「小説が趣味」の人って、どれくらいいるの?【前編】――練馬区若者調査と「蓼食う本の虫」ユーザーを比較してみる

小説を読む人って、実際どれくらいいるんだろう?って気になりませんか。

今回は、2 つの方向性から小説読者の存在を探ってみようと思います。

第一に、「蓼食う本の虫」ユーザーさんに向けたアンケート。

第二に、2010 年の若者を対象とした練馬調査の結果。

この二種類の視点から、小説読者さんについて考察していきます!

「蓼食う本の虫」ユーザーさんに向けたアンケートとは、8月22日から9月1日までにご協力頂いたwebアンケートのこと。今回、【前編】の記事でアンケート結果を公開させて頂きます!

もう一方の練馬調査とは、2010年当時、19歳~22歳の東京都練馬区に住む若年層647名を対象とした、「若者文化とコミュニケーションについてのアンケート」のことです(詳細な 解説は【後編】にて)。

つまり、「蓼食う本の虫」読者アンケートからは「熱心な読者」の存在を、練馬調査からは「幅広い若者の中の読者」を、それぞれ探ってみようという試みになります。

一般的には「若者の読書離れ」「若者の活字離れ」等が指摘されており、若年層ってそんなに本を読まないイメージがありますよね。逆に、「蓼食う本の虫」の読者さんは熱心な小説読者だろうと想定されます。

実際、一般的にはどんなもんなのか!? 「蓼食う本の虫」読者さんは、どれだけ一般から乖離しているのか!? その辺が気になるところですね。

 

アンケート結果

「蓼食う本の虫」読者アンケートは、2017年8月22日から9月1日の間に実施されました。Webアンケート方式を利用しているため、ランダムサンプリングは採用されていません。回答数は629件、有効ケース数は615件でした。調査にご協力頂いた皆様方には、心よりお礼申し上げます!!

今回の「蓼食う本の虫」読者アンケートは、東京大学情報学環の北田暁大研究室が主体とな って行われた「若者文化とコミュニケーションについてのアンケート」調査(通称:練馬調査)を元に作成されました。この「練馬調査」は、2010年当時19歳~22歳の東京都練馬区 在住の男女二千名をランダムに抽出し対象としたもの(回収率 32.6%,有効ケース数647)。 つまり、「東京都練馬区の」「若者」という限定はつきますが、逆に言えばそれ以外の条件は ある程度揃えられていると見て良いデータとなっています。

つまり、この「練馬調査」は現在の若者一般の傾向を示す、一つの指標として見ることができるのです!

もちろん、先述の限定を始め、諸々留意すべき点はあります。調査時期も2010年と、現在から見るとやや古めであることも否めません。ですが、小説読書やライトノベル読書についての質問項目など、他の学術的調査ではなかなか見られないような興味深い項目が揃っています! 特に「蓼食う本の虫」ユーザーさんにも多い我々「書き手」側にとって、一読の価値あるデータとなっています。興味のある方は、報告書や関連書籍もご参照ください!

そして今回の「蓼食う本の虫」読者アンケートは、この「練馬調査」を元にして、ある程度比較可能な形で作成されています。「小説をどの程度頻繁に読みますか?」という質問なども、練馬調査と同様の質問形式となっています。

こんなの自己評価なんだからアテにならないじゃん!という考え方もあるでしょう。実際、読書の頻度を尋ねる方法として、毎日新聞社の「読書世論調査」で用いられているような読書冊数を尋ねる方法、NHK放送文化研究所の「日本人の情報行動調査」で用いられている ような読書時間を尋ねる方法などもあります。

今回用いたのは自己評価で「よく読む」「ときどき読む」「あまり読まない」「ほとんど読まない」「まったく読まない」の5択から選んでもらう方法ですが、実はこの方法は「JGSS(日本版総合的社会調査)」や「PISA(生徒の学習到達度調査)」でも採用されている、ある程度信頼できる指標なのです。あくまで読書頻度の自己評価なので、読書冊数や読書時間と比べると客観性は落ちますが、自意識として自分自身が「どれくらい読んでいる方か?」という点を見ることができるという長所がありますね。

練馬調査のさらなる詳細は【後編】にて解説予定です。【後編】もあわせて、よろしくお願い致します!

