「文豪」って一体誰のこと? 355人にアンケートして聞いてみました

「文豪」と聞いて、どんな人物が思い浮かぶでしょうか。国語の教科書に作品が載っていたあの人、人生を文学に捧げて最後には自殺をしてしまったあの人、後世に残す傑作を残したあの人、などなど、人によって様々なイメージがあるのではないかと思います。

一体誰が文豪で、誰が文豪でないのか。明確な定義があるわけではないので一概には言えないのですが、多くの人が持っている共通のイメージを抽出することは可能なのではないでしょうか。

ということを考えましたので、「文豪」についてのアンケートを取ってみました。今回は、その結果を報告していきます。

アンケート内容

アンケートはTwitter上で呼びかけ、Googleフォームに回答をしてもらいました。内容は以下の通り。

「文豪」という言葉に関するアンケートです。
(※回答期限は、2020年8月14日(金)23:59とさせていただきます。)

【質問】

  • あなたの性別や年齢を教えてください(任意回答です)。
  • あなたが「文豪」と聞いて思い浮かべる「日本の作家」を教えてください。
  • 思いついた順に5人まで教えてください(5人未満でも構いません)。

※「日本の作家」の定義は難しいところですが、今回は「日本国籍を有していた/有している」もしくは「日本語で作品を発表したことがある」という条件でお考えください。

海外の文豪まで考えるとややこしくなってしまいますので、今回は日本の文豪に限定して訊いてみました。また、想起しやすい文豪と想起しにくい文豪がいるのではないかと思い、5人まで思いついた順番に尋ねています。

アンケート結果

さっそく、アンケートの集計結果を見ていきましょう。全部で355件の回答をいただきました。

まずは回答していただいた方の基本属性。僕のTwitterでアンケート回答のお願いを行った関係で、10代後半〜20代前半の女性の方からのご回答が多かったです。

▲生年。回答数は343件

▲性別。回答数は337件

誰が「文豪」なのか?

それでは、一体どんな作家が文豪と呼ばれているのでしょうか。5票以上の票を獲得したのは以下の36人です。

  • 太宰治……258
  • 芥川龍之介……251
  • 夏目漱石……220
  • 森鴎外……119
  • 川端康成……99
  • 志賀直哉……54
  • 谷崎潤一郎……53
  • 江戸川乱歩……40
  • 三島由紀夫……39
  • 坂口安吾……39
  • 宮沢賢治……35
  • 泉鏡花……24
  • 中原中也……24
  • 中島敦……20
  • 夢野久作……17
  • 島崎藤村……17
  • 織田作之助……16
  • 尾崎紅葉……15
  • 菊池寛……15
  • 梶井基次郎……11
  • 田山花袋……10
  • 萩原朔太郎……10
  • 徳田秋声……9
  • 国木田独歩……9
  • 武者小路実篤……8
  • 村上春樹……8
  • 室生犀星……7
  • 直木三十五……7
  • 有島武郎……6
  • 与謝野晶子……6
  • 井伏鱒二……5
  • 徳田秋聲……5
  • 幸田露伴……5
  • 正岡子規……5
  • 樋口一葉……5
  • 紫式部……5

生年の最も早いのは紫式部で平安時代の人物ですが、その他は明治〜昭和にかけて活躍した人物ばかりですね。存命中の人物は、村上春樹ただ1人です。

上位から見ていくと、太宰治が258票、芥川龍之介が251票でワンツーフィニッシュ。そこにやや差をつけて夏目漱石が220票で3位。森鴎外が119票で4位、川端康成が99票で5位となります。そこから更に差をつけて志賀直哉が54票で6位、谷崎純一郎が53票で7位と続きます。

トップの3人は国語の教科書でもおなじみの面々。太宰は「走れメロス」、芥川は「羅生門」、漱石は「こころ」が定番教材ですね。しかし、「城の崎にて」を書いた志賀直哉や「山月記」の中島敦がそれほど得票数を集めていないことを考えると、それだけが要因ではないようです。

