小説を執筆しているとき、「どうしても矛盾点が出てきてしまう」「伏線回収するのを忘れていた!」など、さまざまな問題に直面するはずです。より多くの人に読まれ愛される小説を書きたいのに、気になる点がたくさん出てきて、くじけそうになった経験のある方も多いのではないでしょうか。
そうしたお悩みは、プロットで解決できます。
この記事では、プロットの書き方や作成するメリット・デメリット、おすすめのツールなどもご紹介します。
プロットの書き方を知り、今の自分が書けるベストな作品を世に送り出しましょう。
プロットとは
プロットとは、物語の重要な出来事をまとめたもの(要約)を指します。全体を把握し、矛盾や蛇足を減らすのに役立ちます。
わかりやすく無駄のないプロットを作るポイントは、抽象的な表現や書き込みは避けて、シンプルに作ること。外せないセリフ・行動・因果関係だけをまとめて、物語の全体像を把握できるよう作りましょう。
またプロットの書き方は、執筆者により大きく異なります。プロットを書かずに執筆に入る人・数行程度のプロットだけ作る人・箱書きを含めて作成してから執筆に入る人など、さまざまです。そのため、自身にとってベストな書き方を模索する必要があります。
ここまで確認し、「あらすじや箱書きとどこが違うのだろう」と思った方も多いのではないでしょうか。そこで「プロットとあらすじの違い」「箱書きとの違い」についてご紹介します。
あらすじとの違い
プロットとあらすじのもっとも大きな違いは、その役割にあります。どちらも「物語のおおまかな筋道を書いたもの」という点では同じですが、作成する目的や内容を伝える相手が異なります。
<プロットとあらすじの違い>
- あらすじ……第三者へ作品を紹介する
- プロット……作者自身が考えを整理し、執筆時の目安にするため作る
また、プロットは企画書として活用されることもありますが、あらすじはそのような使い方をしないのも大きな違いです。
箱書きとの違い
箱書きは、プロットをさらに詳しく書いたものをいいます。プロットなら物語の流れをおおまかにまとめればよいものの、箱書きでは以下のような詳細も書き込みます。
<箱書きで扱う情報>
- 登場人物
- 物語の起きている日時
- 天候や場所
- イベント
- シーンを入れる目的
- 重要な情報や伏線
「プロットをさらに詳しくしたものが箱書き」というイメージをしてもらえれば、大きな間違いはありません。
プロットを作る5つのメリット
そもそもプロットは、なぜ作るのでしょうか。「キャラクターが動くまま・自身の思いつくまま書いて、後から見直しをしていったほうが勢いのある物語が書けるのでよいのでは?」という意見もあるはずです。
そこで、プロットがあることで得られる5つのメリットをご紹介します。
ストーリーを俯瞰するのに役立つ
プロットを作るとストーリー全体を見渡せるため、さまざまなミスに気づけます。たとえば、小説を執筆していて、以下のミスに後から気づいた……なんて経験をした方も多いのではないでしょうか。
<小説執筆でありがちなミス>
- 伏線の回収忘れ
- 物語の破綻や矛盾
- ストーリーがテーマから逸れる
執筆している段階では、伏線忘れや矛盾には気づきにくいものです。しかしプロットを作っておくことで、破綻が少なく読者を引き込む力の強い、より素敵なストーリーに仕上がるでしょう。
またフィクションにリアリティを与えるためには、情報が適切に語られている必要があります。全体を俯瞰できるプロットがあれば、情報の欠けや重複に気づきやすくなるはずです。執筆へ取りかかる前に情報の偏りをチェックできれば、全体のバランスを整えられるため、後々の大幅な修正を避けられるでしょう。
メモ書きとして役立つ
小説の執筆には、長い期間を費やす場合が多いもの。とくに長編小説の場合は、数か月単位の時間がかかることもあるでしょう。
長期間のプロジェクトになれば、最初に想定していた展開や重要なポイント・伏線などを覚えておくのが難しくなります。アイデアを忘れず必要な場面できちんと活かすためにも、メモ代わりにプロットを作り、書き留めておくと便利です。
ストーリー変更時の道しるべになる
小説執筆をはじめた後にアイデアが降りてきて、急遽ストーリー展開を変更した経験のある方も多いのではないでしょうか。そうした際に注意が必要なのは、「変更したことでストーリー上の矛盾・破綻が生じていないか」という点です。プロットは、後々話の追加・変更をする際に「この話を入れても問題ないか」「サブストーリーを入れたらどのような影響がでるか」などを確認するのにも役立ちます。
またストーリーの変更がうまくいかなかった場合も、プロットがあれば修正が簡単です。プロットを見ればもともとのストーリーが記録されているため、そのとおりに書き直せば問題ありません。アイデアが頻繁に降りてくるタイプの方も、プロットがあれば迷子になる心配が減り、安心して創作活動ができるようになるはずです。
執筆スピードがアップする
プロットを作成しておくと、直接執筆に入るよりも迷いなく書き進められ、スムーズに物語が仕上がります。
