大学卒業後に、論文を探すなんて。
大学を出て数年。学問から離れても、論文を入手したいタイミングというのは意外とあるものです。私は社会人特別入試枠での大学院受験の時に、その機会が訪れました。
学部生の時は大学図書館のレファレンスを訪ね、「この論文がほしいです」と伝えれば、数日後には手元に資料があったものです。ところが、大学を出ると、私たちは自力で資料にアクセスしなければなりません。
そんな時、資料を簡単に入手できる方法があると良いですよね。それを叶えてくれるのが、国立国会図書館の「遠隔複写サービス」。この記事ではその使い方をお伝えします。
「国立国会図書館サーチ(NDL)」とは?
CiNiiで論文を探していると、「Web Site」と書かれたボタンが出てくることがあります。これは、国立国会図書館に資料が所蔵されていると出てくるボタンです。
CiNiiやJ-STAGEでヒットする資料について、大学リポジトリなどで全文が確認できる場合はそちらを参照すれば解決です。一方で、「Web Site」のボタンをクリックすると辿り着くのは、国立国会図書館のWebサイト。このボタンが出てきた場合は、まさか国立国会図書館まで出向かなければならないということでしょうか。
実は、家にいながら資料をゲットするための強い味方こそが、このリンク先、「国立国会図書館サーチ(NDL)」というWebサイトなのです。
大学を卒業したけど勉強が好きという方にはもちろん、学部生の皆さんにもおすすめです。
用途は様々で、刊行物の検索はもちろんのこと、J-STAGE、CiNii上に公開されている資料の検索・閲覧が可能。さらに、利用者登録さえしておけば、NDL上に公開されている刊行物の閲覧もできてしまいます。
興味・関心の赴くままに検索するもよし、通勤・通学時間にオンライン公開されている資料をチェックするもよし。スキマ時間も勉強・研究にコミットできる便利さが魅力です。
強い味方、遠隔複写サービス!
そんな国立国会図書館オンラインの中でも、筆者が強くお勧めしたい機能が「遠隔複写サービス」。
大学を離れてから勉強したい人は、なにも大学図書館が通いやすい場所にあったり、近隣の図書館で遠隔複写依頼が可能だったりする方ばかりではありません。近くに図書館が無いという方も中にはいることでしょう。そんな時に思い出してほしいのが「遠隔複写サービス」です。
これを利用すれば、国立国会図書館蔵の資料を複写してもらい、手元に取り寄せることができるのです!
個人でも使えて、必要な金額は資料の印刷費と事務手数料、送料のみ。大学図書館まで、あるいは最寄りの図書館までの交通費を考えれば、お釣りがくる金額です。
とはいえ、なにがなんだか難しい、という人のために、使い方を簡単にお教えしましょう。
利用者登録は必須
まずは利用者登録。本登録と簡易登録があり、どちらも遠隔複写サービスの利用は可能です。登録の要件は以下の通り。
- 満18歳以上の個人であること
- 個人のメールアドレスがあることこと
- 本人確認書類(顔写真付き)をアップロードできること(※本登録を希望する場合のみ)
まずは、新規利用登録のフォームにメールアドレスを入力します。
NDLから送られてくる登録用URLにアクセスすると、簡易登録・本登録の選択画面が出てきます。ここではせっかくなので本登録を選択します。

氏名や住所、電話番号など、どこのサイトに登録するときも出てくるような、基本情報を入力し、写真付きの本人確認書類の添付フォームに免許証やマイナンバーカードの写真を添付しましょう。

以上の入力・添付が終了したら、申請内容に間違いないかを確認して、申請。5日程度で本登録が完了すると案内がありますが、時期が良かったためか、私は1日で登録が完了しました。
簡易登録の場合も、本登録への移行手続きが可能です。登録期間はどちらの場合も3年と変わりないので、まずは簡易登録でも問題なさそうですね。
本登録者になると、来館時に開架資料はもちろんのこと、国立国会図書館の蔵書の大部分を占める「書庫資料」の利用が可能になります。オンラインでは「個人向けデジタル化資料送信サービス」が利用できるのだそう。これは、絶版などの理由で入手が困難である資料に限り、個人の端末に送信してくれるというもの。「国立国会図書館デジタルコレクション」で提供している資料が対象です。

まずは簡易登録で登録を済ませ、勉強を進めていく中で必要があれば、本登録へ移行するのもいいかもしれません。
複写依頼をしよう
利用者登録が済んだら、ログイン画面から、メールで送られてきた利用者IDと、事前に設定したパスワードを入力してログイン。
検索ボックスに論文タイトルや本のタイトル、キーワードを入力します。もちろん、CiNiiの「Web site」ボタンから飛んできても問題ありません。

論文を見つけたら媒体の情報を見てみましょう。PCで国立国会図書館オンラインにアクセスしている場合は、画面右側に「来館して利用する」「来館せずコピーを依頼」のメニューが並んでいます。

ここをクリックすると、自動的に画面がスクロールされ、「申し込みカートに入れる」というボタンが出てきます。こちらをさらにクリック。

ポップアップで複写箇所の指定画面が出てきます。複写をする場合、論文タイトル・著者・該当ページのいずれかを必ず指定しなければなりません。不明な箇所があるために依頼ができない場合は、「複写のための記事掲載箇所調査」も利用してみましょう。

奥付も印刷依頼できるので、こちらにはチェックを入れておくことをおすすめします。
モノクロ・カラーの選択も済ませ、次に進むと利用規約への同意を求められます。

利用規約に同意すると待ち構えているのが、料金シミュレーションの画面。複写にどのくらいかかるかが分かるため、良心的です。

シミュレーションを確認したら、あとは発送箇所の指定と郵送方法を選択。
二つ折りにしてもいいのか、折らないで届けてほしいのか、見積や納品書の同封が必要か、などなど、自分の目的に合った方法を選択していきます。

これで申し込みは完了です。
NDLには、5~10日ほどで発送と記載がありますが、それより短い日数で発送されることも少なくありません。NDLの画面上部から、申し込み状況の確認画面に移れるので、こちらも活用しながら待ちましょう。
数日もすれば、「国立国会図書館」! と書かれた封筒が届きます。同封されているのは、支払い伝票。資料到着から20日以内に支払いが必要で、コンビニで決済が可能です。

これであなたも遠隔複写サービスユーザー!
読みたい資料にアクセスできない、これは非常にもやもやします。そんな時に強い味方となるのが、以上にご紹介した「遠隔複写サービス」です。
私は社会人特別入試での大学院受験の時期に出会い、現在に至るまで活用しています。便利なのは通勤・通学の時間でも利用できる点。どんなに忙しくても、資料を取り寄せておくことだけはできるんです。
忙しい現代人の強い味方、「国立国会図書館サーチ(NDL)」の「遠隔複写サービス」を使って、みなさんも楽しい文学ライフをお送りください。
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