こんにちは、11月23日(祝木)の東京文学フリマに出展する文芸同人誌『あみめでぃあ』(オ21-22)のPRで寄稿させてもらいます。
この記事の目次
文学フリマとは
文学フリマとは、日本各地で行われているテキスト系の同人誌即売会のこと。もともとは大塚英志さんが『群像』のなかで批判に反論した際、呼びかけた一回きりのイベントです。
最後に書きっぱなしにしないように「玄人」「素人」問わず、個人、グループ問わず、仮に東京近郊で「文学コミケ」が開催されるとしたら机一つにつき五〇〇〇〜一万円の参加費を負担し自分の同人誌なり著書を(プロの著者は既存の版元から出ているものの販売もとりあえず可とします)売りたいという人々が五十組以上(これは一万円前後の会場費で何とかなる最低ラインです)、先に話したような「文学コミケ」をぼくは一度だけ開催します。その場合、参加者は負担金だけでなく会場に机を並べるというレベルから始まる様々なボランティア的協力を拒否できません。地方から参加する人は交通費も宿泊費も当然、自己負担です。開催の告知は各文芸誌その他にお願いしたりはしますが、載せてくれるかどうか確約はできません。つまり、最悪、お客さんは一人も来ない可能性があります。それでも尚、自分が「文学」だと思うもの(それが『重力』だろうが、福田和也の弟子の関口隼也の書くギャルゲー同人誌だろうが、ここでは同価だというのがルールです)を携えて、まだ見ぬ読者の前に立ちたいという人が五十人(組)、いわばそれは一つの可能性のように思います。
——「不良債権としての『文学』」(「群像」2002年6月号)
「タルタルソースを比較してみた」という企画系の情報誌(ミニコミ誌)だったり、大学生のミステリー研究会だったり、趣味で集まった歌会だったり、デビューを狙う小説家だったりが集まっています。
●第二十五回文学フリマ東京
日付:2017年11月23日(祝木)
時間:11:00〜17:00
場所:東京流通センター 第二展示場(最寄り:東京モノレール「流通センター」駅)
料金:入場無料(同人誌は200〜1,000円ぐらいが相場です)
公式:@Bunfreeofficial
※設営のボランティアを募集しているそうです。
※詳細は、公式サイトをご覧ください。
『あみめでぃあ』は、日常の概念を見直す同人誌
さて、われわれ『あみめでぃあ』というのは、日常的な概念を見直してみよう、という同人誌です。
なにか考えがうまくいかないときや、だれかと決定的にわかり合えないとき、おなじことばで喋っているはずなのになぜか真逆のことを言い合っているときは、だいたい「概念≒ことば」にトラブルがあります。良い意味で愛しているって言ったのに、相手にとっては気持ち悪いことばだったり。そんな日常の、些細だけど大問題があります。
『あみめでぃあ』の参加者は、じぶんが気になっていることば(概念)を1つ取り上げ、それをじぶんなりに語ってみせます。わかりにくいかもしれないので、例を挙げましょう。「本音」という概念でやります。
例:「本音なんてものはない」
たとえば「本音」と言ったとき、それはなんのことを言っているのでしょうか。「本音を言ってよ!」と詰め寄られたとき、なにをもってホンネとやらを決めるのでしょうか。
「本音が聞きたい」とか、「本音が一番」とか、「本音を隠すな」とか、「本音には思えない」とか、「偽らざる本音」とか、「本音を言い当てる」とか、「建前と本音」とか——なんとなくわかるけれど、説明しろと言われてもむずかしいものです。
でも私たちは「本音」というものがあるはずだ、と決め込んで日常を過ごしています。「きっとあのひとは、ほんとうは、これを言いたかったんだろうなあ」と勝手に想像します。
でも待ってください。「ほんとうは言いたかったこと」なんて、そんな明確なものでしょうか。輪郭がくっきりしているものでしょうか。私にとっては——あくまで私にとっては——、もっとあやふやで、曖昧で、文字化け同然の判読不能なものです。
本音なんてものは、実は「わからない」のです。先立たないのです。
それでも私たちは日常のなかで「本音」を使わなければなりません。「なにかを本音として言わなければならない」ときがくるものです。綺麗事に思えることでも、「本音」なんだと覚悟して、責任を取らねばならないこともあります。