漱石、芥川、太宰という1本の線

トップの3人を注意深く見ていくと、面白いことがわかります。

今回のアンケートでは5人まで思いつく順に「文豪」の名前を聞いて行ったのですが、この3人では得票した順位にばらつきがあります。

太宰と漱石は1人目として挙げられることが最も多かったのですが、芥川は2人目として挙げられることの方が多いという特徴がありますね。

これは全く個人的な感想なのですが、漱石は近代日本文学の一つの達成点として語られているような気がしています。そして太宰は当時から多くの人を魅了し、現代でも大きな影響力を残しているため、多くの人の偏愛を一身に受けているのではないでしょうか。この2人に時代的に挟まれた芥川が2番手にされてしまいがちというのは、なんとなく理解できるようなところがあります。

また、この3人を日本近代文学の一つの潮流として見てみることもできるでしょう。漱石は自宅で木曜会と呼ばれる会合を催しており、そこには様々な文学者たちが集っていました。そしてその中の一人に芥川龍之介もいました。また、太宰の芥川好きは有名で、第一回芥川賞を獲るのに執心していたという逸話もあります。

文豪は自殺しがち?

文豪は自殺してしまいがちという風潮を耳にしたことがあるのですが、この結果を見る限りは、自殺した人物はそう多くないように思います。トップ2の太宰と芥川がそれぞれ自殺しているので、そういったイメージがつくのも仕方ないのかもしれませんが……。

5票以上獲得した作家の中で他に自殺した人物といえば、川端康成、三島由紀夫などがいます。ただ、自殺したからといって順位が高いというわけではありませんね。

夏目漱石の代表作「こころ」ではKが自殺するので、トップ3は自殺に関連がある……とするのは少々乱暴でしょうか。

また、得票数は少ないものの国語の文学史などで紹介されることの多い作家の中で自殺した人物といえば、有島武郎、金子みすゞなどがいます。

コメント紹介

アンケートに対して興味深いコメントをたくさん頂きましたので、紹介させていただきます。

漠然と「文豪」という項目でしたが、「文豪とはどういう定義なのだろうか」と疑問を抱きながら回答させて頂きました。今回は「教科書に載っており、多分誰でも知っている」「文学賞の名前になっている」「〝文豪〟という字面がとても〝強そう〟な印象があり、それにそぐわないが、自分の推しであるので是非挙げたい」「国内外に名前が知られているであろう」と考えた方々を列挙しました。

文豪とアルケミストを遊んでいるので結構候補が浮かんで大変でしたが、パッと浮かびやすかったのは国語の教科書に出る方かなあと思います(夢野久作は10年くらい前のこの時期に読んだので思い出しました)

日本の文豪というと近代の作家が思い浮かびます。教科書に掲載されているから想起しやすいこと、文体が現代のものに近いので、現代の作品の源流として認識しやすく、より身近に感じやすいことが関係しているかもしれないです。

解答に含めましたが、中原中也や宮沢賢治のような、詩人やそれに片足突っ込んでる作家を文豪と呼ぶかどうか、という点において個人的には違和感があります。
文「豪」という言葉にはやはり純文学というか、ある種堅苦しい、強さみたいなものが個人的には感じられ、柔らかさを感じる詩歌作品は文豪としての基準に含めづらいと感じます。
とはいえ文豪ストレイドッグスにも多くの詩人が出ていることから、一般的には詩人も文豪の一種ということで、今回は解答いたしました。

