第57回文藝賞 大賞は藤原無雨「水と礫」


8月20日(木)明治記念館にて、選考委員・磯﨑憲一郎氏、島本理生氏、穂村弘氏、村田沙耶香氏により、第57回文藝賞の選考会がおこなわれ、受賞作は藤原無雨(ふじわら・むう)「水と礫(れき)」、優秀作は新胡桃(あらた・くるみ)「星に帰れよ」に決定した。

今回の応募総数は2360作(第56回は1840作)。賞開始以来最多の応募数となった。受賞作・選評・選考経過、受賞の言葉は、10月7日(水)発売の「文藝」冬季号に掲載される。

『文藝』は1933年に創刊。1962年より文藝賞を主宰し、数多くの作家を世に送り出している。また、2019年夏季号より誌面を大幅にリニューアルし、ADに藤亜沙美氏、表紙にクイック・オバケ氏を起用。「天皇・平成・文学」「韓国・フェミニズム・日本」など単語三つを掲げる特徴的な特集を組むなどして人気を博し、リニューアル後6号中3号が増刷されている。

2020年7月に発行された『文藝』2020年秋季号(特集:覚醒するシスターフッド)は発売4日目に3000部の増刷が決定された(初刷9000部、累計12,000部)。

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河出書房新社

第57回文藝賞 作品・作者紹介

受賞作

「水と礫(れき)」藤原無雨(400字×274枚)

藤原無雨(ふじわら・むう)
1987年、兵庫県姫路市生まれ。32歳。埼玉県在住。
マライヤ・ムー名義の共著『裏切られた盗賊、怪盗魔王になって世界を掌握する』がある。

【内容紹介】
お前の中には、誰かの見た風景が詰まってる。
誰かの中にも、お前の風景がある。

東京でのドブ浚いの仕事中の事故をきっかけに生まれ故郷へと戻ったクザーノは、弟分である甲一の後を追い、砂漠のむこうにあるという幻の町へ、ラクダのカサンドルを従え旅立った——砂漠の熱で身体を灼くのだ、それしか、この身に染み込んだ東京の水分から自由になる方法はない。 父のラモン、祖父のホヨー、息子のコイーバ、孫のロメオ。何度でも回帰する灼熱の旅が、一族の目にしたすべての風景を映しだす。時代を超え砂漠を超え、無限の魂の網の目が、いま、この瞬間に訪れる。
繰り返されるイメージが壮大なスケールを描きだす一大叙事詩。

優秀作

「星に帰れよ」新 胡桃(400字×100枚)
新胡桃(あらた・くるみ)
2003年、大阪府生まれ。16歳。現在高校2年生。東京都在住。

【内容紹介】
勝手に諦めんな。
「価値観が違うから仕方ない」なんて、浅いんだよ。

16歳の誕生日をひとり深夜の公園で迎えた真柴翔。好意を寄せる早見麻優に告白する練習をしているところに現れたのは、“モルヒネ“というあだ名で呼ばれるクラスメイトの女子。軽快なおしゃべりの傍ら、何の気なしに真柴が「お前おもしれーな」と言うと、「ごめん、その褒め方やめて」と硬い声が返ってきて——。シリアスなことが苦手で自分を軽薄に保ちたい真柴、自身の美点を理解し器用に立ち回る麻優、神様を求めながらも揺るがない自分の正義を探すモルヒネ。
高校生たちの傲慢で高潔な言葉が、彼らの生きる速度で飛び交い、突き刺さる。


執筆者

あとーす

蓼食う本の虫 主宰。文芸同人「無間書房」で短編小説や140字小説を書いています。