突然だが、あなたは「小説家になろう」をご存知だろうか。
株式会社ヒナプロジェクトが運営するWeb小説投稿サイトのことで、「名前だけは」という人も結構いるのではないかと思う。
小説家になろうは日本最大級の小説投稿サイトです。
小説掲載数957,191作品 登録ユーザ数2,272,734人※作品数・登録人数は2022年5月31日現在
小説を書くことを趣味にする人から生業にするべくデビューを目指す人まで、様々な人たちが執筆した作品を掲載している超巨大小説Webサイトで、その作品群は全て無料で読める。
そこから出版された作品は、「魔法科高校の劣等生」を始め、「ログ・ホライズン」「Re:ゼロから始める異世界生活」「転生したらスライムだった件」など、出版どころかアニメ化もされ、今ではアニメファンからの支持も集めて大人気作品になっているものも数多くある。これらのタイトルだけでも聞いたことがある人は多いだろう。
「『なろう』ってよく耳にするけどそんなに知らない」という人向けに、この1~2年で急に「なろう」の小説にハマった「なろう初心者」の私が、サイトの使い方を解説しつつ、そのおもしろさとハマった理由について考えてみようと思う。
なお、ここで説明している見え方(表示)に関してはPC版のもので、スマホ版はメニューの配置などが違うが、機能的にはそれほど変わりはない。
この記事の目次
新しい作品の見つけ方
ランキングをチェックしよう
「なろう」には、公式サイトのトップに「総合・恋愛・ファンタジー・文芸・SF・その他・異世界転生/転移」と7つのカテゴリーに分かれた月間ランキングがあり、サイトに行けば好きなジャンルの人気作品を読み始めることができる。
総合以外のカテゴリーを見てみると、さらに幾つかに分かれており、例えば「恋愛」では「異世界」と「現実世界」、「その他」では「童話」「詩」「エッセイ」「その他」とあるので、気になるジャンルの中でも好きなものを選ぶことができる。
余談だが、ここで「その他」の「その他」が何なのか、ふと疑問に思って幾つか見てみると、台詞形式のものだったり、ジャンルがバラバラの短編小説をまとめたものだったりしたので、作家が設定をする際にカテゴライズし切れなかった作品のようだ。
もうひとつ、画面右上の検索窓の真上に、「小説を読もう!」という文字が見える。実は、こちらは読むことに特化した姉妹サイトで、「なろう」で書かれたものは「読もう!」でも読める。
「読もう!」のランキングは「なろう」より細かく分かれていて、「ジャンル別・総合・異世界転生/転移」が「月間・週間・日間・四半期・年間・累計」となっている。
その上、「すべて・短編・連載中・完結済」で分かれているので、「更新を待つのが辛いから完結してないとイヤだ!」という人にとっても優しい仕様だ。
ここで疑問に思うのが、「なろう」でも「読もう!」でも、「異世界転生/転移」が一つのカテゴリーとして別枠になっていることだ。「異世界転生/転移」ものの作品数が圧倒的だから、ジャンル別の枠からはみ出ているのだろう。
「なろう」は2016年にジャンル再編を行なっており、この時に別枠で「異世界転生/転移」が登場している。
この年のライトノベルの年間売上ランキングを見てみると、2位から7位、9位という、実に半分以上が「異世界転生/転移」ものである。
参考:ORICON NEWS 2016年 年間本ランキング ライトノベル作品別ランキング 1位~10位
こうしてみると、別枠になるのも頷ける。
色々切り取って見ていると、ずっと同じタイトルが並んでいたり、ちょこちょこ変動があったりしてなかなか面白く、「なろう初心者」では知り得ない「なろう」の歴史を感じて、思わず居座って見比べてしまう。
検索で見つけよう
次は検索機能について見ていこう。検索で大事なのは、検索キーワードだ。
「なろう」と「読もう!」のどちらのサイトにもある画面右上の検索窓に、キーワードを入れて検索すると、ズラリと検索結果が出てくる。
ここで、仮に「なろう」で検索したにもかかわらず、検索結果の上には何故か「小説を読もう!」と書いてあることに気づいても、読む場合はそちらに飛ぶシステムのようなのでスルーしよう。
