噴水がゆっくりゆっくり落ちていく。どうか忘れてくれますように。
あの人の赤いまつ毛が抜けるたび終わりの予感を淡くおぼえた。
叶わない夢なら濁ってほしかった。希望のかけらを全部つかって
叫んでも絶望ばかりあでやかに残る。神さま、ひどい奴だね。
呼吸すら苦しいくせに最後まで涼しい顔で笑ってくれた。
(残酷な世界が好きだと言ったのは、ずっと一緒にいられないから?)
あの日から世界の温度はつめたくてぼくの未来は静かに溶けた。
たらればを繰り返しても無意味だね、会いたい人はもういないから。
ありふれた悲しい話。もう少しきれいな歌を作れたのにな。
「さよなら」のやさしい声を聞いたとき、見えた雫は透明だった。
爪痕が消えていくのは分かってる。どうか忘れてくれますように。