 とても面白いアンケートだと思いました。
 日本三大文豪としてよく挙げられるのが、芥川・太宰・夏目あたりの名前で、多くのメディアで頻繁に紹介されています。教科書に掲載されている文学作品も、「羅生門」「走れメロス」「夢十夜」は外せないでしょう。内容を一文も読んだことがないとしても、多くの日本人は「蜘蛛の糸」「人間失格」「こころ」の題名をよく耳にし、何となく覚えていると思います。他にも、志賀・川端・谷崎・江戸川の名前もよく挙がります。
 しかし数年前から文豪ブームが広まり始めて、以前と比べると記念館や資料館の来客数が非常に増えています。火付け役となったのが「文豪ストレイドッグス」で、恐らく中島敦の名前はこのアンケートの上位に食い込むのではないだろうかと個人的に予想しています。わたし自身は「文豪とアルケミスト」を約3年ほどプレイしているので、推しキャラクターの一人である萩原朔太郎の名前が五番目に思い浮かびました。
 「文豪」という言葉に対する意見としては、一般的な現代の小説家に対して使う呼称ではなく、近代文学作品を書いた小説家を指すものだと思っています。戦後の方々を文豪に含めるかどうか、例えば井伏鱒二は平成までご存命でしたが年代的に文豪と呼べるのかどうか、などという議論も時折目にしますが、未だに明確な決着は付いていなかった……はずです。
 また、どうしても挙がる名前が小説家に偏りがちだなという印象があります。小説の方が文量が多く、物語という話の筋があるため人々に読まれやすい娯楽として親しみがあるのだろうと個人的には思っています。しかし詩人は一つ一つの文章を繊細に組み上げて短い作品を大量に制作するので、学校で扱う場合はどうしても有名な詩をいくつか同時に紹介せざるを得ません。また、学生には理解が難しい詩や俳句も多く、どうしても小説と比較すると「難しそう」「取っ付きづらい」「つまらない」といった印象を受けがちです。けれど案外詩人は身近にいるもので、例えば「ゆりかごの上を カナリヤが歌うよ ねんねこ ねんねこ ねんねこよ」「あめんぼ あかいな アイウエオ」「あめあめ ふれふれ かあさんが」等の、小さい頃にほとんどの人が聞いたことのあるこれらの歌は、かの有名な国民詩人である北原白秋が作詞したものです。しかし、いざ作詞した詩人の名前を聞かれたら、パッと答えられない人が多いと思います。文豪ブームが起こっている中で、小説だけでなく詩歌や俳句も同じぐらいどんどん世代を問わずに広がっていけたらと思っています。

芥川や太宰などは文豪と言われれば文豪なのですが、入りませんでした…。
自分でも理由は定かではありませんが、メロスなど児童書のシリーズになっていると文豪のイメージと離れてしまうのかなと予想しています…。

文豪、定義ではないけどまず単行本として本がある、のちの影響力、当時の影響力かなと。冊数や売り上げだけだと日配管理下で不遇だった作家は文豪になれなくなると思っているので、また再刷の巻数や復刻などの有無もあるのかなと思ってます

文豪の定義
①作品が広く知られている
②多作かつ多才
③文壇内外を問わず影響力がある
④とにかくヤバイやつ

④が重要だと思う。森鴎外、夏目漱石、泉鏡花、徳田秋聲は①②③の観点からはどうみても文豪だが④が足りない。破綻した私生活を送った葛西善蔵は文豪としての素養は充分だが①と②を満たしているとは言いがたい。

文学のために生きて文学のために死んだ太宰治は文豪というほかない。シメ子らを殺すだけにとどまらず、今もなお人を殺している。ジャーナリスティックな側面と破滅的な私小説ばかりが強調されるが、御伽草子などユーモラスな作品も書いていて多才である。

ヒロポンを打ちながら小説を書いた坂口安吾はやはり文豪である。戦争未亡人に堕落を勧め、戦争と一人の女や桜の森の満開の下などどうみても狂っているとしか思えない傑作を書いたが、例に漏れず私生活は破綻していた。

妻の死後、姪っ子とめちゃくちゃエッチしたことを小説にしたため、親族から追放された島崎藤村は間違いなく文豪である。家庭そのものがもともと狂っていたから仕方ないが、一番やばいいのは島崎藤村だ。田山花袋の蒲団などは創作であったが、新生こそがまことの自然主義文学だろう。

ノーベル賞作家でありながら、ド変態としか言いようのない片腕やみずうみや眠れる美女を書いた川端康成。趣味の骨董品を眺めるように美しい女のからだを凝視することによって、これらの傑作は生まれたにちがいない。山の音などの傑作も書いたが、骨董趣味がこうじて借金まみれになり、どうしても欲しい骨董品の前から立ち退こうとしなかった嫌がらせエピソードは文豪のなせる業である。

16才で花ざかりの森を書き、あまりに早熟な才能を示した三島由紀夫。エリートの平岡家の生まれであったが、戦争に行けなかったコンプレックスやセクシャリティの問題から作家としての地位にスター性を求めすがった。独自の皇国史観と彼が描いた観念的な虚構の美学は日本文学の中でも傑出している。まだ若い森田必勝を巻き込んで市ヶ谷駐屯地で腹切りをしたが、死後なお師をガス自殺させるなど途轍もない影響力を発揮してみせた 文豪である。