プロットは、資料集としての役割も担います。プロットがあれば目的・物語のおおまかな内容・キャラクターや場所の設定などをまとめて確認できるため、執筆に欠かせない資料となるでしょう。
いつプロットを見返してもすぐに内容が把握できるよう、細かく丁寧に作成しておくのが重要です。
応募時の梗概作成で役立つ
完成した小説を新人賞へ応募する際は、梗概(あらすじ)の提出を求められるケースがほとんどです。しかし「あとは出すだけ」と思っているときに梗概を書くとなると、面倒くさく思ったり綺麗にまとまらなかったり、うまくいかない場合も。
そのようなときにプロットがあれば、重要なポイントだけを確認できるため、無駄なく情報のまとまった梗概を作成できるでしょう。
プロットを作るデメリット
プロットは重要な執筆資料となり、便利に使えます。しかし、プロットを作成することで被るデメリットもあります。どのような点がデメリットになるのか、作成へ取りかかる前にひととおり確認しておきましょう。
疲れる・時間がかかる
プロットには「執筆に際して重要な資料になる」「執筆スピードが上がる」などのメリットがあるものの、作成するのは一苦労です。そのうえ、プロットを作ったら満足してしまい、燃え尽き症候群になりそのままお蔵入りする可能性も。
そうしたリスクを回避するなら、「プロットを作りこみすぎないこと」が大切です。プロットの書き方は人それぞれのため、疲れすぎないベストな方法を模索してみてください。
キャラクターの自由度が下がる可能性がある
話を書き始めると、キャラクターが自身で動き出すタイプの方もいらっしゃるでしょう。その場合は、プロットを作ることでキャラクターの動きをブロックしてしまう場合があります。
プロットにはメリットが多いものの、必ず作らなくてはならないものではありません。
そのため「後々見直して調整していきたい」「まずはキャラクターの動くままに物語を作りたい」という場合は、プロットを作成せずそのまま執筆するのもよいでしょう。あるいは、のちほどご紹介しますが、執筆後にプロットを作成し調整する方法もあります。「キャラクターを自由に動かしたいけど、プロットを作って破綻・矛盾のない物語にしたい」という場合は、この方法を検討してみてください。
執筆そのものが退屈に感じられる場合がある
プロット作成は、おおまかな執筆内容を書き出す作業です。そのため執筆時に「すでにアウトプットした内容だし、文章として整えるだけなのは退屈だなぁ……」と感じる場合もあります。
その場合は、モチベーションが上がる「書きたい場所」から書くのがおすすめです。
プロット作成後の書き順は決まっていないため、クライマックスを迎える章からなど、途中・最後から書きはじめるのもよいでしょう。退屈さではなく楽しさを感じながら執筆できるよう、工夫してみてください。
プロットの書き方
プロットの書き方は人それぞれで異なるため、一概に「こう」といえる方法はありません。たとえば箇条書きで済ませる方もいれば、セリフ・行動・気持ちの動きまで書き込み、ストーリー展開まで済ませる方もいらっしゃいます。
ただし、そのいずれにおいても「無駄な要素を入れないこと」が大切です。ストーリーの進行に関係ない情報をできるだけそぎ落とし、エレベーターピッチ(※)を意識して作ると、洗練されたプロットに仕上がります。
※エレベーターに乗っているような、短い時間でおこなうプレゼン
また、プロットと同時にタイトルも決めておくとよいでしょう。タイトルは、数ある小説のなかから第1話目に誘導してくる、重要な役割を担っています。物語のテーマと同時に、テーマと読者ニーズを絡めた魅力的なタイトルも設定しておきましょう。
プロット作成の重要なポイントをおさえたところで、具体的な書き方についてご紹介します。簡単なものから順に3種類をご紹介しますので、試したいものにトライしてください。
【プロットの書き方1】箇条書きにとどめる方法
もっとも簡単なプロットの書き方に、箇条書きがあります。ノート・文章執筆ツール・アウトライナーなどへ、章・節ごとに以下のことを箇条書きしていきましょう。
<箇条書きする内容>
- 作品・章・節のタイトル
- 作品・章・節のテーマ・キーワード
- 登場人物
- 舞台となる場所
- 日時・季節
- あらすじ
上記の情報は、いわば「道案内における目印」になるものです。目印となるポイントがいくつもあれば、ゴールまでの道筋を説明・把握しやすく、道に迷う心配がぐっと減ります。なかでも、タイトル・テーマ・キーワード・あらすじは大きな目印になりますので、整理して必ず書き留めておきましょう。
またアナログで作業する場合は、カードやふせんを活用すると便利です。直にペンで書き込むよりも、情報の移動・整理をしやすくなります。そのほかにもメモ・画用紙を使うなど、情報整理しやすいように工夫しましょう。
【プロットの書き方2】フレームを作る方法
次に、もう少し複雑なプロットの書き方として「フレームを作る方法」をご紹介します。この方法は、フレーム(枠)となる章・節などを作り、情報を配置していく方法です。具体的には、以下のように進めていきます。
<フレームを作る方法>
- 物語の目的・コンセプト・ターゲット・ベネフィット(読んで得られるもの)を決める
