エロい表紙が全てじゃない!垣間見えるは悪の美学『モンスターになった俺がクラスメイトの女騎士を剥くVR』

 

表 紙 が エ ロ い ラ ノ ベ だ。

 

こんばんは。『モンスターになった俺がクラスメイトの女騎士を剥くVR』のお時間です。

ちがうんです。わたしは全然スケベじゃないです。ちっとも表紙に釣られてなんかいません。この作品は、一見頭のわるそうなタイトルですが実のところ非常に高尚な哲学が隠されているのです。ほんとうのことです。

わたしは全然スケベじゃないです。わたしはこの作品の哲学に惚れ込んでですね。思想とか……信念とか……そういうのが深くて……いや、ほんとですってば!信じて!!

エロい表紙に騙されたな。これは悪のおはなしだ

異世界転生したら、何になりたいですか?勇者?チート能力者?

私は異世界転生できるとしたら、醜いモンスターになりたいです。知能が低く、醜く、人を襲うオークやゴブリンのような雑魚モンスターになりたい。物語の片隅で悪事を働き、偶然通りがかった勇者に片手間であっけなく殺されるような。明確な役割も存在感もない、そんな雑魚モンスターになりたいと思うのです。

この作品を読めば、あなたにもそんな憧れが生まれるかもしれません。

物語を彩る、敵キャラクターたち。
あるいは、ヒーローものにおける一般戦闘員。
あるいは、天界の都合で配置される中ボスキャラ。

吹けば飛ぶような、儚い悪役たち。少しでも彼らに憧れ、共感する気持ちがあるならば、きっとこの作品はあなたの心に届くでしょう。
『モンスターになった俺がクラスメイトの女騎士を剥くVR』は、悪役ロールのお話です。

悪役といっても、強大な魔王や、尋常ならざる巨悪ではありません。好き放題悪事を働く大悪党のお話でもなく、自由を求めて戦う義賊のようなお話でもありません。弱く儚い悪役ロールをわざわざ望んでしまうひねくれ者の物語です。

VR、とタイトルにある通り、お話は主にゲームの世界を通じて展開します。多くの人はゲームの中でくらい、勇者のような主人公になりたいと望むでしょう。あるいはゲームの中でくらい、凶暴な殺人者として自由に振る舞いたいと思うでしょう。

しかし本作の主人公は違います。彼は、悪役モンスターになることを自ら望んでしまうのです。

正直言って、本作の表紙はエロいです。エロエロのスケベです。
とはいえ、逆にいえば表紙が瞬間最大エロ速です。中身は少年誌のラッキースケベを限度とする程度で、エロ目的で買ってしまうと肩透かしを喰らうかもしれません。

いえ、わたしは肩透かしを食らってませんよ?表紙買いにしてがっかりとかしてませんよ?ほんとですってば信じてくださいマジで

主人公は引きこもりの社会不適合者

 簡単に言えば、源斗は引きこもりであった。だからそこが源斗の唯一の居場所で、源斗の世界だ。

(第一章より)   

主人公・源斗は「世界不適合のクズ」を自称する引きこもりのゲーマーです。とはいえ、トラックに轢かれて異世界に転生するとかではなく、彼はありあまる時間を活かしてひとつの“クソゲー”を究めていました。

Evil Life Online。
悪のモンスターとなって、美少女キャラクターと戦い、服を脱がすVRゲーム。

服を脱がす、といってもあくまで全年齢対応の範囲なので、脱がせてもせいぜい下着が見える程度。そんなマニアックでマイナーでスケベでしょーもないゲームを、源斗は達人級になるまで究め尽くしていたのです。

しかしある時、原因不明のバグによりEvil Life Onlineと別のゲームが混線、世界がひとつに繋がってしまいます。
それは大人気のVR・MMOゲームであり、例えば同じ学校のクラスメイト(といっても源斗は引きこもりなので会ったこともありませんが)もプレイしている有名作でした。