では、さっそく「蓼食う本の虫」読書アンケートの結果を見ていきましょう。あわせて「練馬調査」の結果も比較していきますので、「熱心な読書像」と「一般的な若者像」をそれぞれ比べながらご覧ください。

基本属性――「蓼食う本の虫」ユーザーは女性が多い?

「蓼食う本の虫」読書アンケートの回答者平均年齢は 24.8 歳(SD=±9.18)。つまり、ボリュー ムゾーン(全ユーザーの約 68%)は15.62歳から 33.98歳に収まるということです。最年少は13歳、最年長は56 歳でした。

13歳といえば、中学生のユーザーさんでしょうか?思った以上に幅広い年齢層の方が「蓼食う本の虫」を見てくださっているのですね(999 歳!みたいな回答者さんもいらっしゃいましたが、さすがに平安時代生まれの方は除外させて頂きました)。

年齢層別に見ると、10代が33.0%、20代が43.7%、30代が11.7%、40代が9.8%、50代が1.7%。10代と20代だけで8割弱を占めており、比較的若い年齢層のユーザーさんが多いことがわかりますね。

「平成28年度情報通信白書」によると、年齢層別のインターネット普及率は10代~40代で95%以上。50代からちょっと落ちて約91%、60 代は80%強……という感じに推移します。普及率から考えても、やっぱり「蓼食う本の虫」は若いユーザーさんが中心であるといえるでしょう。

「蓼食う本の虫」読書アンケートの回答者さんの性別は、男性が26.2%、女性が73.1%、無回答が0.7%でした。

「蓼食う本の虫」主宰のあとーすさんによると、もともと女性のユーザーさんが多いらしいので、この結果も妥当みたいですね。

小説全般を読んでいるか――読書家多し

「蓼食う本の虫」読書アンケートの回答者さんは、57.8%の方が「小説をよく読む」、35.8%の方が「ときどき読む」とのこと。

実に半分以上が「よく読む」との回答! めっちゃ読んでいるような印象がありますが、これだけでは「蓼食う本の虫」ユーザーさんがどれくらい一般から乖離しているのかわかりません。そこで、練馬調査の結果とも比較してみましょう。


※グラフは北田(2013b:95)を元に作成。

 

練馬調査では「よく読む」が21.8%、「ときどき読む」が30.7%という結果でした。

ざっくり言って、一般的な若者の内、小説を「よく読む」のが21.8%。対して「蓼食う本の虫」ユーザーの方は、57.8%が「よく読む」ということです。比較すると三倍弱もの差がありますね。「蓼食う本の虫」ユーザーさんの中には、熱心な読書家が多いことがわかります。

とはいえ、練馬調査の結果を見ても「まったく読まない」は16.4%だけ。詳しいことは【後編】で語りますが、「若者の読書離れ」というほど読書からは離れてない、と考えられるのではないでしょうか。

ライトノベルを読んでいるか――意外と読んでる? 意外と読んでない?

続いて、ライトノベルの読書頻度について見てきます。

先程の「小説をどの程度読みますか?」という質問に対して、「まったく読まない」と回答した人を除外した回答結果となっています(以下、「ライトノベル」「ケータイ小説」「古典小説」も同様)。「まったく小説を読まない」人に対して、よく読むジャンルを尋ねるのもナンセンス、ということですね。

「蓼食う本の虫」読者アンケートでは、ライトノベルを「よく読む」が17.6%、「ときどき読む」が30.6%、「あまり読まない」が17.6%、「ほとんど読まない」が18.4%、「まったく読まない」が15.8%と、比較的回答が分散した結果となりました。

「よく読む」と「ときどき読む」を合わせると、5割弱。「蓼食う本の虫」ユーザーさんのうち、約5割の方はライトノベルもお好きな方であると考えても良いかもしれませんね。


※グラフは北田(2013b:95)を元に作成。

 

練馬調査では、ライトノベルを「よく読む」が19.7%、「ときどき読む」が32.9%、「あまり読まない」が12.0%、「ほとんど読まない」が 13.4%、「まったく読まない」が22.0%という 結果に。

意外とライトノベルに関しては、「蓼食う本の虫」読者アンケートと練馬調査とでは思ったより差がないようですね。とはいえ、練馬調査の方が「よく読む」「ときどき読む」を合算すると5割を超えるなど、若干ライトノベル読者が多い印象を受けます。

後述しますが、「蓼食う本の虫」ユーザーさんには古典小説好きが多いようですので、そのあたりが影響しているのかもしれませんね。

ケータイ小説を読んでいるか――「ケータイ小説」という言葉の定義に揺らぎあり?