- 想定している流れに沿って、物語の章・節を設定する
- 章・節ごとに起承転結とタイトルを決める
- それぞれの章・節を設ける目的やおおまかな内容(要約)を書き出す
この方法は、章・節の数が大幅に変わらず、文字数を調節しやすいのがメリットです。目的とする文字数・上限の文字数が決まっている場合に、便利に使えるでしょう。また各章・節の目的を書いておくことで、その話の意義を明確にでき、不必要なエピソードが混じりにくいのもメリットです。
【プロットの書き方3】5W1Hから掘り下げる方法
プロット作成を舞台設定(5W1H)からはじめる書き方です。プロットの具体的な書き方は、以下のとおりとなります。
<5W1Hから掘り下げる書き方>
- 5W1Hを作る
- 物語の導入と結末(はじまりと終わり)を考える
- 物語の見せ場を決める
- 章分けする
- 章の「つなぎ」を決める
- 箱書きを作る
- 微調整する
プロット作成後の工程も含まれており作業量が多いため、それぞれ分けてご紹介します。
5W1Hを設定する
はじめに、その物語の設定(5W1H)を決めましょう。5W1Hは、When(いつ)・Where(どこで)・Who(誰が)・What(なにを)・Why(なぜ)・How(どのように)の頭文字を取ったことばです。なかでも、When(いつ・年代)とWhy(なぜ・動機)がとくに重要なポイントとなります。
Whenが重要なのは、「きちんと設定しておけば、フィクションにリアリティが生まれる」「時系列的な矛盾を生まないため」です。年代を設定することで、流行りものや細やかな言葉遣いなどを具体的・矛盾なく盛りこめるため、よりリアリティのある物語に仕上がるでしょう。
またWhy(動機付け)は、物語へ読者を引き込む重要な要素です。魅力的な物語には、しっかりとした動機付けが欠かせません。さらに、きちんと動機が定まっていることによって主人公の価値観が決まり、行動に一貫性を持たせやすくなります。こちらも、意識して設定しておきたい要素のひとつです。
物語の導入と結末(はじまりと終わり)を考える
物語の軸・設定が定まったら、物語のはじまりと終わりを決めてしまいましょう。
物語は、主人公の変化をつづるものです。そのためはじまりと終わりを明確にしておくことで、物語で伝えたいメッセージを把握しやすくなります。おおまかなものでよいので、主人公の心境や行動の変化がわかるように作っておきましょう。
見せ場を決める
物語の設定・はじまりと終わりが設定できたら、「見せ場」を書き入れていきましょう。たとえば、以下のものが見せ場にあたる情報です。
<見せ場例>
- 書きたいシーン(バトルシーン・恋愛シーンなど)
- ストーリー上の大きな転換点
- ストーリー上の伏線回収ポイント
読者が読み進めやすい物語にするには、ストーリーの進捗・文字数・配置バランスを考慮しながら、見せ場を設定していく必要があります。少ない文字数のなかに複数の見せ場を設定したり、たくさん文字数があるのにあまりにも見せ場が少なかったりするのは避けましょう。
章分けする
見せ場を設定できたら、章分けをしていきましょう。章分けをする際は、「型」を意識するのがおすすめです。
物語には、以下のような、昔から用いられてきた型が存在します。
<物語の主な型>
- 起承転結
- ヒーローズ・ジャーニー(英雄の旅)
- 三幕構成
- 序破急
こうした型をベースにすることで、緩急のついた「おもしろい」物語になります。型を使ったからありきたりな物語になってしまうことはありませんので、上記の型をベースにして章分けをしてみましょう。
章の「つなぎ」を作る
章の「つなぎ」とは、リレーにおけるバトンパスの役割を担う部分です。物語の進行・転換ポイントが自然な流れとなるよう、適切なイベントをあてていきましょう。
ここで重要なのは、つなぎ部分は必ずしも各章の最後でなくてもよい点です。章の中盤に、伏線のようにして設定するのもよいでしょう。章分けしたものを見ながら、どういったつなぎがあればスムーズに進行するかを考えて、適切なものを入れていきましょう。
詳細設定を決める
ここまでで、物語の設定・はじまりと終わり・見せ場・フレーム(章)・物語の流れができました。次は、それぞれの章立てがきちんと執筆時の道しるべとなるよう、詳しい情報を入れていきます。具体的には、記事冒頭でご紹介した「箱書き」のような内容を意識して作成します。
<箱書きで扱う情報>
- 登場人物
- 物語の起きている日時
- 天候や場所
- イベント
- シーンを入れる目的
- 重要な情報や伏線
執筆前に燃え尽きてしまわないよう、ボリューム感に注意して作成しましょう。
微調整する
最後に全体を見渡して、「流れに不自然なところはないか」「不足している情報や動機付けはないか」「不要なシーンはないか」などをチェックします。過不足を減らし洗練されたストーリーにすることで、物語にメリハリがつきます。ときには、思い切って物語の流れを入れ替えるのもよいでしょう。
流れや展開を再考する必要がないように、問題ないかを確認してください。
プロットは執筆後に作るのもアリ!
