大人にこそ読んでほしい!恋愛小説おすすめ7選

「恋愛小説」とひとくちに言っても、爽やかなものからドロドロしたものまで様々な作品があります。

今回は、大人にこそ読んでほしい恋愛小説を集めてみました。

少しビターだったり、人生について考えさせられたり……。

学生のころとは異なる視点から物語を楽しんだり、大人になったからこそ共感できる部分もあるかもしれません。

角田光代『愛がなんだ』

28歳のOL・山田テルコ(テルちゃん)は、大好きなマモちゃんに一直線。マモちゃんのために、就業中でも電話に応じたり、会社に遅刻したり、定時前に帰ったりとやりたい放題。テルちゃんはマモちゃん一色の生活を送っています。一緒にご飯を食べたり、泊まったりもするのに、テルちゃんとマモちゃんは恋人ではなくて……。

周りが見えなくなるような恋をしている主人公のテルちゃんが、危なっかしくて心配になる反面、こんなにも誰かに一生懸命になれてしまうところがほんの少しだけ羨ましくもあり……。気持ちが大きくなりすぎて執着とも感じられるテルちゃんの恋を応援したいような、できないような、不思議な気持ちになります。でもやっぱり、お互いを大切にしあえる恋愛をしたいものです。恋愛の不条理を感じる作品となっています。片思いや振り回される恋がテーマの作品を読みたい方におすすめ。2019年に映画化もされています。

橋本紡『流れ星が消えないうちに』

20歳の大学生・奈緒子は、高校時代から交際していた恋人・加地が旅先である外国の小さな島で亡くなって1年が過ぎたころから、とある理由で玄関で眠るように。高校時代からの加地の友人であり、奈緒子の現在の恋人でもある巧も、加地のことについて整理ができず……。そんな中、家出してきた奈緒子の父親や、その様子を見に来た妹など、様々な人と関わるうちに、奈緒子と巧の心は少しずつ変化していって……。

大切な人を亡くした時の喪失感と、少しずつ前を向く姿が描かれている作品。作中に出てくるプラネタリウムや「流れ星マシン」が美しく、物語に光を当てています。心理描写の多い作品を読みたい方におすすめ。2015年には映画化された作品です。

瀬尾まいこ『僕らのごはんは明日で待ってる』

兄の死以来、「人が死ぬ小説」ばかり読んでいる高校三年生・葉山亮太。体育祭で、実行委員の上村小春と「米袋ジャンプ」でペアを組むことに。小春のずけずけとした物言いに最初は戸惑いながらも、亮太の心は少しずつ開いていき、交際がスタート。紆余曲折ありながらも、社会人になって2年ほどで結婚しますが、2人にあることが待ち受けていて……。

心を閉ざしてしまっていた亮太が、「米袋ジャンプ」をきっかけに、少しずつ小春に心を開いていく姿が見所。また、小春も少しずつ自分の内側を亮太に見せるようになっていきます。辛い出来事を2人で支えあって乗り越えようとする姿は必見です。2人の軽妙なかけあいにクスッと笑えるところも、本作の魅力の1つ。自分のこれまでの境遇、これからについて考えたい方におすすめ。亮太と小春に共感したり、2人から学んだりできるところがあるかもしれません。2017年に映画化されています。

中田永一『吉祥寺の朝日奈くん』

5作からなる短編集。表題作の『吉祥寺の朝日奈くん』は、2011年に映画化されています。

▼各作品のあらすじ
とある恋人たちによる交換日記は予想もしない展開を迎えていって……(『交換日記はじめました!』)。

8年前、中学時代に起こった“ラクガキ事件”の真相が今明らかに……!?(『ラクガキをめぐる冒険』)。

廉太郎、ツトム、小山内さんの絶妙な距離感のバランスの行方は……?(『三角形はこわさないでおく』)。

おなかの音がよく鳴ることがコンプレックスの主人公の物語(『うるさいおなか』)。

吉祥寺の喫茶店に通い詰める朝日奈くんは店員の山田真野に接近して……(『吉祥寺の朝日奈くん』)。

それぞれの物語にミステリ的な要素があるので、そういった作品が好きな方にもおすすめ。また、恋愛の苦みをほんのり感じることができる短編集になっているので、ビターな恋愛小説を読みたい方にもおすすめできるかもしれません。

島本理生『よだかの片想い』

物理学を専攻する大学院生のアイコには、顔に生まれつきのアザがあります。「顔にアザやけがのある人たちのルポルタージュ」に参加すると、大きな話題となり映画化されることに。そこで監督を務める飛坂逢太と出会い、奔放で業界人の彼に戸惑いながらも、アイコは一生懸命に恋をして……。

アイコの飛坂へのまっすぐな思いが切なく、ぎゅっと抱きしめたくなるような気持ちになり、胸を打たれます。対照的に見える2人ですが、似ているようなところもあり、お互いの存在がお互いを成長させているところが素敵だと思いました。コンプレックスがある人、恋愛に一歩踏み出すことへ躊躇してしまう人にお勧めしたい一冊。2021年に映画化されています。

三浦しをん『ののはな通信』

第7回河合隼雄物語賞、第25回島清恋愛文学賞受賞作品。

2人の女性の人生が書簡形式で描かれています。貧しい家に生まれ育ち、成績優秀でしっかり者の“のの”と、代々外交官の家系に生まれ、帰国子女で無邪気な“はな”は親友同士。2人のお互いへの気持ちは、友情以上のものに変化していって……。

時間とともに関係性やそれぞれが変化しながらも、お互いを思いあう気持ちがあり、むしろますます深まっていくところが読みどころ。対照的な性格であるにもかかわらず、お互いの人生に深く影響を与え合っています。女性の人生の選択の難しさについて考えたい方、書簡形式の物語が読みたい方におすすめしたい作品です。

村上春樹『ノルウェイの森』

ボーイング747が着陸し、スピーカーから偶然「ノルウェイの森」が流れたことにより、37歳になったワタナベは18年前のことを思い出します。

親友のキズキが自ら命を絶った高校時代。その後、ワタナベは神戸から上京し大学生活を送っていました。そんな折、キズキの幼馴染であり、ガールフレンドでもあった直子と再会しますが、直子は心を病んでいって京都の施設に入所することに。ワタナベは大学で緑という風変わりな女の子に出会ったり、直子に手紙を書いたりお見舞いに行ったりして日々を過ごして……。

親しい人の死による喪失からワタナベが少しずつ再生する姿が描かれてます。「生きる」ことについて深めたい方に勧めたいです。2010年に映画化されている作品。

まとめ

現実の恋愛を楽しむのもよいですが、小説の世界で恋愛している気分になるのもよいかもしれません。

酸いも甘いもかみしめた大人にこそ、たくさんの恋愛小説を読んでもらいたいです。

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