商業BL初心者におすすめ!腐女子ライター厳選のおすすめ5冊

男同士の恋愛を描いたBL小説。流行の移り変わりはあれど、現在も複数の商業レーベルから多くの名作が出版され、腐女子で乙女なファンの心を掴んで離しません。

しかしこんなにたくさんあると初心者はどれから手を出したらいいか、迷ってしまいますよね。

今回はそんな腐女子や腐男子の方々にむけ、これだけは絶対読んでほしいおすすめBL小説を紹介していきます。性描写よりも攻めと受けの恋愛模様や人間関係のドラマに重点をおいた作品を厳選しましたので、BLに苦手意識がある方もぜひご覧ください。

『毎日晴天!』シリーズ/菅野彰

こんな人におすすめ!

  • 大家族を中心にした日常ホームドラマやドタバタホームコメディが大好き
  • 複数カップルのそれぞれ違った恋愛模様を楽しみたい
  • 東京下町ののんびりした風情が好き

まずご紹介するのは菅野彰『毎日晴天!』シリーズ。こちらは東京下町の大家族、帯刀家の個性的な四人兄弟を中心としたホームコメディ。

物語は大黒柱にしてトラブルメイカーの長女・志麻が失踪し、その旦那を名乗るSF作家・阿蘇芳秀と連れ子の勇太が帯刀家に転がり込んでくるところから幕を開けます。

『毎日晴天!』シリーズの魅力といえば、なんといっても家族愛を主軸にした感動的な人間ドラマ。

両親を早くに亡くしたものの、家族みんなで支え合い、ご近所さんに見守られ下町でのびのび育った帯刀家の面々は大変個性的。読んでいるうちに愛着が湧くことうけあいです。

長男の編集者・大河と秀の恋愛模様の他、末っ子の愛され高校生・真弓と生粋の関西人・勇太の関係に焦点があたっており、大人と大人の微妙な機微、大人になりかけの子どものシリーズを通した成長ぶりに心が温まりました。

次男の明信にものちに同性の恋人ができるため、ノンケは三男のボクサー・丈だけとなります。

さすがに家族全員が同性愛者となると非現実的な感が否めませんが、『毎日晴天!』は性別をとびこえた人と人の繋がり、あるいはトラウマの克服の過程を丁寧に描いて、家族の枠組みを緩やかに広げて生じた恋愛感情に説得力を持たせていました。

魚住のトラウマの内容に少々言及すると、他の家族に過保護にされる真弓は幼少時に誘拐未遂の被害に遭っており、勇太は秀と血の繋がりがなく、養父に引き取られるまで大阪の崩壊家庭で育っています。

家族だからって何もかもわかりあえるとは限らない。安易に踏み込めない領域もある。

それでも手探りでゆっくりとお互いを知り、最初はどこかぎこちなかった彼等が本当の家族に、やがては恋人同士になっていく描写がじんわり胸を打ちました。

下町大家族が仲良く喧嘩するドタバタギャグと、登場人物が背負ったシリアスな過去のバランスが、『毎日晴天!』の大きな魅力となっている点は既読の方に共感いただけるのではないでしょうか。

ホームドラマBLの決定版といわれる色褪せない名作、ぜひ押さえてください。

挿絵を担当した二宮悦巳のコミカライズも原作再現度が高いのでおすすめです。

『魚住くん』シリーズ/榎田ユウリ

こんな人におすすめ!

  • ちょっとレトロなアパートでの共同生活に興味ある
  • 顔が良くて生活能力がない醗酵受けと、不器用だが頼りがいある攻めに萌える
  • おいしいご飯と丁寧な暮らしを描いた小説が好き!

お次に紹介するのは榎田ユウリ『魚住くんシリーズ』。現在、作者は一般文芸に移り活動していますが、本作は榎田ユウリの初期の名作として、今でもファンに根強く愛され続けています。

『魚住くん』シリーズは辛い過去が原因で味覚障害を患った魚住と、そんな彼の世話を焼くサラリーマン・久留米の話。

個人的にはよしながふみがゲイカップルを描いた漫画、『きのう何食べた?』と雰囲気が似ているように感じました。

男女問わず虜にする絶世の美形であるものの、ぼんやり無気力な言動で、どこか浮世離れした魚住。ひょんなことから彼と同居するはめになった久留米は、魚住と食卓を囲み日々を共にすることで彼の心をゆっくり癒し、また自らも変化していきます。

幼少時に家族を亡くし、居候先で酷い虐待に遭い続けてきた魚住。現実と乖離してるように見える彼が、心を許せる人たちと作って食べるおいしいご飯や、四季折々の変化を身近に感じる丁寧な暮らしぶりで、失われた人間性を取り戻していく過程は涙なしには読めません。

さらに魚住と久留米の周辺人物も魅力的。作者曰く、多様な人物を配し、それぞれの仕事やセクシャリティの悩みを盛り込んだ「青春群像劇」でもあるそうで、久留米の元カノのマリちゃんやインド人留学生のサリームなどは、単なる脇役以上に「いるよねこういうひと」となる、リアルな存在感を放っています。

心理描写も読みごたえがあり、スッと感情が入ってきました。

『美しい彼』/凪良ゆう

こんな人におすすめ!

