その小説に「あるある」はありますか?描写にリアリティを持たせるための方法を紹介!

小説を書いているときは自分の小説が世界で一番面白く感じられるものですが、ふと読み返したときに

  • 「なんだか、出来事が機械的に流れていくだけで味気ない気がする」
  • 「キャラクターの魅力を感じられない」
  • 「リアリティが足りない」

と思ったことはありませんか?

そんなときにおすすめなのが「あるある」の描写です。

ここで言う「あるある」とは、「日常で起こりうる細かい出来事の描写」を指します。「それ、わかる」という感覚だと言い換えることもできるでしょう。「あるある」と感じることには、それ自体に快があります。それは、お笑い芸人の流行ネタに「あるあるネタ」が大いことからもわかります。

「あるある」のある小説は物語の隅々にまで血が通い、リアリティを帯びます。その結果、作品をより身近に感じやすくなり、また、キャラクターの魅力も際立ってくるものです。

では、そんな「あるある」を自分の小説に取り込むためには、どのようなアプローチの方法があるでしょうか?

「あるある」を入れる方法

「あるある」を取り入れる方法として、効果的なものが二つあります。

それは、

  • 固有名詞を入れる
  • 小さいハプニングや出来事の描写をする

の二つです。

順番に説明していきましょう。

固有名詞を入れる

固有名詞は、「国名」「地名」「人名」「作品名」「商品名」など、他のものと区別するため、そのものや概念に名付けられた唯一の名前のことです。

例えば実在の「国」や「土地」を登場させるだけで、その「国」や「土地」独特のイメージを読み手に思い起こさせることができます。

ここでは例として、「同じクラスにいるお嬢様」という設定で登場人物の描写をしてみましょう。

A)桜子は何をするにも上品で、しとやかだ。育ちがよいのだろう。彼女の家は高級住宅街にあるという。

B)桜子は何をするにも上品で、しとやかだ。育ちがよいのだろう。彼女の家は世田谷区にあるという。

Aの文章より、Bの文章の方が「どんなお金持ちなのか」ということを具体的に想像できませんか?

「世田谷区にある高級住宅街ということは、家が広いんだろうな」「駅が遠いから、高い車で毎日送り迎えしてもらっているのかな……」など、世田谷区の高級住宅街を知っている人は、「金持ちあるある」として、桜子の背景を一瞬で想像できるのです。

ただ、一方で、世田谷区=高級住宅街ということを知らない人にとっては、意味がわからないかもしれないというデメリットもあります。

人によって何にリアリティを感じるのかは違います。たとえば、日本にしか住んだことのない人が、スペインの風土を固有名詞をふんだんに使って豊かに描写した小説を読んだところで、そこにリアリティを感じるのは難しいことでしょう。しかし、スペインに住んだことのある人にとっては、それがかけがえのないリアリティともなります。

固有名詞を使ってリアリティを演出するときは、「誰に向けて書いているのか?」ということを意識する必要があります。

小さいハプニングや出来事を描写する

次に紹介するのが、「小さいハプニングや出来事を描写する」というもの。

本筋には大きく影響しない、日常によくあるようなハプニングや出来事に対する登場人物のリアクションを描写してみましょう。すると、その登場人物の人間味が増し、言動にリアリティが生まれます。

キャラクターの設定をしっかり練る人にとっては、表現しやすい「あるある」と言えるでしょう。

例を出しましょう。

夏目漱石の名作『坊ちゃん』では、「親譲りの無鉄砲で子供の時から損ばかりしている」の書き出しで知られる主人公が登場します。

主人公は子どもの頃、いたずらばかりの乱暴者として両親に叱られ、兄にも嫌われていました。そんな中、老婆の下女・清だけは、主人公を「まっすぐでよい御気性だ」と評します。

清は主人公をかわいがり、いくらでも褒め、主人公にばかり物をくれるようになります。主人公は清の親切をありがたいと思いつつ、その愛情を持て余します。

清はおれをもって将来立身出世してりっぱなものになると思い込んでいた。そのくせ勉強をする兄は色ばかり白くって、とても役にはたたないと一人できめてしまった。こんな婆さんにあってはかなわない。自分の好きなものは必ずえらい人物になって、きらいなひとはきっと落ちぶれるものと信じている。(夏目漱石『坊ちゃん』)

最後の「自分の好きなものは必ずえらい人物になって、きらいなひとはきっと落ちぶれるものと信じている」という部分を読んで、くすりときた人もいるのではないでしょうか。

清の言葉は孫に盲目的に愛情を注ぐおばあちゃんの言葉に近いものがあります。親切にしてくれるのはありがたいのですが、自分がかわいいと思う子を特別と信じ込み、ほかの子供の悪口を言う……など、愛が暴走してしまうおばあちゃん。そんな姿に「あるある」と頷いてしまう方もいらっしゃるでしょう。

実際に自分のおばあちゃんがそういう人でなかったとしても、友だちのおばあちゃんや近所に住んでいるおばあちゃんが、こういう人だったという経験はありませんか?