さて……今回のアンケートにおける一番の問題項目。「ケータイ小説」についての回答です。

ケータイ小説といえば、『恋空』とはじめとする、携帯電話でも手軽に読めるオンライン小説のこと。『恋空』は 2005年に連載がスタートし、2008 年に映画化・ドラマ化されているので、その前後が全盛期と言っていいでしょう。

「蓼食う本の虫」読者アンケートにおいては、「まったく読まない」が36.7%と最多。「ほとんど読まない」も18.8%と、「まったく読まない」「ほとんど読まない」だけで全体の半数以上を占めています。他方、「よく読む」16,4%、「ときどき読む」16.9%と、決して少なくない読者の存在も確認されています。


※グラフは北田(2013b:95)を元に作成。

 

練馬調査の方も見てみましょう。

練馬調査においては、「まったく読まない」が61.7%、「ほとんど読まない」が14.1%という結果でした。「まったく読まない」「ほとんど読まない」だけで4分の3を占めるなど、ケータイ小説読者は圧倒的に少ない結果となっています。

先述の通り、「ケータイ小説」の全盛期はゼロ年代後半……にも関わらず、全盛期に近い練馬調査ではケータイ小説は不人気です。他方、ケータイ小説が下火になったと思われる2017年の「蓼食う本の虫」読者アンケートでは、意外と読まれていることがわかります。

不思議な結果ですね。わたしとしては、「今時ケータイ小説なんて読んでる人いないでしょう……」と思い込んでいました。実際、練馬調査でもケータイ小説は不人気でした。今回、「蓼食う本の虫」アンケートで質問項目に取り入れたのは、あくまでも練馬調査との比較の ためでした。しかし、結果的に「よく読む」16.4%、「ときどき読む」16.9%と少なくない読者が確認されています。

いったいこれはどういうことでしょうか。2点ほど仮説を考えてみました。

 

①調査地域の問題説――都心部以外では、ケータイ小説は今でも人気

先程、わたしは「今時ケータイ小説なんて……」と言いましたが、実はこんな記事があります。

月間15億PVを誇るケータイ小説サイトを「廃れた」と言えるのか

記事によると、驚くべきことにケータイ小説というジャンルは未だ廃れておらず、莫大なPVを稼いでいるのだとか。ポイントは、「ケータイ小説のコアユーザー層は、10〜20代の女子「そのうちのかなり多くを、地方住みの女子が占めると思われる」という点。

つまり、練馬調査の対象は東京都練馬区という「都心」の若者であったがために、ケータイ小説の読者が極めて少なかった。逆に「蓼食う本の虫」読者アンケートは、地域を限定しなかったために、全国のケータイ小説読者の存在も確認された……という解釈です。

残念ながら、今回の「蓼食う本の虫」読者アンケートでは、回答者さんの居住地域は質問項目に含まれていません。あくまでも仮説の域を出ない解釈であることにはご注意ください。

 

②そもそも「ケータイ小説」という言葉の意味が伝わらない説――「なろう」「カクヨム」 などのネット小説と解釈された?

今回の「蓼食う本の虫」読者アンケートの回答者さんのうち、約3割が10代の方であることは先述の通りです。現在10代ということは、2004年から2007年生まれのユーザーさん……つまりケータイ小説全盛期に生まれておらず、「ケータイ小説」という言葉自体をご存じないユーザーさんが含まれている可能性が考えられます。

ケータイ(≒スマートフォン)で読めるオンライン小説、という意味で「小説家になろう」「カクヨム」などのweb小説サイトの読者の方が、「ケータイ小説をよく読む」と回答された回答されたとも考えられます。

……実際のところ、結論は出せません。皆様はこの結果をどう考えますか?

