あなたは“何者”? 小説書きに伝えたいタグ付けのセルフブランディング術

小説書きのみなさん、ちょっとした集まりなどで、こういう会話、ありませんか。

「何してる人ですかー?」

「小説書いてます」

「えー? どういう系の書いてるんですかー?」

……この時にどう答えるべきか、めちゃめちゃ困りませんか。

ただでさえ「小説」というマイナージャンルを志しているのに、私のように「純文学」というウルトラマイナージャンルを答えてしまうと「純文学って何?」と聞かれてしまう、いや聞かれるならまだ良い方で、「(ふーん、よくわかんないけど難しそ……)」と思われて会話がしぼんでしまう可能性だってあります。

もう少しメジャーなジャンル、たとえば「SF」とか「エンタメ」とか答えたとしても、そこから話が盛り上がることってなかなか無いんですよね。というか私は一回も無いです。

おそらく「何してる人ですか?」という問いに「小説書いてます」と答えるだけではもう不十分な時代なのでしょう。

この、娯楽の多様化・細分化した時代に「小説」と答えたところで何を言ったことにもならないです。芥川賞でもとってない限り、いや、とってても、これじゃあ足りないんです。

何が足りないかというと、セルフブランディングです。

セルフブランディング=自分に「タグ付け」

先日発売されたばかりの「クリエイターのためのセルフブランディング全力授業」は、写真家の青山裕企氏による著書です。

「ソラリーマン(サラリーマンが空中でジャンプしている写真)」、「スクールガール・コンプレックス(個性的なガールズフォト)」等で知られる青山氏は、セルフブランディングの初歩として、「自分にタグ付けしよう」と提案します。

例えば彼は上記実績から「#ジャンプ写真」「#ガールズフォト」等のタグを獲得していますよね。

作風については「#エロ かつ #爽やか」「#思春期感」「#ユーモア」等が持ち味だそう。

初めて会う小説書きさんに、「エロかつ爽やかなSF小説を書いています」と自己紹介されたら、かなり作風のイメージが湧き、興味が持てるのではないでしょうか。

皆さんは、こんな感じで、自分の書くものにタグ付けできますか?

……意外とできない人が多いんじゃないでしょうか。

「そうやって一言で説明できないんだから何万字も書いてるんだよ」「小説家は、芸術家は、朴訥でいいんだよ、作品で語ればいいんだよ」と反発したくなる方もいるかもしれません。私も心のどこかでそう思っています。

しかし、SNSが浸透しきった一億総発信時代、そんなことも言ってられません。

「小説家です」だと、「写真家です」くらい漠然としているし、一億総発信時代においては同じ肩書の人が無数にいます。

「SF作家です」でもまだまだ。「ポートレート写真家です」くらい、漠然としています。

青山氏は、思い切って「細分化して『ペンギン写真家です』などと言い切ってしまってもよいくらいです。」と提案します。
「『ペンギン以外は撮らないんですか?』と思われるリスクよりも、『ペンギンならお任せください!』というウリのほうが大きいからです。」とのこと。

最近の私を例にすると、「ネット的な文体やテーマを取り込んだ、実験的な純文学を書いてます」と自己紹介しています。「ちなみに最新作は、ツイートが本文中の3分の2を占めるTwitter小説『ツイハイ』です」と。

ツイハイ|note

タグ付けは、普通でいい

タグ付け、というと、個性的でキャッチーなものを……と考えてしまいがちですが、青山氏は「普通でいいのです」と言います。

例えば青山氏は「#人見知り」で「#女の子が苦手」だったそうですが、その彼が撮るガールズフォトは、「多くの人見知りの人の心に響く可能性がある」と気付いたそうです。

小説書きでも、「人見知りをテーマに小説を書いています」と言われたら、人見知りの人はぐっと興味がわくのではないでしょうか。

ただし、タグ一個一個は普通でいいけれど、普通を沢山組み合わせて自分自身をブランディングする必要があります

青山氏は「人はみな個性的」「普通がたくさん組み合わさることによって、ほかの誰でもない自分自身になっているのです。」と勇気づけてくれます。

まとめ

しつこく言いますが、たとえどんな賞をとったとしてもセルフブランディングは必須です。直木賞だろうが芥川賞だろうがです。

ちなみに私が一年前から愛用しているタグは「#ライヴが出来る小説家」です。思春期から純文学を書いていましたが、「純文学を読む人は少なくなっている。自分から新しい世界に出ないと未来がない」「新しい芸術を作りたい」と思い、最近ライヴを始めたのです。

プロですら賞や実績だけでは生き残れないということは、逆に言うとアマチュアでもセルフブランディング次第では道が開けるということです。小説書きの皆さん、一億総発信時代を器用に渡り歩いていきましょう!

ABOUTこの記事をかいた人

渋澤怜

1986年生。東京大学文学部卒。「ライヴが出来る小説家」。幼少より小説を書き始め、純文学を志すが、「純文学を読む人は少なくなっている」「ネット時代にフィットした作品を作りたい」という理由で、朗読ともラップともポエトリーともつかぬ新しいライヴパフォーマンスを始める。小説、ライヴともにTwitterの影響が色濃く見られ、自身や他者のツイートの引用も多い。また、モチーフもインターネットやSNSが多く占める。noteにエッセイ・小説を多く投稿中。https://note.mu/rayshibusawa