小説投稿サイト2020年上半期覚え書き

2010年代は「小説投稿サイト戦国時代」などという言葉がいろいろなところで聞かれ、大小さまざまなサイトがひしめいていました。そしてそれは、2020年になった今も変わりません。しかし、自分が投稿しているサイトならいざしらず、使っていないサイトが最近どんな風に変わっているかなんて知る由もないですよね。

そして2020年もそろそろ半年が過ぎ去ろうとしています。この辺りで2020年上半期の小説投稿サイトではどんなことが起こったのかを見渡しておくことには意味があるのではないかと思い、調査してこの記事にまとめてみました。

新規参入「ステキブンゲイ」

2020年3月30日に、新しい小説投稿サイト「ステキブンゲイ」がオープンしました。運営するのは、小説家の中村航さんが代表を務めるステキコンテンツ合同会社。

芥川賞作家が代表を務める会社が運営しているということもあってか、「一般文芸特化」を全面に押し出して運営を行っています。ユーザーの投稿作品の他にも、代表の中村航をはじめとして、河邉徹、いぬじゅんといったプロ作家の連載を無料で読めるのも特徴。

小説投稿サイトの醍醐味であるコンテストも開催。第一回ステキ文芸大賞を2020年10月末まで募集しており、大賞には賞金30万円が贈られ、書籍化も行われます。

非ライトノベル系を押し出し、現役作家が運営する小説投稿サイトといえばCRUNCH MAGAZINEが記憶に新しいところ。こちらは文藝賞作家である今村友紀さんが設立したサイトで、2020年6月30日に閉鎖されます。一方で、新潮新人賞を受賞して作家デビューした高橋文樹さんの運営するサイト破滅派は、現在も精力的に活動を続けています。

ライトノベル系の小説投稿サイトが幅を利かせる中で、ステキブンゲイや破滅派といったサイトがどういった展開を見せるのか、注目したいところです。

講談社の投稿サイト「セルバンテス」の撤退

2020年5月31日に、講談社の小説投稿サイト「セルバンテス」がサービスを終了しました。

同サービスは2019年2月25日に、講談社のレーベル「レジェンドノベルス」と同じチームにが運営する投稿サイトとしてオープンしました。同レーベルは「ネクストファンタジー」を標榜しており、サイトも独自の色が強く出ていたと感じます。

オープン当初は質問箱の質問に運営の方が精力的に答える姿が印象的でしたが、わずか1年半足らずでサービス終了となりました。

クローズ後は、同じく講談社が運営する小説投稿サイト「NOVEL DAYS」へ投稿するように促しています。

続々と新機能が追加される「pixiv」

イラスト投稿サービスとして始まったpixivですが、割と早い段階で小説投稿機能が実装されています。そしてその後、2017年秋頃より小説チームが発足し、そこから様々な改善が行われています。

2020年4月には「単語変換機能」が試験的に導入され、これによって指定した単語を変換する小説を作成できるようになりました。この機能は、そのまま4月中に正式導入されることとなります。

この単語変換機能は、それより少し前の3月に実装された「設定資料」機能を利用しています。この設定資料機能も徐々に進化しており、5月には本文中に設定資料へのリンクを表示できる機能も実装されました。

コンテストとしては、昨年に引き続き「百合文芸小説コンテスト」の第2回を開催。コミック百合姫、SFマガジン、ガガガ文庫、書泉百合部との共催となりました。その他に、受賞作賓はイラストつきでpixivノベルに掲載される「pixivノベル大賞」や、一部屋で完結するSSを募集して大賞受賞者には高級オフィスチェアなどを賞品として贈る「ワンルームSS」なども開催されています。

継続的にコンテストを開催する「エブリスタ」

エブリスタといえば、2019年4月に大幅なリニューアルを行いました。リニューアル後しばらくは不安定な状態が続きましたが、1年経った今ではすっかりそれも解消され、新しい仕様に慣れた方も多いのではないでしょうか。

