実際、私は一度も遊ぶことなく読み専のままネクロニカシリーズを全冊揃えてしまいました。オススメです。

創作に役立てる:ウォーハンマーRPG

読書好きの方の中には、自分自身も創作を行う方も多いでしょう。

そんな創作勢にオススメなのがこちら。エルフやドワーフのいる世界、剣と魔法の古典的ハイ・ファンタジー。

『ウォーハンマーRPG』です!!

見てください、この濃い表紙を。華麗な剣捌きで薙ぎ払い、魔法で傷は全回復するような華々しいファンタジーとは無縁です。筋骨隆々なおっさんが歯を食いしばって戦えばうっかり手足を失ったり、必死で習得した魔法が暴走して虚空に飲み込まれてしまうような泥臭さが特徴の本作。

汚いファンタジー」とすら評される世界を、設定とシステムでこれでもかと表現してくる点が魅力的です。その生々しさが故に、ファンタジー創作の小ネタとして参考になる部分がめちゃくちゃたくさん詰まってます。

まず種族の設定。ファンタジー作品らしく「ドワーフ」「エルフ」「ハーフリング(小人種族)」「人間」といった基本的なラインナップが揃っていますが、こと「エルフ」と「人間」の差異に特徴があります。

ゲーム的な処理では、エルフは「体力は人間より劣るが、魔法力や敏捷性に長ける」というステータスになりがちですよね。ですが、『指輪物語』をはじめとする古典的なハイ・ファンタジーでのエルフは、能力的に人間のほぼ上位互換な訳です。『ウォーハンマーRPG』でもそうしたエルフ観を共有しており、能力面で人間に劣る部分はありません。

エルフや人間の種族的差異をどう描くか?というのは、ファンタジー創作者にとって悩みのタネであり、拘るポイントの一つ。『ウォーハンマーRPG』は、そこに一つのスマートな回答を示してくれます。

エルフの下位互換のように見える人間種族の長所……それは、土壇場の生き汚さです。

『ウォーハンマーRPG』における人間種族は、エルフやドワーフよりも高めの「運命点」というステータスをもっています。運命点を消費することで、ここぞという時の一撃を決めたり、致命的な攻撃を回避するチャンスを得られます。つまり、エルフに比べて人間は、土壇場で切り返す力が強い訳ですね。

こうした「目に見えにくい強み」をステータスとして暗に明に表現するのも、ファンタジー創作の面白さの一つ。貴方の創作にも、人間の生き汚さを設定してみては如何でしょうか。

もうひとつは職業の設定です。こちらはシンプルにわかりやすく「汚いファンタジー」感のある職業が揃っています。最初から騎士や魔法使いといった華々しい職業に就ける訳がありません。キャラクターたちは、最初は「チンピラ」「似非魔術師」「ペテン師」「漁師」「警備兵」などといった、なんとも地味な職業からキャリアをスタートすることになります。

この職業の設定が実にファンタジー創作の参考になります。「小作農」「鉱夫」「炭焼き人」といった世界観を補強するものから、「遺跡荒らし」に「街道巡視員」、「故買人」「代理戦士」「鞭打ち苦行者」といった珍しいものまで。
自作にちょっと変わった職業のキャラクターを登場させたい!と思った時には大変参考になるでしょう。

読むだけじゃ物足りなくなったら

とはいえいくら読み物として楽しいといっても、読んでるうちに遊びたくなってくるのが人情というもの。しかし、周りにTRPGをやってる友達がいない!そもそも友達がいない!さみしい!という環境問題が立ち塞がります。

そんな読み専の貴方と私に、一人ぼっちでも遊べる方法をちょっとだけ伝授します。何しろ私、ぼっち歴は長いですので!

一人で遊ぼう!

実は一人でも遊べるTRPGはあるんです!
クラシックなところだと、『トンネル&トロールズ』にはソロアドベンチャーという一人で遊べるシナリオがありますし(ルールブックとは別売りですが)、新しいシステムだと『ニンジャスレイヤーTRPG』にも一人用のシナリオがあります。

これさえあれば一生一人で遊べますね。友達がいなくたって、寂しくなんかありません。寂しくなんかありませんってば。

リプレイを書こう!

一人プレイ用のシナリオだなんて言ってないで、もういっそ一人でGMとPL数人をやってしまうという方法があります。一人4役だか5役だかやってしまう訳です!

一人でシナリオを用意し、一人で数人分のキャラメイクをこなし、一人でセッションを行い、一人でリプレイを作成してまえばよいのです。リプレイとは、TRPGで行ったプレイングをまとめたモノのこと。実はこういう遊び方はTRPG動画ではよくあるもので、「リプレイ風動画」と呼ばれています。

参考:リプレイ風動画とは|ニコニコ大百科

動画にするには動画作成スキルが別途必要になりますが、別に形式は動画に限りません。リプレイ風小説にしても良いですし、リプレイ風漫画なんて方法もあります。

私自身、一人ぼっちが極まった結果リプレイ風動画を作って遊んでおりました。やってみるとけっこう楽しいのでオススメです!

オンラインで遊ぼう!

もう一人ぼっちはイヤじゃーーー!!
誰か一緒に遊んで欲しいのじゃーーー!!
という貴方の為の最終手段。オンラインセッションに乗り出しましょう。

細かい方法は割愛しますが、twitterで検索すれば初心者を歓迎してくれる人がたくさんいます。今回紹介した『クトゥルフ神話TRPG』ならば連日のように初心者卓が開催されていますし、最近だとTRPG系Vtuberさんの影響か『ダブルクロス』も初心者卓が多いような印象を受けます。

丁寧に、思いやりをもって行動すれば初めてでも大丈夫。オンラインTRPG沼は、いつでも貴方を引きずり込もうと手ぐすね引いて待っております!

おわりに

以上、ぼっちでも楽しめるTRPG読書のススメでした。
TRPGのルールブックは、資料のようにも読めるし、小説のようにも読めるし、参考に役立てることもできるもの。読み専だって堂々とTRPGを楽しみましょう。

クトゥルフ神話世界に触れられる、『Call of Cthulhu クトゥルフ神話TRPG』。
ソンビ&SF&百合の『永い後日談のネクロニカ』。
そして汚いファンタジーの『ウォーハンマーRPG』。
いずれも読み物としても抜群に楽しい逸品です。

正直、今回は紹介しきれなかった魅力的なシステムはまだまだいっぱいあります!
他にも、読み専にもオススメなのがあったらぜひ教えてくださいね。