短歌の入門としてもおすすめ! アンソロジー集『短歌タイムカプセル』を読む。

短歌を始めると、これまでにどんな作品が残されて来たのか、次第にたくさんの歌を「読んでみたい!」と思うようになるでしょう。

今回は、入門としてもおすすめしたい「アンソロジー本」のなかでも、2018年現在でもっとも新しい『短歌タイムカプセル』について取り上げます。

アンソロジーとは

「短歌を読むなら、“アンソロジー”を手に入れるといいよ!」

多くの短歌作品に触れる過程で、しばしばこのような言葉を聞くる¥ことがあります。筆者も短歌を始めた頃に、まず読むようにとおすすめされたのが「アンソロジー本」でした。

そもそもアンソロジーとはどのようなものを指すのでしょうか。

辞書を引くと「一定の主題・形式などによる作品の選集。また抜粋集」とあり、日本では古来より「詞華集」とも呼ばれました。

アンソロジーの成立は古く、遡ると紀元前90年頃に古代ギリシア詩の編纂に際してその起源がみられると言います。

当時まとめられたものにも、複数の時代の異なる作者の作品が多数収録されており、このころからすでにひとつの編集スタイルとして成立していることが伺えます。

また、日本にもアンソロジーにあたるものは古来から存在します。

例えば「万葉集」や「古今和歌集」「新古今和歌集」など、学校の授業で聞いたことがある方も多いでしょう。これらの和歌集も、アンソロジーに該当します。

ちなみに「古今」や「新古今」は、天皇の命をうけて編集された国家規模のプロジェクトでもあり、歴史的意義の強い側面もあります。

以上のような形態をもつため、「どんな作者がいるか」「どんな作品があるか」を幅広く見るために最適な一冊としておすすめです。

現代短歌を広く見渡す『短歌タイムカプセル』

短歌のアンソロジーとして、新しく刊行されたのが『短歌タイムカプセル』。

「一千年後に届けたい」現代短歌のアンソロジーとして東直子・千葉聡・佐藤弓生の三名により編集されています。

注目は、収録されている歌人の数。前衛短歌の旗手から現在20代の若手歌人まで、全部で115名の作品を読むことができます。

また氏名順に並んでいるので、探している歌人が見つけやすいのもうれしいですね。

紙面上の特徴

紙面は、歌人一人あたりに見開き2ページが割かれ、簡単なプロフィールと自選20首(故人など一部例外あり)に加え、編者による1首評から成り立ちます。

歌は、収録された歌集の刊行年が古いものから順に並んでいます。

アンソロジーでは、編者が収録歌を選ぶ場合と作者本人が選ぶ場合があります。編者が選ぶ場合は、作者の代表歌を中心に選ばれることが多いですが、作者本人が選ぶ場合は必ずしもそうではなく、自身で掲載したいと思う作品が並ぶケースもあります。

これまでに短歌に多く接してきた読者にとっては、そのあたりも鑑賞の面白さといえるでしょう。

じっくり読みたい一首評

短歌を読むのが初めてという方にとっては、どう読んだらいいのかわからない、とつまづいてしまうことがあるかもしれません。

そんなときは、ページ内の一首評に目を通してみてください。作品を読むにあたり、鑑賞する上では自由に読んでも、なんら問題はないのですが、固有の形式をもつ短歌は、作品を楽しむポイントがあり、コツをつかむと読解しやすくなるジャンルでもあります。

編者による一首評は、短歌を紐解いてくれるポイントが凝縮された羅針盤でもあり、「こんな風に読むんだな」という解釈のきっかけになることでしょう。

また自分の解釈との違いを見ることぜひ楽しんでもらいたいと思います。

こんな順番で読んでみよう!

総勢115名の歌人の歌が収録されているとなると、どこから読めばいいの?と困ってしまうかもしれません。

もちろん先頭から順に読んでもらっていいのですが、「ガイド」があるとより読み進めやすいでしょう。

ここでは、2つの観点から2つずつ読み方の「コース」を紹介します。

わかりやすい文語

みなさんが「短歌」と言われて想像するものは「文語体」の歌である場合が多いのではないでしょうか。

文語というのは、古典作品でよく見られる昔ながらの日本語です。「『現代』なのに昔の言葉を使ってるの? それって読めるの?」と思われる方も少なくないかもしれません。しかし今でも文語体をメインとする歌人は多く存在しますし、読んでみると意味のわかりやすい作品も多くあります。

「学校の古典の授業はさっぱりわからなかった」という古典アレルギーの人でも、ためらわずぜひ一読されてみることをおすすめします。

例えばこんな歌人がおすすめ)
大口玲子/香川ヒサ/小池純代/花山多佳子/花山周子/福島泰樹/松村正直/吉川宏志(掲載順・敬称略)

幻想的な世界観に遊ぶ

短歌といえば、家族のことや普段の生活、自然などの風景など身近なものや実在のものが大半を占めるように思われるかもしれません。

しかし、31文字のなかで、フィクション性の高い独特の世界観や物語性を展開する作風を強みとする歌人も多く存在します。

前衛短歌の旗手として、現代短歌に大きな影響をもたらした塚本邦雄も独自の世界観を切り開いていますが、歌の内容は難解で、それが強い魅力でもあります。

刺激的な非日常の世界に憧れる、変わったものが読んでみたい、という方はぜひ以下のような歌人の作品に触れてみてください。「短歌でこんなことも読めるんだ」というくらい短歌のイメージが変化することまちがいなしです。

例えばこんな歌人がおすすめ)
井辻朱美/平井弘/フラワーしげる/村木道彦/雪舟えま/ (掲載順・敬称略)

おわりに

『短歌カプセル』で好きになった歌人や気になった歌人がいたら、その作者の歌集を手にとってみてください(歌集は他の文芸ジャンルの書籍に比べ流通量が限られているため、入手が難しい場合もあります)。

複数の歌集を持つ歌人であれば、その文体や内容の変遷を見ることもできます。

あるいは、他のアンソロジーと見比べるのも面白さの一つ。「編集」の仕方ひとつで、歌人や歌の見方が変わる醍醐味を味わってみてください!

執筆者

福岡在住。平成生まれのパンクス気質。 短歌を詠んだり読んだりしています。 最近の好きな言葉は「引く手あまた」。

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