ネネネの短歌条例第十三回「どうか」

噴水がゆっくりゆっくり落ちていく。どうか忘れてくれますように。

あの人の赤いまつ毛が抜けるたび終わりの予感を淡くおぼえた。
叶わない夢なら濁ってほしかった。希望のかけらを全部つかって
叫んでも絶望ばかりあでやかに残る。神さま、ひどい奴だね。

呼吸すら苦しいくせに最後まで涼しい顔で笑ってくれた。
(残酷な世界が好きだと言ったのは、ずっと一緒にいられないから?)

あの日から世界の温度はつめたくてぼくの未来は静かに溶けた。
たらればを繰り返しても無意味だね、会いたい人はもういないから。

ありふれた悲しい話。もう少しきれいな歌を作れたのにな。
「さよなら」のやさしい声を聞いたとき、見えた雫は透明だった。

爪痕が消えていくのは分かってる。どうか忘れてくれますように。

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ネネネ

短歌をつくって絵を描くライター。
最近川の近くで一人暮らしを始めました。食べられるチーズと食べられないチーズがあります。特技はおいしいコーヒーのお店を見つけること。