傾城に真があって運のつき——『江戸へようこそ』に学ぶ遊郭のまこと
「わたしのこと、どれくらいすき?」 と問われた時、あなたならどう答えますか? 感情は可視化できないですから、わたしたちが愛の深さを客観的に証明することは、ほとんど不可能でしょう。 それでもなお、この言葉は今も世界中でささ…
「わたしのこと、どれくらいすき?」 と問われた時、あなたならどう答えますか? 感情は可視化できないですから、わたしたちが愛の深さを客観的に証明することは、ほとんど不可能でしょう。 それでもなお、この言葉は今も世界中でささ…
今節、ヴァージニア・ウルフ『波』の新訳(森山恵訳)が45年ぶりに刊行された。『波』は、1931年に発表された、ウルフの7作目の長編小説である。 ウルフの小説といえば『ダロウェイ夫人』や『灯台へ』がまず挙げられ、『波』は知…
映画やゲームなど、今や様々なジャンルに登場する「ゾンビもの」。その中でも、吉川英梨『感染捜査』は、2020年の新型コロナウイルスを発想の起点とした作品です。 『感染捜査』では、ゾンビものに必要な要素はもちろん、新しいゾン…
綾辻行人。 この作家に読書人生を決定づけられたというミステリファンは多いのではないだろうか。 1987年、京都大学在学中に『十角館の殺人』で作家デビュー。綾辻氏の出現が日本のミステリ界に与えた影響は大きい。「綾辻以降」と…
『透明な夜の香り』で第6回渡辺淳一文学賞を受賞し今ますます注目があつまる小説家、千早茜。その描きだす世界では時にいきぐるしいほどの恋が、時にこの世ならざるものの姿が目前にあらわれる。生々しい手ざわりやにおいはそこにあるの…
さあ、ライトノベル作家になろう! あなたは唐突に思いついたとします。そうして作品を無事書き上げて、いざ投稿、となったとき、あなたはどの新人賞に送ればいいのか、おそらく迷うはずです。一体、どういった基準でどの新人賞に送れば…
ジョン・コナリー『キャクストン私設図書館』は、本や物語をテーマにした4編を収録した短編集である。いずれも読書家ないし愛書家の心をくすぐる作品だ。 表題作である『キャクストン私設図書館』は、さまざまな物語の登場人物たちが実…
多くの少女たちの心に残る作品を残し、51才という若さでこの世を去った氷室冴子。『なんて素敵にジャパネスク』『クララ白書』などを世に送り出し、コバルト文庫を代表する作家ともいえる彼女は今でも多くの人々に愛されています。そん…
「海外ミステリー?なんだか難しそう……」 なんて思っているだろうか。確かにミステリーだけに限らず、海外小説は登場人物の名前が覚えづらかったりして、読み進めにくい要素もあるのかもしれない。 斯く言う私も、『トワイライト』を…
「書いてるとキャラクターがぶれていく」「ストーリーにあいまいな部分があって、つい都合のいい方向に動かしてしまう」「伏線はりが苦手」そんなあなたにぜひ使ってほしいツールがあります。その名もWorldTypeです。 Worl…
ずっと自分は周りと「違う」と思ってきた。 「発達障害の傾向があります」それでも、その決定的な診断を受けた時、奈落に突き落とされたような気持ちになった。「あなたはADHD/ASD1です」 発達障害という言葉は近年メディアな…
小説の同人誌を作るとき、みなさんはどのソフトウェアを使っていますか? Word? 一太郎? それともInDesign? 私自身は、TeXを使っています。レポートや論文を書くときに使われる、あれです。 私はこれまで、20冊…
特殊設定ミステリとは? ミステリ用語で、特殊な状況下におけるミステリのことを「特殊設定ミステリ」と呼称する。現実世界とは違った物理法則・科学技術のある世界やSF・ファンタジー的異世界を舞台にしたミステリ、魔法や超能力を組…
人間とは何か。そんな答えの定まらない漠然とした問いに対して、ささやかなヒントが得られるような小説がある。野﨑まどの小説だ。今回はそんな長編小説を5つご紹介します。 know 舞台は「情報材」の発明によって到来した超情報化…