プロットといえば、物語を執筆する際に必要なものというイメージが強いはずです。実際にこの記事でも、執筆前に作るプロットについてご紹介してきました。
しかし実は、執筆後にプロットを作るのもひとつの選択肢です。
執筆後に文章からプロットへ要約しなおすことで、物語を体系的に整理できます。それにより、足りない情報や余分なシーンに気づいたり、効果的なイベントを追加したりできるでしょう。「執筆前にプロットを作ると燃え尽きたり飽きたりしてしまう」とお悩みの方は、執筆後にプロット作成して、ブラッシュアップに役立てるのもおすすめです。
プロット作りに便利なツール・アプリ
ここまで確認してきて、「プロット作りって大変そう」と思った方も多いはずです。しかしツールを使えば、苦労を軽減できます。そこで、プロット作成時に活用できるツール・アプリを4つご紹介します。いずれも無料で利用できますので、ぜひ活用してみてください。
Excel
Microsoft社が提供するExcelは、馴染みのある方も多いのではないでしょうか。このツールは以下のような使い方ができ、プロット作成をスムーズに進められます。
<Excelでのプロット作成例>
<Excelを使うメリット>
- 「キャラクター」「世界観」「プロット」などをタブで分けて情報を整理できる
- 列で「章」「あらすじ」「伏線」などを分けて、一覧表のようにしてプロット作成できる
- タブを複製すれば、そのまま執筆にシフトできる
使い慣れたツールで簡単に情報を管理したい場合は、Excelを検討してみてください。
WorldType
WorldTypeは、小説に必要な設定をまとめるためのツールです。
世界観やキャラクターについて細かく設定できるため、情報にブレや矛盾のない資料集が作れます。また自由に情報を貼って整理できる「アイデアボード機能」には、情報をシェアする機能もついています。活用すれば、作品公開時のPRにも役立てられるでしょう。
WorldTypeの機能については、詳しくは「創作小説の設定がうまくまとまらない!そんな時はWorldTypeを使ってみて」でご紹介しています。気になる方は、合わせてチェックしてみてください。
Nola
Nolaでは、起承転結をもとにしたプロット作成ができます。テンプレートがすでに登録されているため、「あまり難しいプロットは組みたくないな……」という場合にも便利に使えるでしょう。有料会員になれば「序破急」「カスタム」などのフォーマットも選べるようになり、選択肢が増えるのも嬉しいポイントです。
またふせんを貼るように使えるため、直感的に操作しやすいのもこのツールのメリットといえます。
Nolaの機能について詳しくは「【画像あり】小説執筆がはかどる「Nola」とは?特徴・使い方紹介」で解説していますので、こちらも合わせてチェックしてみてください。
Xmind
引用:XMind
アイデア出し・情報整理に役立つツールとして「X-mind」があります。マインドマップでは自由にアイデアをつなげていけるため、思考整理に役立ちます。
プロット作成を一貫してできるわけではありませんが、マップに作ったメモは自由に入れ替えができるので、時系列で情報整理したい場合にぴったりです。
まとめ
小説の執筆時には、プロットを作成しておくのがおすすめです。「ストーリーを俯瞰するのに役立つ」「ストーリー変更時の道しるべとなる」などの多くのメリットがあり、物語を創作するのに役立ちます。
ただししっかり作ろうと思うと時間と労力を必要とするため、大変だと思ったらツール・アプリなどを活用して、負担を軽減しながらチャレンジしましょう。
また「小説の書き方についてあらためて勉強したいと思っている」「プロットについてはわかったので、次に小説をどう書くべきか知りたい」とお思いの方もいらっしゃるのではないでしょうか。その場合は、ぜひこのまま「おすすめの小説の書き方本は? アンケートで聞いてみた」をチェックし、創作活動にお役立てください。
コツをおさえ、魅力的な物語を創作しましょう。