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「言語学って面白い!」言語学に入門するための書籍3冊

「言語学」という学問分野について知っていますか? 「言語」に関連する研究であれば、さまざまなものが研究の対象となるのが、「言語学」です。

ふだん、当たり前に使っている「言語」を、別の視点で見て見ませんか? 今回は、「言語学からすこし世界が変わって見える、言語学入門書」を紹介します。

『なくなりそうな世界のことば』 吉岡乾:著 西淑:イラスト(創元社)

ふだん生活していて視界に入ってくる言語は、日本語、英語、韓国語、中国語くらいかもしれません。フランス語やドイツ語も、日本語としてカタカナ語で使われている、くらいの認識があるかもしれません。けれど、それ以外はどうでしょうか?

この本は、世界各地のさまざまな言語を2ページごとに紹介している絵本です。しかも、その言語は「なくなりそうなことば」なのです。少数民族が使っている言語は、話す人が減っていて、その言語がどういうことばなのかが研究される前に、「絶滅」してしまう。ふだん気にかけることがない、そういう言語に出会わせてくれるところが、この本のいいところなのです。日本語は世界でも使用され、学ばれている言語だからこそ、自分が使用している言語が使われなくなる危機感は、日本に住んでいると認識しにくいものです。

この本では、「その言語が話されている地域」「その地域の格言」「言語の、言語学的な分類説明」「その言語を話している人数」が紹介されています。情報が絞られているからこそ、身構えて読まなくていい。しかし、言語学の分野の一端について垣間見ることができます。「その地域の格言」には、その地域の文化や気候が反映されていて、すこし身近な存在として認識しやすくなるようです。

なにより、絵本を見ていて目をひくのは、「その言語を話している人数」。ページをめくると、どんどん話している人数が少なくなっていく言語が紹介されているのです。言語を使う人がいなくなる危機感を理解できてしまう一冊です。

『方言漢字』 笹原宏之(角川ソフィア文庫)

日本には、さまざまな方言があることが知られています。大阪弁や青森弁や鹿児島弁などは、言葉づかいが特徴的で知られているでしょう。実は、「漢字」にも、方言があるのです。

『方言漢字』では、漢字が地域ごとに異なってくる現象から、どのような分野のことばに使われる漢字が「方言漢字」になるか、を冒頭からわかりやすく説明してくれます。

そして、各地域ごとに章分けされて、各地の「方言漢字」を解説してくれます。そこそこ分厚い本ですが、ぱらぱらとめくると、写真で「方言漢字」を紹介しているので、ちょっとした旅行先での変わった写真を見るときのような、わくわく感があります。

これを読んだあとなら、「今後旅行先で、方言漢字に出会うかもしれない」「新しく知った人の名前にも使われているかも」と、すこし世界が変わって見える一冊です。

『言語の社会心理学 伝えたいことは伝わるのか』 岡本真一郎(中公新書)

さきに紹介した2冊は「言語の多様性」について考えさせられるものでしたが、この本は、「言語を使って伝達をおこなったところで、実際どれだけ伝わるのか?」ということをテーマにしています。専門用語が多めですが、その説明も含めて丁寧なので、入門書に向いていると思っています。

ふだん会話をしていて揉め事が発生する、ということはよくあるでしょう。その場合、どこに原因があるのか? 態度が悪かったのか、言葉遣いが荒かったのか、説明が足りなかったのか……? そういったものが、今まで言語学において、どのように分析されてきたのか、を紹介してくれます。

実践的、かつ根拠のある1冊なので、手に取るときには「言語学について学ぼう」という意識がうすくても、読むとどんどん言語学に興味が湧いてくるでしょう。

おわりに

一番あたりまえに使っている「言語」について知り、考えることは、世界への視点を変えることにつながるでしょう。「言語学」といっても、さまざまな分野があります。最近は新刊でも言語学について多面的な紹介をしている書籍も多く出ています。

少しでも、言語学の幅広さと面白さについて知っていただけると、幸いです。

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ABOUTこの記事を書いた人

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東京女子大学現代教養学部人間科学科言語科学専攻卒業。大学在学中、文芸サークル 新月お茶の所属で、現在は、SRの会と限界研所属。本格ミステリ大賞候補作『現代ミステリとは何か』(限界研、南雲堂)で、「作家だって一生推してろ 斜線堂有紀論」を寄せる。