2017年にノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロ。『クララとお日さま』は、受賞後にはじめて出版された長編小説になります。まるで絵本のようなタイトル、可愛らしいカバーイラスト。中を開けると、児童文学のような文体。これま…
ドストエフスキーというと、どういうイメージでしょうか? 重い? 難解? いいえ、そこには深い深い萌えの沼が横たわっているのです。 ドストエフスキー作品はBLの宝庫。男たちの情念と思想のぶつかり合いは、BLファン必読です。…
漫画『鬼滅の刃』の社会現象化にともない、より私たちの身近に感じるようになった大正時代。昨今、心なしか大正時代を舞台にした漫画や小説に注目が集まっているように思います。 そんな大正時代を舞台にした作品には「女学生」を取り扱…
「小説執筆をしやすいツールが見つからない」「資料作りが上手くいかない」小説を執筆していると、このような悩みが出てくることもあります。特に資料作りに関しては、丁度良いツールを見つけにくいですよね。 そこで今回は、キャラクタ…
2001年、17歳という若さで『シルエット』が群像新人文学賞を受賞し鮮烈なデビューを飾った作家、島本理生。小学生のころから小説を書き始め、15歳のころ『ヨル』が『鳩よ!』掌編小説コンクール第2期10月号に当選、年間MVP…
あなたは『かわいいウルフ』という日本発のヴァージニア・ウルフのファンブックをご存じだろうか。 この『かわいいウルフ』というファンブックは初めに同人誌として作られた。そして1000部を売り上げるという異例の快挙を遂げ、その…
乾くるみといえば『イニシエーション・ラブ』を思い浮かべる人も多いだろう。同作は2004年に発表され2007年の文庫化をきっかけにメディア等で紹介され再注目、2015年には映画化もされ、一躍世間に乾くるみの名前が知られるこ…
2013年放送のアニメ『ファンタジスタドール』はカードから「ドール」と呼ばれる女の子が出てきて戦ったり戦わなかったりする美少女アニメだ。 そんなよくある美少女アニメの前日譚を、アニメとはかけ離れた雰囲気で描いた異色のSF…
日本の電子書籍市場でトップシェアを誇るKindle。お使いの方も多いと思いますが、せっかくならセール価格の時に購入したいですよね。 ところが、Kindleで開催されているセールで公式のページが作られるものは少なく、普通に…
「自衛隊」と聞くと、なんだか厳しい表情と屈強な身体の、恐ろしい人間を想像してしまいませんか? しかし現実には、自衛隊は私たちと同じように上司に厳しく指導されながら部下の面倒を見て、仕事中に「帰ってゆっくりしたいなあ」と思…
レイモンド・カーヴァーという作家には、日本でも熱狂的なファンがいる。 また村上春樹がカーヴァー作品全ての日本語訳を担当しており、そのような理由で「レイモンド・カーヴァー」という名前を聞いたことがある人も多いと思う。 今回…
日本で電子書籍サービスの代名詞といえばKindle。インプレス総合研究所が行っている「電子書籍ビジネス調査報告書2020」という調査でも、Kindleストアの利用者が26.2%で1位となっています。 Kindleを多くの…
いま熱い視線が注がれている作家・李琴峰さんの名前を知ったのは、琴峰さんの本の表紙に書かれた著名からではなかった。 2019年、私は「LGBTQA創作アンソロジー Over The Rainbow」という同人誌を主宰し、企…
書庫のある家に憧れていた。 子供の頃から本が好きだった私は大人になったら本に囲まれて暮らそうと思っていた。「無人島に何か一つ持っていけるとしたらどうする?」という他愛もない質問にも「本がいっぱいつまった本棚!」と答えその…
歌野晶午、本格ミステリ界では唯一無二の存在だろう。 予想を裏切る展開、意外な着地点、ラストの衝撃、歌野の作品にはミステリの楽しさがある。基本を押さえながらも独特の視点で書かれた作品に読者は常に翻弄されている。騙されること…