文学賞を受賞した後の裏話<中小規模文学賞の「作品集」、著者献本って何冊もらえる?>

日本全国津々浦々、様々なところで絶えず募集が行われている公募文学賞。小説執筆の日々の努力が実り、ついに「受賞」の一報が届いたあと、どんなことが起こるのかご存知でしょうか。
表彰式・贈賞式・受賞式……様々な名前のついた式典が開かれ、大きな新人賞では受賞作の出版が行われる場合があるのはご承知のとおりです。

しかし団体や地方自治体が主体となった中小規模の文学賞では、短編での募集も多く、受賞者単独での出版はあまりありません。この場合、受賞作品を集めた作品集が作られることがあります。

今回はこの「作品集」の「著者への献本」について、私の経験に基づきお話いたします。
受賞後、作品集がどのように編纂され、また出来上がった本・冊子がどのような形で一体何冊ぐらい作者は貰えるのか、三つの賞を例にご紹介いたします。

某文学賞① ジャンル:児童文学

応募規模:全国 
応募総数:〜200作  
主催:団体
賞金:30万円

この文学賞の受賞後は、応募した原稿が作品集になるまでに、原稿を修正するチャンスが数回あります。誤字脱字や、意味の通りにくいところを訂正できるので、送った方としては安心できます。
出来上がって献本される作品集はA5サイズの装丁、カバーなしの小冊子です。無料ながら全国に配布される冊子ですので、しっかりした表紙と本紙で作られています。

本賞は、作品集のために挿絵を準備する必要があります。絵心のある人にとっては、小説と絵と両方載せてもらうチャンスですが、そうでない人にとっては少し慌ててしまいますね。自分で描いても人に頼んでも問題ないですが、指定の期日までに用意することになります。

さて、本文学賞ではなんと、小冊子100冊が作者あてに届きます。
親類縁者・友人知人に献本しても余るほどの量をいただけるので、足りないということはありません。むしろ献本してまわるのが大変という人もいるかもしれませんね。もらった本をどのように献本するのかは自由なので、施設への寄付などで対応するのもいい方法かもしれません。

某文学賞② ジャンル:小説・評論など  

ジャンル:一般文芸
応募規模:主催都市居住限定 
応募総数:〜400作(文芸ジャンルすべてを含む)  
主催・協賛:地方自治体・団体
賞金:10万円

主催の都市に居住することが要件となるので、すこしクローズドな文学賞です。小説部門での応募総数は少ないものの、その分長く書き続けている人が激しく競っている印象です。
さて、本賞も作品集が編纂されますが、誤字脱字以外は送付時からいっさい訂正することができません。編集途中でゲラが送られてきますので、その際にチェックして、誤字脱字などを申告することになります。

冊子のサイズはA5版で、表紙はカラー印刷カバー付きで丁寧な体裁です。
肝心の著者への献本は……本文学賞ではゼロです。
作者もすべて自費で購入する必要があります。ですので、たくさん献本しようと思うと少し懐が痛んでしまうかも……。ただし、受賞者特典として、市場への販売価格よりは少し安く提供されます。販売範囲は居住地域が主ですが、地域外の人も主催団体への問い合わせで購入が可能です。

某文学賞③ ジャンル:一般文芸

応募規模:全国 
応募総数:〜150作  
主催・協賛:地方自治体+出版社
賞金:50万円

中小規模文学賞として、とても面白い試みをされている文学賞です。
本文学賞の受賞作は編纂された「作品集」が「出版」されます。
ハードカバーでの出版ですので、本の出版を目指す公募勢には心踊る仕様です。
難点としては、前項ふたつの文学賞では誤字脱字の訂正、つまり自分で校正する機会が設けられていましたが、本文学賞の場合は、送った作品がそのまま書籍に掲載されることとなります。
見直しに相当力を入れていないと、あとで気づいた誤りがそのまま掲載されているのを見つけて、ちょっと残念な気持ちにもなるかもしれません。

そのかわり、贈賞式の際には印刷済みの立派な装丁の書籍を手にすることができます。
地方文学賞にはめずらしく、本は全国販売・書店取り寄せ可能。著者献本の冊数は1冊と少ないものの、本棚に並べても絵になるハードカバーの本ですので、記念になる一冊です。

まとめ

三つの中小規模文学賞の作品集についてお話ししましたが、著者献本の形だけでも三者三様ですね。
作られた作品集は、図書館などに献本され蔵書とされていることもあります。

記念と記録にも残る中小規模文学賞、チャレンジしてみてはいかがでしょうか?

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ABOUTこの記事を書いた人

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物語書き。誰かに届けと叫びながら物語を一心に創る、愛犬家で愛鳥家。猫も好き。
童話から一般文芸まで幅広く手がけ、web連載や公募に勤しむ。短編小説で複数回受賞経験有り。合間にライター業を少し。執筆ジャンルは、ファンタジー、雑学、歴史、動物に関するトピックが多い。北川はライターネーム。歌・料理・釣り・キャンプなど広く浅い多趣味が武器。ワイン・日本酒を片手に、ゆったり晩酌を楽しむのが好き。