知らなきゃもったいない! 和風ファンタジーに生かせる民俗学 ―妖怪編―


妖怪に伝承文化、慣習と、現在の生活に密かに影響を及ぼす民俗学。実はこの民俗学を知っていると、和風ファンタジーを執筆するときに設定の幅が拡がったりキャラ設定に独自性を持たせられたりといいこと尽くめなんです!

今回は「もっと早くに知りたかった!」となる民俗学の豆知識を教えちゃいます。ぜひご自身の執筆にも生かしてみてくださいね!

民俗学とはなにか

民俗学とは、文字を用いる事の無かったような一般の人々(百姓など)の伝統的な生活文化、民間の習俗、民族の伝承文化を研究する学問のことを言います。つまり、伝承文化や口承文化を主に研究する学問、そこから「日本人とは何か」を探っていく学問と言えるのです。

文献資料のあるような高い身分の人々の生活様式や考えは文献史学、歴史学によって解明されていきます。しかし、文字を用いることのできない百姓らの生活にこそ日本人の本質的な考え方があるのではないか? 文献資料に頼るとごく一部の識字のできる人の歴史になってしまい、「日本の人々」の歴史とは言えないのではないか? と考え、その研究のために産まれたのが民俗学なのです。

つまり民俗学は、歴史学でカバーできない、言語化されていない一般の人々の文化、習俗、考え方を探求していく学問なのです。その中には言い伝えられてきた妖怪の話や、地域それぞれの儀礼などの研究も含まれています。
その民俗学の研究で有名なのが柳田国男の「遠野物語」です。今回はその中から、特にロマンのある妖怪について見てみましょう。

妖怪

この章では妖怪、座敷童、姑獲鳥、山男について紹介していきます。座敷童については筆者も作品で使ってみたことがありますが、作風にあわせてアレンジしやすく登場させるのに持ってこいの妖怪ともいえます。それでは、さっそくそれぞれチェックしていきましょう!

座敷童

座敷童というと、「おかっぱ頭で着物を着た幼い女の子」というイメージが強いのではないでしょうか。しかし座敷童は一説では「間引きのため殺されたこども、またその子を供養するためにものを飾った部屋に現れるもの」という意味を含んでいるのです。そのためか実際、座敷童の出る旅館というものは折り鶴に紙風船、風車と幼い子どもの遊び道具でいっぱいになっているのが常ですよね。

そうして定住しているイメージのある座敷童ですが一方で、「遠野物語」では家を引越しする女の子の座敷童が登場します。

他にも、「或日廊下にてはたとザシキワラシに行き逢ひ大に驚きしことあり。これは正しき男の児なりき」「沢何某という家にも蔵ボッコ(座敷童)がいて、時々糸車を回す音などがしたという」といった記述があります。ここで言われているような座敷童は、家にいるもの、蔵にいるもの、男の子、女の子、というさまざまな種類の「座敷童」がいますよね。

つまり、座敷童は「その家にある時に限り福をもたらすもの」「比較的若年層」という共通項だけ抑えていれば間違いのないものだともいえます。それならば、元来の純真無垢な女の子というイメージにとらわれることなく、もっと男の子やひねくれものといったアレンジをきかせたキャラクター作りやプロット作りができそうですね。

神隠し

実は神隠しにも、妖怪が関わっているとされています。その名前は、「山男」。日本各地の山中に伝わる大男のことを言います。

柳田国男の「山の人生」に現れる山男は、大きさは七尺ほどとされ、現在でいうと2メートル12センチほど の巨体です。現代人でも大きいと感じるほどの巨体ですから、昔の人々にはより恐怖を感じたことでしょう。

さてこの山男ですが、「遠野物語」には「遠野町の何某という若い女が、夫と夫婦喧嘩をして、夕方門辺に出てあちこちを眺めていたが、そのままいなくなった。(中略)俺はその女房であったが、山男に攫われて来てここにこうして住んでいる。」という女性の話が載っています。

他にも「よく見るとそれは先年いなくなった厩別家の女房だった(中略)あの時自分は山男に攫われて来てここに棲んでいる」という話があります。

また神隠しから一度帰ってくる話もあり、「私は六角牛山の主のところに嫁に行っていた。あまりに家が恋しいので、夫にそう言って帰ってきたが、またやがて戻って行かねばならぬ。」というものもあります。

ここから見ると、神隠しは山男への嫁入りと解釈することもできそうです。妖怪への嫁入りは数々のファンタジーのテーマになっていますが、山男への嫁入りはなぜかなかなか見当たりません。

この記事を読んだあなた、一風変わったファンタジーを書いてみませんか?

おわりに

民俗学について、そして民俗学のなかでも人気のある妖怪についても紹介をしてきました。あなたの知らない新しい一面を知ることができたでしょうか。

民俗学は伝承や伝説、慣習、伝聞、妖怪などを包括しています。ゆえに創造性も高いものです。ぜひあなたの作品に生かしていってみてくださいね。


執筆者

附木

読書とコーヒーを愛するフリーランスウェブライター。
好きな作家は中山七里、小野不由美、森見登美彦。
趣味で小説の執筆を行い、小説サイトに投稿している。
本好きの例にもれず、いつか書庫を持ちたいと思っている。