突然ですが、以下の3つの例文には「誤用」が含まれています。いったいどのような「誤用」でしょうか?
- 大学生はすべからく怠惰を享受している。
- あまりにもおもしろくて一人で爆笑してしまった。
- 買い物に出かけた先でたまたま見かけたので募金した。
私たちは、人と話したり文章を読んだりすることで新しい語彙を習得していきます。もちろん、知らない言葉に出会うたびに、毎回わざわざ辞書を引くわけではありません。その結果、本来の意味とは違った意味だと思いこんで習得してしまい、次第に新しい意味の方が人口に膾炙していくことも多々あります。
しかし、小説をはじめとした文章を書くうえでは、そういった「本来の意味とは違う意味」で使うこと、いわゆる「誤用」に敏感になっておきたいですよね。意図的に「誤用」の方の意味で使うにしても、本来の意味を知っておくにこしたことはありません。
いったい、どのような言葉がよく「誤用」されてしまうのでしょうか? それを知りたいときに便利なのが『間違いやすいことばの意味探し辞典』です。
間違いやすいことばを197例収録
『間違いやすいことばの意味探し辞典』は、三省堂が出版している「ことば探し辞典シリーズ」の中の1冊です。
三省堂といえば小型の国語辞典としては『三省堂国語辞典』と『新明解国語辞典』の2種類の辞典を刊行しています。また、中型辞典として『大辞林』も出しており、辞典類に強い出版社と言えるでしょう。
そんな三省堂が刊行している「ことば探し辞典シリーズ」は、実際に文章を書くときに使いたくなる辞典がラインナップされており、今回紹介する『間違いやすいことばの意味探し辞典』も含めて現時点で10冊が刊行されています。小説を書く方向けとしては、情景描写用に『情景を描く ことば探し辞典』、心理描写用に『気持ちを描く ことば探し辞典』などもおすすめです。
さて、『間違いやすいことばの意味探し辞典』は、そんな「ことば探し辞典シリーズ」の中でも、いわゆる「誤用」に特化した辞典です。本来の意味とは違う意味で使われることばを中心に、197例が取り上げられています。
クイズ感覚で通読するのもおすすめ
この辞典は、見出しが「もともとの意味」と「勘違いしやすい意味」の2択で掲載されています。そのため、最初はクイズ感覚で「もともとの意味はどっちだろう……?」と考えながら読んでいくと面白いと思います。

辞典類といえば、分からないことばがある場合に手に取ることが多いと思いますが、『間違いやすいことばの意味探し辞典』について言えば、ぱらぱらとめくってみて意味が分かるか自信のない項目を読んだり、はじめから終わりまで通読したりするのもおすすめです。普段使っていることばの本来の意味が、自分が考えている意味とは違う、ということが意外に多いはず。
さらなる「誤用」の沼へ
この辞典を読んでいくうちに、さらに「誤用」のことが気になってくるかもしれません。何を隠そう、私はこの「誤用」というものが大好きで、常に用例を採集するべく日常会話などでも気を配っています。
もし今後さらなる「誤用」の沼へ踏み込んでいきたいという方がいらっしゃれば、おすすめの方法が2つあります。
ひとつは、複数の辞典を引き比べてみることです。実際に引いてみると、ある国語辞典では「誤用」として紹介されている意味・用法でも、他の辞書では語義の一つとして紹介されている場合もあります。辞典ごとにそのあたりの解釈がかなり異なっているので、引き比べてみると面白いです。
もうひとつは、文化庁が毎年行っている「国語に関する世論調査」を見ることです。この調査では、毎回必ず「本来の意味とされてきたものとは異なる用法」に関しての質問がなされています。たとえば、最新版の令和五年度調査では、「悲喜こもごも」「悪運が強い」「煮え湯を飲まされる」「うがった見方をする」「失笑する」が取り上げられていました。この調査では、どの程度の人が「本来の意味とされてきたものとは異なる用法」を使っているのかが知れるのも興味深いポイントです。
紙書籍で手元に置くのがおすすめ
『間違いやすいことばの意味探し辞典』はとてもコンパクトなので、執筆用のデスクに1冊置いておいても邪魔にならないでしょう。
また、三省堂の「ことば探し辞典シリーズ」の中には、他にも創作に役立ちそうな辞典がたくさんあります。気になるものがあれば、ぜひチェックしてみてください。
電子書籍版もありますが、ぱらぱらめくって見ることを考えると、個人的には紙書籍版がおすすめです。
(※冒頭の「誤用」について。ひとつめは、「すべからく」は「べき」を伴い、「ぜひ〜すべきだ」という意味で使われるのが一般的です。「爆笑」は複数人で笑うときに使うことば。「募金」は、お金を募る側が使うことばです。詳しいことが知りたい方は、ぜひ『間違いやすいことばの意味探し辞典』をお買い求めください!)