このような愛情を受ける世間の孫たちは、多かれ少なかれ困惑することがあります。ましてや、主人公は曲がったことが嫌いな性格です。自分にだけ物をくれる清をえこひいきと思い「兄さんにはやらないのか」と聞いたり、清からお小遣いを渡されたときには「いらない」と言ったりするなど、清の愛情のすべてを受けとめるわけではありません。

日常を想起させるような出来事に対し、どんな気持ちを抱きどんな理屈でリアクションするのかをしっかり描写すれば、リアリティがぐんと増します。それは、読者の感情移入にも繋がってきます。

「あるある」を見つけるために、取材&観察をしよう

どうしたらリアリティのある「あるある」な描写ができるようになるのでしょうか?

それには、「取材」と「観察」が大事です。取材と言っても、仰々しいものではありません。「知識を得るために誰かに話を聞くこと」くらいに捉えていただければ良いかと思います。

誰かに登場人物の気持ちになってもらう

小説を読んでもらって感想をもらうときに、「登場人物の動機や心の動きがいまいち分からない」と言われたことはありませんか?

私もそう言われたあと、自分の小説を読み返し「確かに、書きたいシーンやイベントに引っ張られすぎて、そこに至るまでの登場人物の気持ちの変化が強引で一貫性がないな」と感じたことがあります。

そのあと、心情描写が不安なときは誰かに意見を聞くことにしました。

やり方としては直球です。小説で書きたい状況を簡単に説明し、「こういうときどういう気持ちになる?」「こういうときどうする?」と聞くのです。できるだけ多くの人に聞くと回答に共通性=「あるある」を発見しやすいですよ。

聞き方のポイントは、「もしあなたが誤解で先生に怒られたら、どうする?」といったように、相手に登場人物と同じ前提を持たせることです。読者が登場人物に感情移入できるよう、インタビューを受ける側には「自分の身に起こったことだとしたら」と意識して答えてもらうようにしています。

意見が集まったら、まとめたり、自分なりに傾向を分析したりして、「あるある」の落とし所を探って小説に活かします。

ものまねを極める気持ちで人に会う

人間の個性は普段の仕草や口調に表れます。キャラクターの仕草や口調をうまく描写できればそれは「あるある」となってリアリティが出ますし、登場人物の差別化を図ることができます。

しかし、書こうとしている人物と自分が全く異なる性格をしている場合、どういう仕草をするのかわからないことがあります。自分の中に明確な「あるある」を持っていない状態です。

そんなとき、どうすればリアリティのある「あるある」を繰り出せるのか。

それは、普段から自分の観察眼を磨くことで解決できます。

そして、観察眼を磨くのにうってつけなのが「ものまね」です。

人と会う約束をしたら、相手のものまねを心得るつもりで会いに行きましょう。ものまねは細かい仕草や言動がキーとなるので、自然と相手をじっくり観察するようになるはずです。

そして、これはできたらでいいのですが、あとで一人になったときにひっそりものまねの練習をしてみましょう。うまくできたら観察成功ですし、「ちょっと違うかも」と思うことがあれば、どんな特徴をとらえきれてないのかを知ることができます。

相手にはちょっと失礼ですが、ものまねによって自分とは違う人間の描写をする訓練になるはずです。

「自分の興味のないもの」「触れる機会がなかったもの」を知っておく

自分の知っている世界の範囲内のみで作品や「あるある」を書いていると、いつかはネタが枯渇してしまいます。

私も、自分の作品を読み返しながら「こんなの、前も書いたよなあ」と自分の引き出しの少なさにがっかりしたことは一度や二度ではありません。

自分が知らないこと、触れたことがないことを知るのは大変なことです。しかし、見たものや聞いたものに対して「興味があるかないか」を意識化するだけでも、意外な発見をすることができます。

たとえば、私は少し前まで車に関して全く興味がありませんでした。

そんなとき、車好きの友人がエンジンがどうの車高がどうのと熱く語ってくれたことで初めて気づいたことがあります。

それは、「ああ、私は車を単なる乗り物としか思ってなかった」ということ。

それまで、小説内で「車」を出す描写といえば移動に関することに限定されていました。私の中で車に対する「あるある」は、「歩いて五分のスーパーにもめんどくさいから車で行ってしまう」とか、「いつも一人で乗る車に五人乗ると、重くて前に進みにくくなる」とか、そういうものでした。

しかし、その一件で「車を好きな人もいる」と改めて頭にインプットされました。そこで新しい「あるある」の可能性を得たのです。

「車好きが存在するのは当たり前じゃないか」と思われるかもしれませんが、人間の脳は自分の興味がないものに関してはあまり考えようとしないものです。車好きの人には失礼ですが、私の中では車は単なる道具であり、趣味の対象ではありませんでした。

こういった発見で、私はより多角的な視点で車を見ることができるようになり、同時に表現の幅が広がったと思います。

まとめ

「あるある」の描写は、小説のリアリティを出すのに役立ちます。リアリティを出せば、キャラクターも魅力的になります。

そんな「あるある」を引き出すには、まず他人をよく観察すること。そして、自分の興味の死角を知ろうとすることです。

みなさんも「あるある」を活用し、魅力的な小説を書いてみませんか?

ABOUTこの記事をかいた人

畑山ゆう

フリーライター。小説も読みますが、漫画もとても好きです。