古典小説を読んでいるか――読む派と読まない派が半々に

続いて、またもや悩みどころの「古典小説」について。

質問文では練馬調査と同じく「あなたは、古典的な小説(夏目漱石やドストエフスキーなど) をどの程度読みますか」というものでした。「東野圭吾は?宮部みゆきはどうなるの?」と いった「何が古典小説に含まれるのか問題」は練馬調査でも既に存在した問題であり、同様の弱点を今回のアンケートでも引き継いでしまっています。 さしあたり、今回は古典小説を「大衆小説・娯楽小説とは区別される、純文学的な小説」と解釈して進めていきましょう(これはこれで、夏目漱石は大衆小説だったではないか、などの問題は発生しますが……)。

「蓼食う本の虫」読者アンケートの結果は、「よく読む」が12.0%、「ときどき読む」が38.9%、「あまり読まない」が23.8%、「ほとんど読まない」が16.9%、「まったく読まない」が 8.4%という結果でした。

「よく読む」「ときどき読む」だけでも5割を超えていることから、「蓼食う本の虫」ユーザ ーさんは古典小説を読まれる方も多いことが伺えますね。


※グラフは北田(2013b:95)を元に作成。

 

一方、練馬調査の結果は、「よく読む」が7.4%、「ときどき読む」が29.2%、「あまり読まない」が17.0%、「ほとんど読まない」が20.0%、「まったく読まない」が26.4%という結果で した。

「よく読む」は1割を下回り、「よく読む」「ときどき読む」を合算しても全体の4割に届きません。ここは「蓼食う本の虫」ユーザーさんと練馬調査とで大きく差が出た部分です。どうやら「蓼食う本の虫」ユーザーさんの方が、古典小説と呼ばれるジャンルの作品を読まれているみたいですね。

小説は趣味か――ほぼ予想通りの結果

私にとってみれば、小説読書は「最も大切な趣味」です。「趣味は何ですか?」と聞かれれば、コンマゼロ秒で「読書です!!」と即答するくらいには読書が好きです。

では、「蓼食う本の虫」ユーザーの皆様にとって、そして多くの若者にとって「小説読書」は趣味なのか?……という質問に対する回答がこちらです。

「蓼食う本の虫」読者アンケートの結果を見てみましょう。小説読書を「最も大切な趣味」と答えた方は21.8%。「数ある趣味の一つ」と答えた方が72.5%。少なくとも9割以上のユーザーさんにとって、「趣味は小説」といえることが確認できます。

小説読書を「最も大切な趣味」と答えた方の割合が、存外に少なく感じるかもしれません。 これは「小説読書」と限定した結果、詩や哲学書など、他ジャンルの読書を「最も大切趣味」 とする方が多かった可能性が考えられます。あるいは、「小説が最も大切な趣味といえるほ ど、読んでないし……」「自分よりたくさん読んでいる人はいっぱいいるし……」といったように、謙虚な気持ちが出てしまった可能性もありますね。

いずれにせよ「蓼食う本の虫」ユーザーさんは、趣味として小説読書を楽しんでおられる方が大多数であることがわかりますね。


[出典:北田暁大ほか(2013)「調査報告書(速報版)p28,「図 2.1.3 最も大切な趣味」より]

練馬調査では、残念ながら厳密に直接比較することはできません。

練馬調査においては、「音楽鑑賞」「自分でやるスポーツ」「ゲーム」「小説の読書」など多数の選択肢があり、その中からいくつでも「自分が趣味だと思うもの」に○をつけていく方式になっています。

なので厳密に比較することは出来ませんが、練馬調査では、「小説は趣味のひとつ」と答えた人が5割弱。「最も大切な趣味」と答えた人は 5%を下回る結果となりました。

一般的な若者のうち、5割弱が「趣味(のひとつ)が小説読書」と回答しているのです! これは驚くべき結果だと思います。

一方で、一般的な若者のうち、「最も大切な趣味は小説読書」と答えた人は5%以下と極めて少ない結果となっています。これらの結果を総合すると、「多くの若者が小説読書を嗜むが、最も大切な趣味に小説読書を挙げるほどコアな読書家は少ない」といった解釈になるでし ょうか。

若者のうち、5割弱が「読書は趣味」。「最も大切な趣味」としているのは5%以下。この結果……書き手としては多く感じますか? それとも、少なく感じますか?