エブリスタは、小さめのコンテストをいくつも開催しているのが特徴。「妄想コンテスト」をはじめとして、いつ来ても創作意欲が刺激されるような作りになっていると思います。

機能実装としては、エディタの細やかな改善をコンスタントに行っている印象です。どのような改善があったかは、以下のページより確認することができます。
https://estar.jp/announces/473
https://estar.jp/announces/402

また、エブリスタが運営する物書き向けのメディア「monokaki」が、note proでの運営に移行し、ドメインも変更されました。使い勝手はこれまでと大きく変わらないと思いますが、note上でフォローできるということで、嬉しい方も多いのではないでしょうか。

KADOKAWA系コンテストが充実の「カクヨム」

個人的には新興サイトのつもりだったのですが、2016年2月末に開設されたカクヨムは、もう4周年を迎えています。

今年上半期の出来事には含まれませんが、2019年10月に始まったカクヨムロイヤルティプログラムは、他の投稿サイトとは一線を画す機能実装といえるのではないでしょうか。もちろん、この収益だけで生活できるような人は良一部だとは思いますが、そういうスター作家を生み出す可能性のある施策としては、夢のあるものだと思います。

また、カクヨムではKADOKAWAレーベルの各種公募に応募することができ、第2回ファミ通文庫大賞、第26回スニーカー大賞、第19回角川ビーンズ大賞などが2020年に応募を開始しました。

機能としては目立った改修はなく、作品検索機能に除外キーワードの入力欄ができたことくらいでしょうか。

平常運転の「小説家になろう」

2019年5月末のトップページリニューアルから1年が経過しました。いつも使っている方は、すでに見慣れている頃なのではないでしょうか。

2020年上半期は、特に目立った機能実装などはなかった印象。しかしながら、出版社タイアップのコンテストを多数開催しています。

公認二次創作のラインナップも増えてきており、直近では「黄桜すい」「逆転オセロニア」が加わっています。

のべらちゃん、大人気「ノベルアップ+」

2019年7月に正式オープンしたノベルアップ+も、そろそろ1周年を迎えようとしています。機能面も去ることながら、個人的には看板娘であるのべらちゃんのインターネットのこと分かりすぎな対応が印象的です。

コンテストは、賞金50万円のノベルアップ+小説大賞を始めとして様々なものが開催されています。

令和大賞の結果が発表された「LINEノベル」

2019年5月にオープンしたLINEノベルも1周年を迎えました。

大賞賞金300万円+書籍化+映画化の第1回令和小説大賞は4400作品の応募を集め、2020年3月に結果が発表されました。

機能としては、1月にアプリの大幅リニューアルを実施。そのほか、最近は公式ブログでおすすめ作品のピックアップを始めているようです。

ホームページ機能が廃止された「魔法のiらんど」

魔法のiらんどは長らく運営してきたホームページ機能の提供を終了し、現在は「BOOK機能」と呼ばれる小説投稿機能をメインにサービスの運営を続けています。

賞金総額300万円の「魔法のiらんど小説&コミック大賞」の開催を2020年夏に予定しており、今後も根強い人気を誇る投稿サイトとなりそうです。

運営元が変わった「ノベラボ」

元々はディスカヴァー21が運営するサイトとして始まったノベラボ。サービス終了が告知されていましたが、2020年6月よりデザインエッグ株式会社が運営を引き継ぐことになりました。

同社は電子書籍作成・販売プラットフォームであるパブーの事業運営も引き継いでおり、今後何かしらのシナジーが見込めるかもしれません。

まとめ

2020年上半期の小説投稿サイトに起こったことをまとめてみました。ここでは取り上げられなかった投稿サイトも多数あるのですが、また機会を見て紹介できればなと思います。

2019年は新しいサイトの設立が多かった印象があったのですが、2020年は今のところステキブンゲイ以外に目立った参入はないかなと思います。各投稿サイトが今後どのような機能を実装していくのか、そしてどんな作品を生み出していくのか、注目していきたいと思います。

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