  • クラスのトップと最底辺、スクールカーストに隔てられた受けと攻めに萌える
  • コンプレックスまみれの攻めが、受けに向けるクソデカ感情がたまらない
  • 高校生・同級生・学園ものといった単語にときめく

『流浪の月』で2020年本屋大賞を受賞した凪良ゆうもBL小説レーベル出身。

本作は小児性愛者の誘拐犯と、小学生の時に彼に誘拐された女性を中心にした物語で、2022年5月に実写映画が公開予定です。

男女問わずどうしようもない生き辛さを抱えた人間を描くのが巧みな凪良ゆうが、吃音癖に悩む攻めと、スクールカースト上位の受けの恋愛模様を綴ったのが『美しい彼』。

攻めも受けも両方高校生で同級生。『美しい彼』はいわゆる攻め視点の小説で、冒頭から友達作りが下手で、緊張すると吃音が出るのがコンプレックスの平良の、抑圧された心情が切々と吐露されていきます。

そんな平良が一目で惹かれたのが同じクラスの完璧な美形、清居でした。

王様としてスクールカーストトップに君臨する清居は、自己主張ができない平良をパシリとしてこき使うも、平良はそんな傲岸不遜な彼に一種の崇拝めいた感情を捧げ、どんどん溺れていきます。

性描写はそれほど多くも激しくもありませんが、ストーカー一歩手前どころか手遅れなんじゃ……と読者もやや引く平良の屈折した愛情表現と、それにこたえる清居の居住まいの気高さが耽美な官能を生んでいてドキドキしました。

正反対の二人の恋愛を見守りたい人は必読です。

『イエスかノーか半分か』/一穂ミチ

こんな人におすすめ!

  • お仕事小説とBLが絶妙なバランスで融合した名作が読みたい
  • 表と裏の切り替えが凄まじい性悪受けが好き!もっと猫かぶって!
  • モサい攻めってよくない?

一穂ミチも凪良ゆうと同じく、BLレーベル出身の作家。現在は一般文芸での活動により力を入れています。2022年本屋大賞にノミネートされた『スモールワールズ』でご存じの方も多そうですね。

そんな一穂ミチが世に送り出したのが『イエスかノーか半分か』。本作はテレビ業界を舞台にしたお仕事小説でもあり、攻めと受けの仕事に対するプライドや職場の人間関係、取材対象との間で生まれるドラマも大変読みごたえがありました。

攻めの都築の職業がストップモーションアニメーターというのも斬新。BL小説界において初めて扱われるのでは?(私が不勉強なだけで他にあったらすいません)

ちなみにストップモーションアニメとは『PUI PUI モルカー』などの粘土を動かして撮影するクレイアニメを指し、完成までに大変な時間と手間を要します。

受けの国江田計は旭テレビ所属の人気アナウンサー。端正なルックスと外面のよさから「王子」とあだ名されているものの、視聴者や関係者に対して「愚民め」と心の中で暴言を吐く二面性を隠し持っていました。

この二人のドタバタ模様を描いた物語はテンポよくコミカルで、笑いながら読み進められます。それでいて終盤では攻めと受けの変化をしっかり提示し、至福の満足感を与えてくれました。

『ヘル オア ハイウォーター』/S.E.ジェイクス

こんな人におすすめ!

  • ビバ男前受け!リバ最高!
  • 海外翻訳小説や海外ドラマのハードな世界観にハマりたい
  • バディって……いいよね……

最後に紹介するのはS.E.ジェイクス『ヘル オア ハイウォーター』

こちらは海外発のBL小説となっており、翻訳小説ならではのハードボイルドな文体と世界観に中毒性があります。

本作の最大の魅力は攻めと受けのかっこよさ。両方とも文句の付け所ない男前、さらには戦闘力や頭脳に秀でたタフガイなので、「同性がときめくのもわかる」と納得させられてしまいます。

しかもアクションモリモリのタフでワイルドな傭兵バディものときて、その手のジャンルに目がない腐女子&腐男子のテンション爆上がり。

本作のダブル主人公は元保安官候補のトム・ブードロウと元軍人のプロフェット。彼等は互いに複雑な過去を持ち、他人には明かせない深刻な秘密を抱えています。

そんなトムとプロフェットが民間傭兵派遣会社EE社にてバディを組み、巨大な陰謀が絡んだ事件に関与するのですが……。

トムとプロフェットは30代。元保安官候補と元軍人ということで、戦闘経験も豊富。
どちらも大人の余裕と色気を持ったキャラクターの魅力を十分備えており、「こんなに素敵でかっこいいならどっちが受けとか攻めとか固定できないな……」とため息がこぼれてしまいます。

ちなみにリバとはBLにおいて、受けと攻めを固定しないこと。早い話がその時々の状況や気分によって抱いて抱かれる関係をさします。

実際作中でも結構な頻度でトムとプロフェットはリバっており、双方の攻めモード受けモードの色気を堪能できるのですからたまりませんね。

話の構成も大変しっかりしていて、サスペンスアクションものの海外ドラマや洋画が好きな方はページをめくる手が止まらなくなるはず。

まとめ

以上、初心者向けのおすすめBL小説を紹介しました。

今回取り上げた作品は攻めと受けの関係・全体の物語、両面において完成度が高く、今までBLに触れたことがない方でも、エンタメの醍醐味が詰まった面白さに身を委ねて新しい世界を開けると思います。

気になる作品があればぜひ手にとってください。

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ABOUTこの記事を書いた人

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趣味で小説を書いている腐女子。ジャンルは創作BL・ホラー・ヒューマンドラマその他。好きな作家は恩田陸・浅田次郎・古川日出男・東山彰良・馳星周・ブレイディみかこ他多数。塩顔眼鏡男子が好きです。