
死にたいと思ったことを覚えてる?
あの日のきみの声が届いた。
今日がただきのうに変わる。止まらない秒針がふと揺らめいたとき、
思い出が日付の向こうに駆けだして、忘れたはずの夢がぼやけた。
行かないで。置いてかないで、ここにいて。言いたいことは伝えなかった。
ああそうか、過去はとっくに僕たちを手放すことを許したんだね。
溶けていく記憶はすでにおぼろげで、それでもふたりで過ごした日々が
あったこと。ちいさな部屋で泣いたこと。
ルールはきみが先にやぶった。
ここまで?と尋ねたぼくに微笑んで、祈りの合図はそこで途切れる。
日曜日、空気の抜けた自転車で行けるとこまで行けばよかった。
果てしない空の高さに憧れたぼくらの話をだれも知らない。