検索キーワードは自分で入力しても勿論いいのだが、既にあるキーワードの中から選択して絞り込んでいくこともできる。これは自分の好みの作品を探しやすい。作品設定、登場人物、時代など、それぞれ選択できる。
例えば、西洋のシリアスもので、勇者が出てくる逆ハー(逆ハーレム)バドエン(バッドエンド)なんて検索も可能だ。そんなのあるのかなと試しに入力してみたら、一件だけヒットした。自分が好きな読みたい設定を複数挙げているのだから、否が応でも期待は高まる。
アニメ化作品に注目しよう
アニメの続きが気になり、原作を求めて「なろう」を漁るという人も多いだろう。
現在、「なろう」等に掲載されたWeb小説が出版社の目に留まり書籍化され、人気が出るとコミカライズされ、さらにアニメ化される、という流れが出来上がっている。
漫画やアニメで作品に触れて「おもしろかった」から「続きを知りたい」んだったら、原作を検索するのは必然と言える。
ランキングの「累計」を選ぶと、売上がシリーズ累計3,000万部超えなど、驚異的な数字を叩き出すような作品がズラリと並んでおり、そのほとんどがどこかで見たことのあるタイトルで、多くはアニメ化されている。
たくさんの支持を集めている作品というのは、やはりそれだけおもしろいのだ。
累計の順位はそう簡単には変動しない。とりあえずそこから攻めても良いかもしれない。
時には寄り道もしてみよう
なろう初心者の私は、「なろうと言えば異世界もの」という程、ファンタジー要素強めのライトノベルを思い浮かべる。
しかし、ジャンル別のカテゴリーを見てみると、推理小説や歴史もの、詩や童話など多岐にわたり、異世界ブームに左右されず書き続けている作家たちも結構いることが判る。
考えてみれば、読者にもファンタジーもの以外を読む人もいれば、たまには別のジャンルを読みたくなる人もいるわけで。そういう意味では多様なジャンルが同じサイトに集まっているのは、探す手間も省けて読者としてはとても有難い。
読んだ人たちのイチオシレビューやピックアップ作品などもあるので、あちこち目移りしながら探す時間も楽しいかもしれない。
そのうちこれだ!という作品にも出会えるだろう。
作品の更新チェックの仕方
ランキングや検索して読みたいものを見つけたら、いよいよ作品を読み進めていこう。
読んでいる作品が多くなると、どの作品がいつ更新されたのか分からなくなりがち。そこで、作品の更新チェックをする方法をいくつか紹介したい。
ブックマーク登録をしよう
「なろう」に会員登録をすると、マイページからブックマーク管理を行える。
(ユーザーページは「読もう!」ではなく「なろう」の方の仕様だが連携している)
ブックマークした作品は自由にフォルダに振り分けられるようになるので、用意されたフォルダに、「購読中」とか「読了」とか「後で読む」とか、自分で適当な名前を付けて移動させる。
また、しおり機能も備わっている。それぞれの作品の読んだところにしおりを挟んでおけば、作品の目次ページにしおりが表示され、どこまで読んだかもわかるようになっている。
さらに、ブックマークしている作品が連載中の場合、更新通知のON/OFFもできる。これは大変便利で、通知をONにしておくと、ユーザーホームにある「更新チェック中の小説」欄に、更新された作品が「更新日時・しおりの話数・最新話数」と一緒に表示され、更新があると一目瞭然なのだ。
話数にはリンクが貼ってあるので、ワクワクしながら最新話に直接飛んでもいいし、前回の話はどうだったっけ?と確認してもいい。
それから、期待以上に良かった完結作品で、更新日が割と最近の番外編があるものは、念の為に通知をONにしておくことをオススメする。ふいに更新されることがあるからだ。
余談だが、作品ページの冒頭に悲しいお知らせがあることもある。
この連載小説は未完結のまま約7年以上の間、更新されていません。
今後、次話投稿されない可能性が極めて高いです。予めご了承下さい。
これはある超人気作品のトップページに記載されていた文言だが、作品が完結済に設定されていないまま、長く更新されていない場合に表示される。この作品は既に書籍化されており、今も継続して出版されているが、「なろう」での発表が無くなっているためである。
