キャラクター作りの最強の味方!『性格類語辞典』を紹介します

物語を作るときに大切なものはなんでしょう。世界観? 登場人物? どちらも同じくらい大切ですよね。

しかし、魅力的な登場人物を作ろうとしてもなかなかうまくいかず、結局完成させずに放りだしてしまった経験が私には結構あります。同じように登場人物のキャラクター造形で困っている方もいらっしゃるのではないでしょうか?

今回は、キャラ作りに悩む私の強い味方『性格類語辞典』を紹介いたします!

 「性格類語辞典」とは

「性格類語辞典」は、表現に悩む「すべての創作者のための」類語辞典シリーズのひとつです。フィルムアート社から刊行されています。

(「類語辞典シリーズ」公式サイト→ http://www.filmart.co.jp/ruigojiten/ )。

通常、類語(類義語)とは、

  • 「きれい」と「美しい」
  • 「ベッド」と「寝台」

などのように語形が異なっていても意味が似通った言葉のことをさし、通常の類語辞典は、そういった似通った言葉を収録した辞典となります。

しかし『性格類語辞典』では性格を表す言葉の言い換えはもちろんのこと、その性格のキャラはどのような行動・態度をとりがちなのか、どんなセリフを言うと違和感がないのかなど、その性格そのものに関するさまざまな言葉や事象を収録した辞典となります。

例を出しましょう。「大人っぽい」性格の人は、他にどのような性格を持ち合わせているでしょうか…?

この『性格類語辞典』では、近い性格として「責任感がある」が紹介されています。確かに、そう言われてみれば近い概念かも? 他には、「賢い」性格の人は「ユーモアのセンスがある」などといった具合に紹介されています。

他にも類語辞典シリーズの本はありますが、本書はその中でも「魅力的なキャラを作ること」に特化しており、「こういう性格のキャラを作りたいけれど、どう行動するのか、何を考えているのか想像しづらい……」というような悩みにばっちり対応してくれています。

ポジティブな性格を掲載している「ポジティブ編」とネガティブな性格を載せている「ネガティブ編」の2冊あるのですが、今回は「ポジティブ編」をピックアップします。

『性格類語辞典』における「魅力的なキャラクター」とは

先述したようにこの辞典は「魅力的なキャラクター」を作ることに特化したものです。

本書において魅力的なキャラクターとは「多面的なキャラクター」であり、辞典はそれを作るためのガイドラインといったところでしょうか。

魅力的なキャラというと、皆さん頭に浮かべるキャラがいるかと思われますが、ここでは「ドラえもん」の「のび太くん」を思い浮かべてみてください。

のび太くんは勉強も運動もできず、怠け者でお調子者な少年。いつも学校の先生やお母さんに叱られ、ジャイアンとスネ夫にはいじめられる毎日。ドラえもんのひみつ道具も怠けるか仕返しをするかのどちらかに使う場合が多く、いつも何かと騒動を起こすトラブルメーカーです。

テレビ版ののび太くんは大体こんな感じじゃないでしょうか。

しかし、彼には友達思いで心優しく勇敢な面もあるわけです。のび太くんは小さくか弱いものが襲われたりしているのを見ると放ってはおけませんし、友達が困っているときはなんだかんだ勇気を振り絞って助けに行こうとします。

誰かを助けたり守ったりするためにドラえもんに出してもらった道具は正しく使用し、大きな問題も円満に解決する理知的な側面も見せるのです。映画ののび太くんは、こちらの印象が強いですね。

つまりのび太くんは「怠け者」「いじめられっ子」「情けない」というネガティブな面と「優しい」「機転が利く」「勇敢」というポジティブな面を持っていることになります。

このように多くの性質を持つキャラを本書では「多面的なキャラクター」と称し、これが魅力的なキャラクターであると解説しています。

辞典の冒頭では、そういったキャラを作るために必要だと考えられることを11章にわけて簡単に紹介。ポジティブな性格がどのような場面で活かせるのか、どのような場面では障害となるのか、物語の中でキャラクターが成長するとはどういうことなのかなど、大事なのはわかるけれどどうやって整理したらいいのか分からないことについても書いてあります。

どのように「性格」が紹介されているのか

『性格類語辞典』のポジティブ編では、先ほどののび太くんの性格要素でいう「お人よし」「優しい」「勇敢」などのポジティブな要素を持つ性格だけを収録・紹介しています。

性格は

  • その性格が作られた要因
  • その性格の人物がとると考えられる行動や態度
  • その性格の人物が言いそうなセリフ
  • その性格に関連がありそうな感情。「感情類語辞典」から引用されている
  • その性格のポジティブな面
  • その性格のネガティブな面
  • その性格の人物と衝突しそうな性格。「性格類語辞典・ネガティブ編」からも引用されている
  • その性格の人物が困難や危機に陥りそうな場面
  • その性格を持つ映画やドラマなど既存の作品のキャラクター