創作するか――「蓼食う本の虫」ユーザーは創作する人が大半!

最後は、趣味で創作するかしないかについて。こちらは、練馬調査では問われていない「蓼食う本の虫」読書アンケート独自の項目となっています。質問項目自体は「あなたは、趣味で創作(二次創作を含む)をしますか」だったので、この結果には一次創作も二次創作も含 んだものです。

結果的には、85.2%が何らかの形で創作すると回答。「蓼食う本の虫」ユーザーは、熱心な小説読書であると同時に、多くは小説の「書き手」側であることがわかります。

これからも、小説の「書き手」である皆さんに役立つ記事を書いていけたらいいな、と思います!

「蓼食う本の虫」ユーザーの傾向

今度は、練馬調査との比較ではなく、「蓼食う本の虫」読書アンケートの結果をもう少し深掘りして見てみることとしましょう。

考察に際して、きわめてシンプルな統計分析である「カイ二乗検定」の結果を付記してあります。検定の計算式自体は期待値と実測値から算出される簡単なものですが、詳細は省きます。ここで言う「カイ二乗検定の結果が有意」とは、そのデータに「統計的に見て、なんら かの意味のある差異がある」ことを意味します。例えば、世代ごとに差のある項目があった場合、その差は「偶然の誤差に過ぎないのか? それとも、意味のある差なのか?」を客観的に判定してくれる便利な指標ということです。

ここからは、「蓼食う本の虫」ユーザーさんに絞った分析……つまり、熱心な読書家の方々に限定された分析になります。練馬調査が対象としているような一般的な若者像とは異なりますので、その点は注意してくださいね。

年齢層別に見る読書傾向――ライトノベルは若者だけのものではない!

まず、年齢層別に小説全般の読書量に差があるか、確認してみました。尚、50代以上の方の数が少なすぎるため、40代と合算して「40 代以上」とまとめています(以下同様)。

分析の結果、年齢層ごとに有意な差はみられませんでした(χ2=41.33, df=16, p>.05)。

「蓼食う本の虫」ユーザーは基本的に読書量が多い傾向にあり、年齢層別で見ても読書量にはあまり差はみられない、ということですね。

次に、年齢層別にライトノベル読書量に差があるか、確認してみました。

こちらも、年齢層の間に有意な差はみられませんでした(χ2=18.51, df=16, p>.05)。

個人的には意外な結果に思えます。ライトノベルは若い方の方が読むものと思っていたのですが、各世代ともに一定数のライトノベル読者は存在しているようです。

また、こんな話題もあります。ライトノベル作家の新木伸先生によると、「ラノベは『おっさん』の読み物」なのだとか……。

「も、完全にラノベは「おっさん」の読み物なので……」「ラノベを読みこんだ「ラノベ通」の読者が喜ぶものばかりを出してきて、「はじめて小説を読む」人のためのものを提供してこなかった」

若くしてライトノベルを読み始めた読者の方が、そのまま 20代、30代とスライドしていっているから、世代ごとに差がないのかもしれませんね。

続いて、年齢層別のケータイ小説読書量に差があるか、確認してみました。

結果、年齢層間でケータイ小説読書量には有意な差がみられました(χ2=29.00, df=16, p<.05)。 先述の通り、この「ケータイ小説」の項目自体に混乱が見られるので、今回は踏み込んだ解釈は控えます。しかし、グラフからも解る通り、上の世代ほど「まったく読まない」の回答率が高くなっています。年齢が上がるほどケータイ小説を読まない傾向が見えるというのは、一つの収穫かもしれませんね。 最後に、年齢層別の古典小説読書量の確認です。

結果、年齢層間で古典小説読書量には有意な差がみられました(χ2=42.39, df=16, p<.01)。 「ときどき読む」という回答は各世代で一定数存在しますが、大きな差があるのは「よく読む」という回答です。10代において「よく読む」の回答率が高いことが確認できますね。 これも意外な結果でした。古典小説、とされるものは、年齢の高い人ほど読むものかと思っていましたが、「よく読む」「ときどき読む」を合わせると、「蓼食う本の虫」ユーザーの中で最も古典小説を読んでいる層は10代のユーザーさんなのです。読書好きを名乗る以上、ある程度有名な作品、古典的な作品も抑えておかなければ……という心理が働いているのかもしれません。確かに私自身、好きでもないのに後学のために古典的作品を乱読していた時期もありました。 中には、厨二病的に「敢えて小難しい小説を読んでやるぜ!」という10 代の方もいらっしゃるのかもしれませんね。あ、私の黒歴史が……中学生次代、これみよがしに芥川龍之介の短編を振り回していた思い出がフラッシュバックします!

