髪の毛を短く切った友だちを忘れた頃に爪を剥がした。
生ぬるくにじむ赤より小刻みに震える皮膚が透けていくのが
こわかった。僕の一部が死んでいく。もう細胞は分裂しない。
ねえ、君はどこで恐怖を覚えたの。(思い出せない。ずうっと昔)
悲しくて泣いたのはいつ。(わからない。泣かないように笑ってたから)
まばたきを規則正しく繰り返すはちみつ色の瞳が濁る。
君がいた世界が歪んでいたことにどうして僕は気づけなかった?
懸命に嘘を守ってはにかんだ、あれは笑顔じゃなかっただろう。
偽物のように広がる青空が偽物だった夢の話も、
好きだった映画みたいな暗号も、記憶の隅でいつかは眠る。
エイプリルフール。神さま、あの春にこぼした嘘を許さないでね。