の9項目に分けて紹介されています。

「勇敢」な性格のページに記載されていることを、ちょっと抜き出してまとめてみますね。

勇敢な性格の人物には、他者を危機から守りたい気持ちが強く、信念と自信を持ちそれに従って行動する人が多い。その行動は後先を考えず衝動的に起こしたものである場合がしばしばあるが、そうして失敗してもめげず何度でも挑戦する意欲がある。自己中心的な人、暴力的な人とは気が合わない。「ハリー・ポッターシリーズ」の主人公ハリー・ポッターがこの性格にあてはまるだろう。(『感情類義語辞典』ポジティブ編より)

「勇敢」な性格は、以上のような形で紹介されています。

実際の本では、こういった要素は項目ごとに箇条書きで書かれており、もっと見やすくなっています。

こうして見てみると何だかのび太くんとはかけ離れて見えますが、彼には年中グータラして過ごすという確固たる信念がありますし、それに従って行動しよく失敗します。また、めげずにドラえもんの道具を使うので、かけ離れているとは言い切れないのではないでしょうか。……こじつけっぽいですが。

本書では、ハリーの他に『指輪物語(ロード・オブ・ザ・リング)』のキャラクター、ホビットのフロドも勇敢な性格の持ち主として紹介されています。

このような形で、90種類以上のポジティブな性格が掲載されています。

ネガティブ編も合わせると200種類近くの性格の「取りやすい行動、態度」「言いそうなセリフ」「その性格がプラス(マイナス)にはたらく場面」などを調べることができます。

巻末付録

この辞典がさらに凄いのは、巻末にキャラクター制作に役立つ付録が付いていること。

しかも嬉しいことにポジティブ編とネガティブ編ではは全く別の内容なのです。2冊手に入れると、キャラ作りのヒントをよりたくさん得られるかもしれません。

ここでは、ポジティブ編の付録を紹介します。

18項目からなるキャラクターに関する質問

「名前・性別」などの基本スペックから、キャラを取り巻く「経済状況」「住んでいる地域の傾向」などの外的因子、キャラが「どのようにストレス対処するのか」「どのような倫理観を持っているのか」などといった内的因子まで幅の広い質問が18項目用意されています。実際は、1項目の中に複数の質問が用意されているので質問数はもっと多いです。

全ての質問に答えようとすると時間も頭も使うのでかなりきついですが、キャラを考えるのと一緒に物語の世界観を見直したり、答えていくうちによりキャラにあった場面設定が思い浮かんだりするので、執筆に行き詰まって改めてキャラを見直すときに便利かもしれません。

答えるのが苦手な質問があったときには、自分の苦手な設定や表現、物語の進行などを見直すこともできるので面白いです。

同心円チャートの作り方

キャラクターが何を考え、どのように行動し、どのようにふるまっているのか、などの過程を弓道の的のような形のチャートで表す方法も紹介しています。

キャラの思考や行動の中心になっている性格を円の内側に、他のキャラとコミュニケーションをとるときに出てくる性格を外側に記述していく形となっています。

なお、このチャートのPDFは、著者のひとりであるベッカ・パグリッシのサイト「Writers Helping Writers」からダウンロードできます。印刷して手書きでもよし、画像編集などでファイルに直接書き込むもよし、何度でも使うことができます。

ダウンロードはこちらから→Target Tool

海外サイトですので当然のようにPDFファイルも英語で説明が書いてありますが、本には日本語で解説が載っているので心配ありません。

まとめ

『性格類語辞典』は、魅力的なキャラクター作りをサポートをしてくれる素敵な辞典です。

ポジティブ編・ネガティブ編のどちらもあると更にキャラ作りを深めていけますが、一冊だけでも十分役に立つはず。

とくに長編小説ではキャラクターの性格のブレや矛盾を防止するのが大変だと思います。そんなときにしっかりと設定を作っておくと、一貫した性格のキャラクター作りをすることができるでしょう。

もちろん短編小説でもキャラクターを作り込むのは重要なことかと思われます。

ところで魅力的なキャラクター……私はガンダムのドズル・ザビが相当魅力的な人物だと思っています。詳しいことはここでは言えませんが、あんな上官の下で働きたい。

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しばらく創作から離れていたが、やはり何かを作りたくて出戻った。まずは書ける範囲からゆっくりリハビリ執筆活動中。