たとえばオバマ前大統領は、広島のスピーチで「原爆の謝罪はできないけれど、平和のための共通の責任を俺は果たしたいと思って今日ここに来たんだ」と語りました。それは綺麗事だけれど、オバマさんの「本音≒本音として語るべきこと」でもあったと思います。
「建前と本音」は対立しているように見えて、相互浸透なのです。「建前」は「本音」を含み、「本音」もまた「建前」を含んでいる。そういう関係だとしたら、「本音」というものがもっと柔軟になるのではないでしょうか。
——と、このようにことばを見直してゆくことが『あみめでぃあ』です。わかりやすく論考っぽい書きかたにしましたが、小説のなかで語ってもよいし、短詩でも、漫画でも構いません。過去には「手紙」や「辞書」のような形式もありました。
過去作の紹介
過去にどんな概念を取り扱ったか、通覧いたします。
【第一号】2014年11月24日 初版/2016年5月1日 第二版
約束:約束とは前向きに未来を見ていたという記念である。(ちくわ)
ダブる:ダブらせると、人生はどんどん伸びてゆく。(ちくわ)
食べる:食べることで、私は、変わってゆく。(ドーナツ)
好きに犠牲を払うということ:私は犠牲を払いながら近づこうとしている。(ドーナツ)
大人:寄る辺ない私が、じぶんという存在を賭けてもよいと思えるなにかに出会い、頼れる存在になってゆくこと。(大人たん)
場合分け:自らの責任で思考し、生きてゆくための規範を反省的に理解せよ。(蛙教授)
デザイン:目に見えている世界の角度を変える。(めがねマエストロ)
好きな人:私たちはわかりあっている、という透視の病である。(らららぎ)
ラブやで:@各位 ラブやで〜。(寝返りレタス)
【第二号】2015年5月4日 初版
すくうこと:不可能なものを可能にするために、たった一度だけ近づこうとする。(ちくわ)
傍にある実体のないもの:言葉のないメッセージを聴くこと。(ドーナツ)
狂う:人類神様化計画の途中で発生したエラーだ。(悠)
大人と悪党:「のっぴきならねえ」善と悪を両面から知ることである。(大人たん)
思考する嗜好:海辺の悠久に人は記憶されている。(三星屋迅兵衛)
眼鏡男子:本質的にエロチズムである。(るなこ)
音感:大事ではないものを区別する。(ねぎとろかめん)
デザイン(色):表現できないような鮮烈な個性。(めがねマエストロ)
スポーツカー:どれだけのことをやって「すかす」ことができるか、それが走りの本質。(なのはまーくつー)
諦める:無限の可能性に自分を開く。(なゆき)
家出:逃走の光射す夜明けである。(寝返りレタス)
まわる:回転は、見える部分を流す。(二号)
公開:公開はぼくらをしあわせにしたか。(開発室Graph)
リズム感:あらゆる対立の裏でふたつをひとつに結ぶ倫理である。(らららぎ)
【第三号】2015年10月25日 初版/2017年11月23日 第二版
三日坊主:ころころと「世界観」を切り替え、「ちがう」ものを見て、重たい腰の先へ行く。(ちくわ)
遠さと水槽:近いのに遠いという矛盾、それを美しさとして手元で受容する。(寝返りレタス)
本:オブジェである。(うな)
法:法の実行とは、金と暴力による強制力とその結果である。(蒼大エアリーズ)
教育:いつか望ましい方向性を手に入れるための働きかけ。(水月)
コンバース・ジャックパーセル:より自分らしく歩くためのお洒落なお靴。(めがねマエストロ)
居心地:主体の無意識下で意識される可能性。(みずき)
入門と独学:私淑と忘却の「敢えて」である。(らららぎ)
【第四号】2016年5月1日 初版
自傷:それはぼくのとてもずるい自己救済でした。(千代恋あめ)
だまされる:「だまされているよ」と言われる可能性それ自体である。(ちくわ)
備える:じぶんの知らない秩序の訪れを知っていること。(大人たん)
世界:世界はおしゃれさんだ。(もぐら)
地獄:中途半端に生きることを重ねて生ものになってゆく。(香狩悠)
自己評価:同じ自分という認識がほしい。(みずき)
飼育するということ:「"最後まで"っていつまでや……?」(寝返りレタス)
信頼:幸福はいつも勇気に懸かっている。(宮田晃碩)
軍隊:軍隊で誰かが常に銃を持っているということが軍隊という存在の価値そのものである。(蒼大エアリーズ)
