本好きライターが選ぶおすすめエッセイ10選

エッセイストだけでなく、小説家や漫画家、芸能人が書くこともあるエッセイ。今回は、幅広い分野の方々の著書を集めてみました。

気になる作品が見つかれば本望です。

村上春樹『村上さんのところ』

読者から寄せられた3万7465通のメールから3,716通に回答し、そのうちの473通を収録した本書(3,716通のすべてのやりとりがすべて掲載されているのが、電子ブックの『村上さんのところ コンプリート版』です)。バラエティ豊かなメールへ、真摯に、時にはユーモアたっぷりに答えています。相談形式のエッセイが読みたい方におすすめです。疑問や悩み事がスッキリしたり、クスッと笑えたり。ファンの方にはもちろんですが、初めて同氏の本を手に取る方にもぜひ。

フジモトマサル氏のかわいらしいイラストも必見です。

朝井リョウ『風と共にゆとりぬ』

直木賞作家・朝井リョウ氏による『時をかけるゆとり』につづくエッセイ第2弾!

「別冊文芸春秋」掲載分に書きおろしを加えた日常にまつわるエッセイや、「日本経済新聞」での連載が収録されています。お世話になっている税理士さんの結婚式で、作家仲間と本気で余興したり、贈り物選びに四苦八苦したり……。痔瘻との戦いを記した単行本時に書き下ろされた『肛門記』に加え、文庫版には『肛門記~Eternal~』も。ついつい笑ってしまうエピソードが盛りだくさんです。楽しい気持ちになりたい方におすすめ。

益田ミリ『47都道府県 女ひとりで行ってみよう』

“日本には47都道府県もあるのに、全部行かないのはもったいないなぁ。というわけで、ひとりで全部行ってみることにした。”(本文より)

益田ミリ氏が、32歳から37歳の間に各都道府県を旅した記録になっており(時期は2002年12月中旬から2006年10月中旬)、文章だけでなく、各地での出来事等を描いた4コマ漫画も収録。自分の居住地や行ったことがある場所の魅力を再発見したり、行ってみたい地域について知ったりできます。同氏が訪れた場所をめぐる旅をしてみても楽しいかもしれません。紀行文を読みたい方やひとり旅してみたい方におすすめ。

最果タヒ『きみの言い訳は最高の芸術』

詩人・最果タヒ氏による初のエッセイ集で、同氏がブログに書いていたものを中心にまとめたものになっています(そのほか雑誌に掲載されたエッセイ等も収録)。人間関係やコミュニケーションについて(「友達はいらない」「きみが友達との楽しい時間のために、ひねり出した悪意について」)や、宇多田ヒカル氏について(「宇多田ヒカルのこと」)や、不思議な言葉や歌詞について(「POPとは出し抜くことと見つけたり。(575)」)など。同氏の感性を同氏による文章で感じてもらいたい1冊。言葉選びに圧倒されます。

若林正恭『社会人大学人見知り学部 卒業見込』

お笑い芸人・オードリーの若林正恭氏によるエッセイ。『ダ・ヴィンチ』の2010年8月号~2013年3月号に掲載されたものと書き下ろしが収録されています(文庫版には完全版として、100ページ分の単行本未収録作品も)。長い下積み期間を経た同氏が、2008年のM-1グランプリで2位になってからの4年間について「社会人一年生」、「社会人二年生」「社会人三年生」、「真社会人」として綴り、自意識と社会に悩まれていた日々が描かれています。社会人になりたてで不安な人、お笑いが好きな人におすすめ。

江國香織『とるにたらないものもの』

とるにたらないものものを掬い上げたエッセイ集。江國香織氏の筆致により、それらが大切なものであることがうかがえます。祖母のレモンしぼり器、傷と汚れについて、ケーキについてなどなど。さまざまなものに対する、同氏の繊細な感性と美的感覚を堪能できるでしょう。1編が短いので、少しずつ読み進めることが可能です。1日1編ずつ読み進めるのも楽しいかもしれません。日常にあるものや心に残っているものがテーマの作品を読みたい人におすすめです。

森見登美彦『太陽と乙女』

森見登美彦氏がデビュー以来14年間にわたる““小説以外に書いた文章のほとんどすべて”“(刊行時)が収録されています。読書や文庫解説やお気に入りのものについて。自著や散歩や旅。四畳半時代の思い出や台湾で連載されていたエッセイなどなど……。盛りだくさんの内容で読み応えのある1冊です。同氏の世界観を堪能できるはず。同氏の解説している本を読んだり、お気に入りとして紹介されている映像作品を観たりしても面白いかもしれません。

小川糸『針と糸』

ベルリンでの生活や母との確執、料理や人生についてなど……。毎日新聞の日曜版でエッセイ連載していたものがまとめられたものです。小川糸氏の丁寧で身軽な暮らしに憧れてしまいます。海外での生活に関心のある方や人生について考えたい方におすすめです。日本と海外の考え方の違いにはっとしたり、人間関係やこれからのことについて見つめなおすことができたりするかもしれません。

又吉直樹『第2図書係補佐』

2006年3月から2009年7月にヨシモト∞(無限大)ホールのフリーペーパーでの本を紹介するコラム連載をまとめたもの。尾崎放哉や太宰治をはじめとする文豪の作品から、吉本ばなな氏や村上春樹氏などの現代を代表する作家の作品などが、又吉直樹氏のエッセイとともに紹介されています。次の1冊に迷われている方にお勧めです。紹介されている本を同氏のエッセイとともに、手に取ってみるのはいかがでしょうか?

万城目学『べらぼうくん』

万城目学氏が浪人生時代から小説家としてデビューするまでの青春時代を振り返ったエッセイ。同氏が小説家としてデビューするまでに大学生活を送ったり、就職したり退職したりと、紆余曲折あり、貴重なエピソードを知ることが可能です。当時の時代背景や流行について感じたことも述べられており、その観察眼が光っています。小説家としてどのような道をたどってデビューしたのか知りたい方や、半生が綴られている自伝的な読み物が気になる方におすすめの1冊。

おわりに

様々な価値観や考え方に触れられるのがエッセイのよいところ。

手に取った作品を堪能していただければ幸いです。

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