細君譲渡事件を起こした谷崎潤一郎ももちろん文豪だが、天才にして老獪な大家という印象が先行するので含めなかった。もちろん蓼食う虫に描かれた戦時体制にあろうと「花は桜、魚は鯛」をつらぬく美学は文豪にしか書けないものである。

文豪と言うのは残した作品の優劣だけでなく、その生き様にまで観点を置いてこその言葉だと思っています。だからこそ近年の作家に文豪と当て嵌めるのに躊躇する訳ですが、もしこの時代に文豪と呼べる生き方をする方がいたら、それは文学が生きた証拠になると言えるのではと思いました。

森鷗外は、軍医との二足のわらじを履いていたので、除外しました。

イメージとして純文学の小説家である、という先入観がありました。

「文豪」という言葉に「既に亡くなっている」「没後3、40年以上」「(本を読まない人含め)広く知られている」「文学への功績(新しい表現や主義等)がある」というイメージを自分が持っていることに気づきました。
けれど、五人だけ選んでと言われると、選ぶ基準に「自分で読んでみて凄いと思った」「現在書き続けている人はどうなのか?」というのも入ってきました。

アニメやゲームの影響で、教科書にあまり載らない作家の名前や作品名も認知されて来ていると思います。

どうしても文豪というと教科書でやったことのある、かつ写真がそれなりに歳をとっている人を連想します。羅生門、走れメロス、こころ、舞姫あたりはどこかしら通ると思うので、すりこまれているのかもしれません。自分は中学受験をしたのですが、その際よく山本有三と志賀直哉の話を読んだ思い出が強いです。(だから5人目は志賀直哉を連想しました)
どうしても文豪というと、小説家が思い浮かんでしまいます。好きな作家の縛りがあれば、北原白秋など詩人や歌人も出てくるのですが…

正直4人目からは軽く調べてピンときた名前を書いてしまいました。3人目まではパッと浮かんだので、私の中ではこの三人が文豪です。作品を読んだことがある、というのが主な理由です。特に夏目漱石は「銀河鉄道の夜」や「こころ」等、作品を複数読んだことがあり、かつ好きな作品も多かったので真っ先に浮かびました。芥川龍之介と太宰治はどちらも有名なので、ほぼ同時に名前が浮かびましたが、芥川作の「羅生門」「蜘蛛の糸」は学校の国語でも習ったのでより身近だった為、二人目に選びました。この三人の作品は国語の教科書で読んだり、教育テレビで音読されていたりして子供の頃の記憶として、強く印象に残っているんだと思います。
 「文豪」という言葉はふんわりした意味でしか知らなかったのですが、こうしてあげてみると、この人は文豪だけどこの人は違う気がする…という気持ちが芽生えて面白かったです。
 あくまで私個人の話ですが、江戸川乱歩や村上春樹等、もっと知っている作家はいたのに、作品を知らない中原中也や志賀直哉の方が文豪だなと感じました。村上春樹はおそらく最近の人すぎる(文豪は昔のイメージ)、というのと、江戸川乱歩はよく分からないですが、おそらくジャンルが推理に固定されてるので別の枠に入れたくなってしまうのかも…と思ったりしました。
 あと与謝野晶子とか北原白秋とか、詩が有名な方より小説が有名な方の方が文豪っぽい気がしました。無意識の差別なんですかね…。
 「文豪」というと沢山有名な作品を書いているというイメージがある気がしました

まとめ

「文豪」についてはこれといった定義がなく、人によってイメージする作家はそれぞれに違うようです。しかし、太宰・芥川・漱石をイメージする人が多く、詩人や歌人よりも小説家の名前が上がりやすいというようなことがわかりました。

また、コメントでは「文豪ストレイドッグス」や「文豪とアルケミスト」などソーシャルゲームの名前も挙がっていました。これらの影響があるのかどうか、今後検証してみるのも面白いかもしれません。

アンケート結果の全貌につきましては、以下のスプレッドシートでご確認いただくことができます。気になる方は、ぜひご覧ください!

「文豪」に関するアンケートの結果(Googleスプレッドシート)

「文豪」関連本

秀和システム

執筆者

蓼食う本の虫 主宰。文芸同人「無間書房」で短編小説や140字小説を書いています。

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