コピー:死ねばすべて無になってしまうのに。(めがねマエストロ)
宿る:共同幻想の種を持つこと。(二号)
名探偵:隠したいという意志を無視することである。(白右)
見る・見える:悲しみの元凶にほかならない。(却下)
迂回と秘密:私はいつだってなにかの手前であるという概念から転落すること。(らららぎ)
【第五号】2016年11月23日 初版
赤:言葉が頼りない糸に思えた。(渋面ダイス)
スマートフォンで読み書きするということ:音声はドキュメントの奥においやられてゆく。(大人たん)
色(二原色):基本的な感情が四つって、多すぎませんか。(もぐら)
同意:同意の無謀さはコミュニケーションの無謀さである。(ちくわ)
憂鬱なお茶汲み:わたしはきっかり7.5時間、閉じ込められる。(青砥みつ)
失恋:ふられちゃったんだね、可哀想に。(千代恋あめ)
クズ:誰もが無意識にやっている。(めがねマエストロ)
小説家志望:未完のままほろびる寸前の虚弱な憧れである。(らららぎ)
【第六号】2017年5月7日 初版/2017年11月23日 第二版
アルゴリズム:ぼくらの日常はコンピュータほどうまくいかない。(開発室Graph)
難易度:それを使ってうまくなり好きになるということ。(大人たん)
追うということ:諦めると同時に諦めない。(ちくわ)
神:存在するだけで信仰を持たせるもの。(みえ)
明朝:思い出したかのように色を取り戻していく。(渋面ダイス)
甘える:こんな、こんな幸せが、穏やかさが、私の生活にあるものか。(青砥みつ)
サブカルメンヘラクソビッチ:「で、先輩どうするんですぅ?」(セブンスターおじさん)
饐えたにおい:ああこれは柔軟剤なんだとそのとき思った。(呉島ネオサ)
一人っ子:子供として一人ぼっちなのである。(露草あえか)
ミニマリズム:最小限の所有物と活動で、最大限に豊かに生きること。(柏原ゆうた)
人間:「人間、かもしれないね」(スター)
失くす・失くなる:それでもわたしは忘れることを肯定したい。(みずき)
首輪:舞台裏で支配していたのは、枷される者だった。(千代恋あめ)
遠距離恋愛と時間:距離の核心は、タイミングを運びゆくことである。(らららぎ)
【第七号】2017年11月23日 初版
セットリスト:セットリストは言語である。(露草あえか)
少女:全ての人に終わりゆく未来があって、幼き過去がある。(千代恋あめ)
観照的態度:「僕は、本当はいったい何が好きなんだろうって」(小雪)
演技:「つまり、合法って最高!」(炭酸牛乳)
どうでもいい:0から1に託されたバックアップ。(ちくわ)
ブス:ブスはブスの下にブスを造る。(七々星道程)
自己陶酔:「自分に必要な言葉は、誰かに言ってもらうしかないんだ」(青砥みつ)
思いなしかた:だれかがどこかで決めてくれたことに、図々しく乗ること。(らららぎ)
寄稿者とサークルメンバー募集
『あみめでぃあ』という活動について、大枠をわかっていただけたと思います。半年に一本、東京文フリで出展しておりまして、いつだって猫の手も借りたい状態です…(笑)
もしお手伝いしてくださるかたがいましたら、お声掛けくださると嬉しいです。(amimerunnder@gmail.com/@amimedi_A)
また「概念語り」を寄稿してくださるかたも随時募集中です。腕試しでも、宣伝でも、なんでも大丈夫ですのでご相談くださいませ。最近はコラボの打診などもあって、そういう活動もしたいなと思っております。
よろしくお願い致します。
新刊の目次
露草あえか「失恋学実践 セットリストは言語である」
千代恋あめ「少女七編」
小雪「エウダイモニア」
炭酸牛乳「青年Hは読者に期待する。」
ちくわ「どうでもいいとはどういうことか」
七々星道程「一億総ブス」
青砥みつ「歎きのメリーゴーランド」
らららぎ「思いなしかたとはなにか」— あみめでぃあ◎オ21-22 (@amimedi_A) 2017年11月15日
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Covers were illustrated by まよゐさん・瓜原さん・しゅくるさん・モリータさん・めがねさん・みずきさん・三奈宮みあさん