『乙女文藝ハッカソン』に憧れて実際に文藝ハッカソンをやってみた

こんにちは、蓼食う本の虫を主宰しているあとーすです。

僕は、このサイトを運営するほかに、「無間書房」という文芸同人サークルに所属しています。大学の文芸サークルで仲の良かった人を集め、年に1回くらい文学フリマで本を出すことを目標にしている団体です。

しかし、毎年本を出すだけじゃマンネリ感がでてきてしまいます。実際、ここ1年くらいは少しやる気が落ち気味に……。

そこで、ちょっと気合いを入れるために2019年のゴールデンウィークに1泊2日の「文藝ハッカソン」合宿を行いました。詳細についてはまた説明しますが、要するにチームで小説書こうぜというのが文藝ハッカソンです。

はじめて文藝ハッカソンを開催したのですが、小説書きとして大変面白かったので、どのようなことをやったのかご紹介いたします!

文藝ハッカソンとは?

文藝ハッカソンが何かを理解するためには、『乙女文藝ハッカソン』という漫画を読んでいただくのが手っ取り早いと思います。

先日連載が終了してしまい、とてもとても残念なのですが、小説書きならワクワクすること間違いなしの漫画です! 3巻まで出る予定なのですが、僕は単行本派なので、まだ既刊の2巻までしか読んでいません。ゆえに、そこまでの知識ということをご容赦ください。

ここで、『乙女文藝ハッカソン』のあらすじを引用します。

小説執筆は孤独なもの――? 作家志望の安達倉麻紀が入学した地方大学の文藝部には、そんなイメージを覆す奴らがいた! ITエンジニアたちがおこなう開発競争「ハッカソン」(ハック+マラソン)の概念を持ち込み、チームワークによって傑作小説を生み出すヤバい面々! SF、ミステリ、ファンタジー、純文学……独自の創作方法でそれぞれのジャンルを極めんとする乙女たちの文藝青春譚、開幕!

ね? ワクワクしませんか!

僕は非エンジニアながらIT業界でごにょごにょしているのですが、そうすると「ハッカソン」という言葉はよく聞きます。

どういうものかというと、あるテーマに沿ったプロダクトをチームで制限時間内(1〜2日のことが多い)に作っていき、そん完成度をきそうというイベントです。

実は『乙女文藝ハッカソン』の連載が開始される前から文藝ハッカソン的な試みが行われています。それが「NovelJam」。

こちらは参加者が著者だけではなく、編集者、デザイナーも一体となって作品を作り上げていきます。作品は電子書籍として実際に配信され、その配信実績も評価の対象になるので、面白い小説を書き上げる能力だけではなく、プロモーション能力も試されます。

そんな「NovelJam」が気になっていた折に読んだのが『乙女文藝ハッカソン』。複数人で小説を書く方法が細かく描写されており、「僕もやりたい!」という気持ちが高まりましたので、今回の文藝ハッカソン開催に至りました。

北九州の地へ!

さて、ここからは実際に無間書房でどのように文藝ハッカソンを開催したのかをご紹介いたします。

無間書房のメンバーは、基本的に九州の各地に住んでいます。そこで今回選んだ合宿の地は……北九州!

本当は福岡とか熊本の方が便利が良いような気がするのですが、同人の祖父母宅が北九州にあり、お借りすることができたのです。ありがたや……!

その家は小倉駅から車で30分のところにあり、なかなかの広さ。1階の3部屋分を自由に使わせていただきながら執筆を行いました。

会場はこんな感じ。メンバーは全部で5人だったのですが、なんとそのうち2人がPCを持ってきていませんでした。手書きで頑張るそうです。強い。

あと、ここにはWi-Fiもありません。本物のハッカソンだったら、ハッカーたちがブチ切れていると思います。まあ、NovelJamもPCとWi-Fi前提で進行されていると思うので、今回の文藝ハッカソンがやたら牧歌的なだけですね……。

ルールはこちら!

今回は、以下のようなルールで開催しました。

    • 3人v.s.2人の2チームに分かれて勝負
    • 24時間で5千〜1万字の作品をつくる
    • 作業をどのように分担するかは自由
    • テーマは「平成」
    • pixivに作品を投稿し、Twitterのアンケートでどちらが面白いのかを決定

文藝ハッカソン開始!

夜ご飯を近所で買い込みつつ、文藝ハッカソンの開始です!