モンスター状態の源斗の住む森に、クラスメイトの女子が女騎士の格好をして現れた……!!
というところから物語は始まります。

当然、源斗はモンスターなので、生存のために女騎士を脱がさなくてはなりません。はいここでタイトル回収です。だから『モンスターになった俺がクラスメイトの女騎士を剥くVR』な訳です。

とはいえ、相手はクラスメイト。なんやかんやでお互いの正体が露呈したことから、少しずつ悪のモンスターと正義の女騎士との交流が始まります。あくまでも敵同士の立場ながら、二人は互いのゲーム世界が混線した事件に共同で挑んでいく……といった形で物語は進んでいきます。

あらすじをざっと説明するとそんな感じです。「2つの異なるゲーム世界が繋がってしまった!」という設定はめちゃくちゃおもしろいんですけど、本作の魅力はそこじゃありません。
繋がってしまった2つのゲーム世界。かたや「悪のモンスターになりきるゲーム世界」であり、かたや「正義の騎士になりきるゲーム世界」。そうした善悪の揺動が、悪の側から描かれている点にこそいちばんの魅力があります。

引きこもりの少年に残された、最後の拠り所。
彼の視点で描かれる悪役の覚悟、悪役の哲学こそが、いちばんの魅力だと思うのです。

クズだからこそ語られる悪の美学

「俺達には覚悟がある。魔物として嫌がられる覚悟がある。お前達には…… あるのか?」

(第四章より)   

『モンスターになった俺がクラスメイトの女騎士を剥くVR』は、悪の物語です。
なぜ、時に我々は物語の悪役に惹かれてしまうのか。その問いに一つの答えを見せてくれるのが、この作品です。

といっても、あくまで弱く儚い悪のお話です。
持てる者が安全圏から獲物をいたぶるような、強大な悪ではありません。
持たざる者が剥き出しの欲望に命を賭ける、どこまでも小悪党な物語です。

主人公・源斗が、わざわざモンスターになるゲームを遊ぶのは何故か。
引きこもりになってまで悪役をやりたがるのは何故か。
美少女キャラを脱がせるクソゲーにハマるのは何故か。

それはきっと、理性の軛を取っ払った時に出てくる剥き出しの欲望と、何度でも何度でも対峙したいからなのだと思います。なんでもできるゲームの世界だからこそ、剥き出しの欲望と対峙できるのです。
己を世界不適合者と断ずる源斗にとって、己の獣性と対峙することは、自らの人間性の証明と同義でした。

美しいものを美しいと想い、思わずそれに手を伸ばしてしまう己の悪性――それだけが、世界不適合のクズに残された人間性の担保。まるで己を試し続けるようなその行いが、クズである源斗が見せる悪の美学なのだと、私は思います。

己の剥き出しの欲望に直面し続けること。
それこそが、本作が見せてくれる悪の哲学だと言えるでしょう。嫌われ者の覚悟と信念、そんなものを見せつけられるから、我々は思わず悪役に惚れ込んじゃうんですね。

とはいえ、本作はあくまでライトノベルです。
そんなに難しい話じゃありません。クズの源斗がめちゃくちゃがんばって信念を貫き通す姿は、シンプルに胸のすくお話となっています。
「カッコいいじゃん、お前……!!」
となること請け合いです。

あと端的に女騎士さんはカワイイです、もちろん。いえ、わたしはエロに釣られた訳ではないんですけどね。いちおうね。

刺さる人にだけ刺され

何度でも言います。『モンスターになった俺がクラスメイトの女騎士を剥くVR』は、悪の物語です。
物語を彩る、醜くも儚い悪のキャラクターたち。そんな彼らに憧れ、共感する気持ちがあるならば、この作品はあなたの心に刺さります。

「表紙のせいでちょっと買うのは恥ずかしいな……」なんて言わず、ぜひ読んでみてください。あなたも一緒に、剥き出しの欲望と直面していきましょう。

 

エロいの、好きでしょー!?(私も好きです)

 

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