完結はしていないのだから完結済にもできないし……ということなのか、その辺はわからない。どちらにせよ、急に更新される可能性も捨てきれないため、通知はONのままだ。
作家をフォローしよう
今連載中の小説が好みだったら、作家ページに行ってみるのもいい。
もしかしたらそれまでに完結している小説があるかもしれないし、その小説も気に入るかもしれない。
作家によっては同時に複数の小説を連載していることもあって、「これ見逃してたー!」ということもたまにある。
作品ごとにブックマークもできるが、気に入った作家をフォローしておくと、新着小説のアラートや作家の「活動報告」がユーザーホームに表示される。
「活動報告」では、作家の近況や書籍化・コミカライズ化などを知ることができる。
「最近この小説の更新が無いなぁ?」と思っていたら、ある日「体調を崩していて更新が遅れてすみません」と申し訳なさそうに呟いていたりする。そのコメント欄には、「お大事になさってください」「更新はいつでもいいです!早く体調が良くなりますように」などと、読者の愛に溢れかえっていてほっこりしたりする。
ところで前述の「完結作品が最近の日付のものは更新通知をONにせよ」の理由だが、先日、あるお気に入り作家の新着小説のアラートの中に、完結したはずの小説タイトルが表示されていた。
不思議に思いつつリンク先に飛ぶと、なんと番外編が掲載されていたのである。よく見ると日付はひと月以上前である。気付くのが遅すぎる。
完結した作品の通知をOFFにしたせいで、私はひと月もお気に入り作品の番外編を寝かせていたのか……と、天を仰いだのは書くまでもないだろう。
ただ、作家をフォローしていたお陰で見逃さずに済んだことに関しては、自分を褒めたい。
ということで、お気に入り作家のフォローはかなり大事。更新通知のOFFは慎重に。
作家の応援の仕方
読んだ作品がおもしろかったら、その気持ちを誰かに伝えたくなるのは必然で、SNSで呟く人も多い。作品をシェアして皆に教えてくれる人も結構見かける。
ただ、その昂ぶった感情を直接作家に伝える人はどのくらいいるだろう。
創作活動をしている人は、一次だろうが二次だろうが、みな感想がほしいはずだ。最初はそんなことを考えていなかったとしても、できあがった作品が満足できるものであればあるほど、他人がどう評価をするのか、多少なりとも気になってくる。
評価というものは誰しも気になるし、できれば「よくやった!」と褒められたい。創作物で自己表現しているとなれば、できるだけ多くの人に「おもしろい」と言われたいだろう。
一読者としての感想で多少なりとも喜んでもらえるのであれば、こんなに嬉しいことはない。そんな時、うってつけの機能が「なろう」には備わっている。
作品を応援しよう
本文を読み終えたら、その下段に「感想を書く」「いいねで応援」「ポイントを入れて作者を応援しましょう!」という表示がある。
・いいねで応援
短編ならその作品を、連載なら各話ごとに「いいね」できる、簡単且つダイレクトな応援方法だ。
感想を書く時間がないとか、そこまで熱いというわけではないけど良かったとか、そこは人それぞれ何かしらあるとは思うが、とにかく良かったから「いいね」だ。
・ポイントで応援
ポイントで応援は「なろう」の評価システムで、星5つで評価する。星1つにつき2ポイントなので、ユーザーの持ち点は10ポイントだ。
「なろう」のランキングは、この星の評価とブックマーク件数(ブックマーク1件につき2ポイント)の合計ポイントで算出されている。
自分のポイントがランキングを左右するのかと思うと、真剣に悩むし少々緊張するが、良い作品を皆にも知らせる良い機会だと思って、積極的に利用している。
・感想で応援
「なろう」には作品の感想を書くコメント欄があり、「良い点・気になる点・一言」とそれぞれ分けてコメントできる。全部埋める必要はなく、ただ「おもしろかったです!」と一言残すだけでも作家のテンションは上がると思うし、どこで泣いたとか、どこの表現が良かったとか添えると、きっとPCの向こうではガッツポーズで小躍りしてくれるはずだ。