創作する人・しない人――好きなジャンルに差はあるのか?

今度は、「創作する人・しない人」の間に、どんな差があるのか?という点について考察してみます。

早速、創作する人・しない人の間で読書量に差があるのか、確認してみましょう。

結果、創作する人・しない人の間で、有意な差はみられませんでしたχ2=6.59, df=4, p>.05)。

創作する人・しない人の間で、小説の読書量には特に差はないということですね。さらに創作する人・しない人の間でどんな差異があるのか探るべく、他にもいろいろと分析を重ねました。結果、男女差や古典小説読書量など、ほとんどの項目で有意な差は見られませんでし た。「男性の方が創作する人が多い」とか「女性の方が創作する人が多い」だとか、そんなことは無かったのです。

では何に差があったか? というと……それは、ライトノベル読書量でした。

創作する人としない人の間で、ライトノベル読書量には有意な差が見られました(χ 2=10.09, df=4, p<.05)。 グラフの形を見ください。創作する人ほど、ライトノベルを「ときどき読む」という割合が多いのに対して、創作しない人は「ほとんど読まない」「まったく読まない」が多い傾向が見られます。 解釈の難しい部分ではありますが、「蓼食う本の虫」主宰のあとーすさん曰く「蓼食う本の虫」ユーザーの方は、そもそも web上で小説を書かれていることも多いのだとか。実際、「蓼食う本の虫」において最も人気の記事は、「小説を書くならどのサイトがいいの?小説投稿サイトおすすめ6選」とのこと。

現在のweb小説の主流が「小説家になろう」「カクヨム」等のライトノベル系に接近するジャンルであることを考えると、「蓼食う本の虫」ユーザーさんのうち、創作する人が比較的ライトノベルを好んでいるという結果も納得できるものかもしれません。

まとめ 意外と皆、本を読んでる。「蓼食う本の虫」ユーザーは読みすぎ!

小説を読んでいる人って、どれくらいいるんだろう? という問いに答えるならば、今回は次のような結論を導くことができるでしょう。

①「小説が趣味」といえる人は、一般的には約5割もいる。けっこうみんな本を読んでいる。
②「蓼食う本の虫」ユーザーは、めっちゃ本を読んでいる。「小説が趣味」とい える人は9割を超える。

練馬調査の結果を見ても、「小説が趣味」といえる人は思ったより多いことが分かりました。「出版不況」「若者の読者離れ」など書き手にとっては不安になる言葉が聴こえてくる昨今ですが、実際にはそこまで悲観すべき状況ではない、といえるのではないでしょうか。

潜在的な読者の数は、実のところ若者人口の半分は見積もれる、と言っても過言ではないのかもしれません。みなさん、これからも「蓼食う本の虫」の記事を読んでがんがん創作しましょう!

 

【参考文献・URL】
小池みき,2017,「月間15億PVを誇るケータイ小説サイトを『廃れた』と言えるのか」Wezzy. (2017年9月7日取得,http://wezz-y.com/archives/49481)
北田暁大ほか,2013「若者のサブカルチャー実践とコミュニケーション :2010年練馬区「若者文化とコミュニケーションについてのアンケート」調査」『東京大学大学院情報学環情報学研究調査研究編』(29).pp.105-153.(2017年8月7日取得,http://www.iii.utokyo.ac.jp/manage/wp-content/uploads/2016/03/29_3.pdf)
北田暁大ほか,2013,「調査報告書(速報版).pdf」「若者文化とコミュニケーションについてのアンケート」調査報告ページ.(2017年8 月7日取得,https://sites.google.com/site/kaken21730402/home/distribution)
総務省,「平成28年度情報通信白書」/(2017年9月7日取得,http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h28/pdf/)