なお、僕は3人チームの方でした。ここでは、僕のチームのやり方を中心に紹介します。

まずはプロットがないとどうしようもないので、「平成」にまつわるテーマを色々と書き出してみました。ゲーム、ポケモン、プリクラ……などなど。いわゆる「マインドマップ」に似たようなものですね。一つのテーマから、連鎖的に単語を繋げて、アイディアを膨らませていきます。

集まったメンバーの3人中2人が百合好きということもあり、とりあえず百合で良いのではという話に。さらに、僕が「SF百合っていいよね」という話をしたところ、そういった感じのお話にすることになりました。

1人でアイディア出しをしていると何日もかかってしまいますが、3人でやると1時間くらいでアイディアがまとまってしまいました。まさに文殊! アイディア出しは、絶対に複数人で話し合いながらやった方が良いです。というか、今度から、個人で執筆するときにも、誰かと話ながらアイディア出ししたい……。

プロットがだいたい出来上がった段階で、「序盤」「中盤」「終盤」にざっくり分け、3人で分担して書いてみることにしました。ちゃんと繋がりがうまくいくのか不安だったのですが、まあプロットも登場人物の名前も決まっているし、細かいところは後から調整しようということで執筆スタート。

僕は序盤だったのですが、陰キャの女の子と陽キャの女の子の話すきっかけを作るだけだったので、割と簡単でした。中盤と終盤の2人がかなりエモい感じに仕上げてきたので、後で申し訳ない気持ちに……。

Wi-Fiがないので、とりあえず各自ローカルで書きながら、最終的テザリングで一つのGoogle docsにまとめるという形に。なお、手書きの人も1人いたので、その方には最後に僕のPCを貸して打ち込んでいただきました。

晩ご飯はお寿司を食べました。豪勢。

写真だと豪勢感が伝わっていませんが、そこそこ豪勢でした!

ちなみに、「少しくらいアルコールが入っていた方が発想力が高まる」という観点から、この時点でビールを3本空けています。ほろ酔い。

ご飯を食べたら、なんか小説を書くのなんてどうでもよく(!)なり、ボードゲームを4時間くらい遊びました。

その後、自分のパートがほとんど終わっていた僕は、酔っ払って眠い頭を抱えながら布団の上でゴロゴロしていたのですが、他のメンバーはひたすら紙に続きを書いていました(PCを持ってきていない人だった)。

翌朝

そんなこんなでいつの間にか寝てしまい、次の日の朝に。昼にはここを出なくてはならないので、とりあえず現状を確認します。

全員ほとんど書き終わっている状態だったので、まずは原稿を一箇所に集めることに。テザリングを駆使しつつGoogle docsにまとめ、紙に書いていた人には、僕のPCを貸して直接打ち込んでもらいました。

PCで打ち込んでもらっている間に、僕はスマホで原稿をチェック。誤字脱字をなおしつつ、他の人の原稿との整合性を考えたりしていました。最初からシーンをぶった切っていたので、基本的には繋がりを調整すれば良さそうな感じ。原稿の打ち込みが終わった段階であらかた完了していたので、時間まで全員で校正を行ったりしました。

そしてなんとか完成! pixiに投稿しましたので、よろしければご覧ください。

平成展

ちなみに、もう1チームが書いた作品がこちら。

置いて行った僕と置いて行かれた君へ

大枠のプロットを決めて、数センテンス毎に交互に書いていたようです。その発想はなかった……。

なお、終わった後にTwitterでどちらが面白かったのかアンケートをとったのですが、僅差で負けてしまいました……。でも、たくさんの方に読んでもらえたのが何よりも嬉しいです!!

文藝ハッカソンをやってみて

感想を一言で言うと「めっちゃ楽しかった!!!」です。

執筆合宿をやったこともあるのですが、あれはそれぞれ作業内容が違うので、結局はちょっと孤独な感じがするんですよね。でも、文藝ハッカソンはチームで同じものを作っているので、一緒にやっている感覚が強くてめちゃめちゃ楽しかったです。

今回の文藝ハッカソンで一番良いなと思ったのは、プロットを皆で作る作業。一人で書く小説の場合でも、他の人と話し合いながら作った方が、精緻かつ面白いプロットが作れそうだなと思いました。

合宿場所があったので今回は実際に集まってやりましたが、オンラインでお手軽にやるのも楽しそうです!

ぜひ、皆さまもお試しください。文藝ハッカソンをどう進行していけば分からない方は、まず『乙女文藝ハッカソン』を読むのがおすすめです。

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