また、連載作品には各話ごとに感想を書くこともできるのも特徴的で、更新があるたびに感想を書く常連さんもいる。
気になる点も、あれば遠慮なく書いていいと思う。ただ、匿名だからといって暴言を吐くのは品がないので、言葉は慎重に選びたい。作家さんのメンタルを傷つけて続きが読めなくなったりしたら本末転倒だ。
作家本人から返信がくることもある。素直に自分の感動を伝えた結果、喜んでくれているのが伝わる作家の言葉に、こちらこそテンションが爆上がりする。感想を伝えて良かったと思う瞬間である。
なお、作家によってはこれらを設定していない人もいる。ランキングに興味がなかったり、完結してから何年も経っていたり、理由は様々だろう。
そんな時はメッセージ機能もあるので、作家に個別にメッセージを送ることも可能だ。どうしてもこの感動を伝えたいけど、人に見られるのはちょっと……という人や、長文になりそうだからお邪魔な気がする、という人は、メッセージを利用してもいいだろう。
誤字を報告しよう
「なろう」には無料で読める小説しかない。当然のことながら、文章の校正も作家一人でやっているだろう。何度も見返して誤字脱字を潰し、もう無いだろうとUPした後で見つかる。それは、悲しいかな文字書きにとってのあるあるな話だ。
作品を読んでいて誤字脱字を見つけたら、本文の下部にある「誤字報告」をそっと押してほしい。その話数の全文が表示され、見つけた誤字を段落ごとに修正できる。ただの好奇心で試しに押してみた時に発見したのだが、なんて素晴らしいシステムなのかと感動すら覚えた。
ここで重要なことは、「淡々と」「事務的に」修正を行うということである。
ある作家の声を紹介したい。
「誤字報告には、誤字脱字の修正したい文言だけを書いてくれ」と。
(中略)
何が言いたいのかと言うと、誤字報告機能と言うのは、書き込まれた文字をそのまま作品に反映するシステムだということである。
そのまま反映されるの!
そ・の・ま・ま!!!だから、修正のついでに「○○だと思います」という報告者の意見とか、目立たせるためなのか記号で括ったりとかされると、適用ボタン押せないの!
だって押しちゃったら、その書き込まれた意見までも、本文に入り込んじゃうから……!
リンク先の記事を読んでもらうとわかるが、港瀬さんはこの機能を「画期的」で「大変ありがたい」「感謝している」と仰っている。自分で修正箇所を探す手間が省けるので、確かに素晴らしい機能なのだ。
つまり、報告する文言は「本文にそのまま反映されることを念頭に置いて修正すればよい」ということだ。
文章の作り方や表現方法、文法的な問題などについては、誤字の報告というより提案になる。それを作家が採用するかどうか別としても、何かおかしいのでは?という意味では、報告しても差し支えないと思う。
その場合でも、「〜だと思いますがどうでしょう?」などは入れない方が良いだろう。私の場合、報告するのは「てにをは」や登場人物の名前などの相違程度である。
とはいえ、この「誤字報告」も作家が設定していなければ報告ができない。設定されていない場合は、感想欄で言うのも何か違う気がするので、気にはなるが見なかったことにしている。
最後に
この記事を書くにあたり、「なろう」の掲載作品数とユーザー数をたまたま見ていたのだが、最初に確認した日から4日の間に、掲載数は529作品、登録者に至っては1,326人も増加している。1日300人以上がユーザー登録しているわけだ。
作品をWebに上げたくて登録する人も当然いるだろうが、機能を存分に使い、読むことに専念するために登録する人も多いだろう。
勿論、よくわからないけどお試し登録してみたという人も一定数いるかもしれない。
図書館で本を借りて自宅に持ち帰り、しおりを挟みつつのんびり読むように、「なろう」を通して小説を楽しむ人が、今もこれほどたくさんいるのだと知ることができた。
私が「なろう」にハマったのも、そういう気軽さからのように思う。
さて、ここまで長々と回し者のように、感想を含めて使い勝手などを紹介してきたが、少しでも「なろう」に興味が湧いた人や、おもしろい作品に出会えるきっかけになれたら嬉しい。