本好きライターが選ぶ青春小説おすすめ10選

青春時代の思い出は、心に深く残るもの。

今回は、青春を見事に活写した小説を集めてみました。登場人物に共感したり、あの日々を懐かしく思うかもしれません。

次の1冊にいかがでしょうか?

朝井リョウ『桐島、部活やめるってよ』

朝井リョウ氏のデビュー作。2012年には、映画化されています。田舎の県立高校が舞台となっている連作短編集です。バレー部のキャプテンで、学校のヒーロー的存在である桐島が部活を辞めるという噂によって広がる小さくて大きな影響、人間関係、思春期の葛藤を掬い上げた物語です。短編ごとに、それぞれの物語で主人公が変わり、違う視点から楽しめます。

高校生の頃に初めて読み、作中の人物のリアルさに一気に引き込まれました。自分自身も登場人物と同じ気持ちになったことがあるし、同じクラスに登場人物のような子がいてもおかしくないと感じたからです。キラキラした青春というよりは、それぞれの登場人物の心理描写が豊かで、各人の抱えているものや葛藤が描かれています。また、登場人物たちの人間関係の脆さ、危うさにハラハラします。心理描写や人間関係の描写が豊かな作品を読みたい方におすすめです。

中田永一『百瀬、こっちを向いて』

4作品が収録されている短編集です。表題作「百瀬、こっちを向いて」は2014年に映画化されており、初恋と青春の甘酸っぱさや切なさが詰まった一作となっています。

自称「人間レベル2」の高校生・相原ノボルは、幼馴染である宮崎先輩から頼まれ、同級生の百瀬陽と付き合うフリをすることに。その理由は宮崎先輩の彼女・神林先輩から向けられる、百瀬と宮崎先輩への疑念をそらすため。百瀬と日々を過ごし、今まで知らなかった感情が芽生え始める中、宮崎先輩・神林先輩とノボル・百瀬でダブルデートに行くことになり……。

主人公はノボルですが、ほかの主要な登場人物(百瀬、宮崎先輩、神林先輩)の視点から読むと、現実のままならなさやそれぞれの複雑な気持ちが見えてより一層楽しめます。また、主人公の友人・田辺くんとノボルがドーナツ店で話すシーンは必見です。恋愛の切なさだけでなく、素敵な友情もあり青春がぎゅっと詰まった物語になっています。

森絵都『カラフル』

大きな過ちを犯して死んだぼくの魂は、輪廻のサイクルから外されるはずでした。しかし、抽選に当たり、下界で再挑戦するチャンスを得て、一定期間誰かの体を借りて過ごす「ホームステイ」をすることに。ぼくは、自殺を図った少年・小林真として生活する中で、人間関係や様々な問題と向き合って…。2010年には「カラフル」としてアニメ映画化、2022年には「HOMESTAY」として実写映画化されている作品。

期間限定の「ホームステイ」だからこそ、ぼくが小林真として、周りの人に思ったことを伝え、それまでとは違う角度で人間の良い面・悪い面を見ることができるようになります。そんなぼくを見ていると、自分自身や周囲の人のさまざまな面を受け入れられる気がするのです。「自分もちょっと長めのホームステイをしている」と思うと、肩の力をぬくことができるかもしれません。生きるのがほんの少し楽になる作品です。

恩田陸『夜のピクニック』

みんなで、夜歩く。たったそれだけのことなのにね。どうして、それだけのことが、こんなに特別なんだろうね。(本文より)

2005年の本屋大賞受賞作で、2006年には実写映画化されています。

高校生活最後のイベント・歩行祭。それは、朝の8時から翌朝の8時まで80km歩くというもの。甲田貴子は、この行事で小さな秘密の賭けを実行しようとしていて……。

青春時代に友人と語らいあったり、共に物事に取り組んだりすることは、その瞬間はもちろん、振り返った時にも大切な時間として残り続けるもの。読み手も北高の生徒として歩行祭に参加して、登場人物たちと大切な思い出を共有しているような気分になれます。長めの物語ではありますが、非常に臨場感があるため、思わず一気読みしたくなる作品です。貴子の賭け以外にも、それぞれの思惑が交錯するところにもぜひ注目してみてください。

佐藤多佳子『明るい夜に出かけて』

第30回山本周五郎賞受賞作品です。また、オールナイトニッポン55周年記念作品として、2023年3月から4月に舞台化されています。

深夜ラジオのヘビーリスナーである富山は、インターネットでのトラブルをきっかけに大学を休学。アパートでの一人暮らしを始め、コンビニで深夜のアルバイトをすることに。夜勤シフトリーダーで「歌い手」の鹿沢、客として来店してきた「ハガキ職人」の女子高生・佐古田、深夜ラジオ好きの同級生・永川との関わりを通じて、富山の心境は少しずつ変化していって……。

アルコ&ピースのオールナイトニッポンが物語に絡んでおり、ラジオ好きの方にオススメしたい1冊。もちろん、ラジオに詳しくなくても楽しめます。

人との関わりを避けていた主人公ですが、少しずつ周囲の人と交流し始め、抱えているものと向き合うようになる姿に励まされる作品です。少し勇気が欲しい時に読むと背中を押してもらえるかもしれません。

宮下奈都『羊と鋼の森』

2016年に本屋大賞を受賞し、2018年に映画化されている作品です。

高校生の外村は、ひょんなことからピアノの調律師・板鳥に出会い、調律に魅了され、卒業後はその道に進むことを決心。調律の専門学校を出て、板鳥の務める江藤楽器に就職し、一人前の調律師になるべく、職場の先輩の背中を見て学んだり、お客さんたちに揉まれたりしながら日々仕事に励んでいって……。

主人公の外村が、調律師として成長しようと「こつこつ」日々できることに真摯に向き合う姿に胸を打たれます。一生かけて極めたいことがある幸せと苦しみを感じました。外村の先輩たちやお客さんの双子の姉妹など個性豊かな面々が出てくるところにも注目してもらいたい作品です。何かに思い切り打ち込みたい人、成長物語が読みたい人におすすめ。内に秘めた静かな情熱を淡々と燃やしている物語になっています。

早見和真『ひゃくはち』

2008年に映画化されている作品です。

二〇〇×年夏、青野雅人は、ひょんなことから高校時代を思い出して……。野球の名門・私立・京浜高校に一般入試で入学し、中学時代に輝かしい成績を収めている同級生たちや、主人公と同じく一般入試組の親友・ノブと、野球部寮・泰平寮で絆を深め、甲子園を目指していた青春の日々。いよいよ3年の夏を迎えることになるが、最後の大会を前にある「出来事」が起こり……。

高校時代と、それを振り返る現在の2つの軸での構成になっています。リズムよく、コミカルなやり取りで物語が進むことが多いので、ぐんぐん読み進められる作品です。

ドラマや映画でみるような典型的な高校球児ではなく、仲間と遊んだり、合コンしたりといった、リアルで「青春臭い」姿が描かれており、終盤に起きる「出来事」に対しての、主人公の決断、そして現在でどのように振り返るかに注目。

瀬尾まいこ『戸村飯店 青春100連発』

第24回坪田譲治文学賞受賞作。

大阪の大衆中華料理店の戸村飯店で生まれ育った2人兄弟の物語です。見た目と要領は良いけれど、うまく戸村飯店になじめない兄・ヘイスケと、単純明快な性格で戸村飯店にうまくなじんでいる弟・コウスケ。兄・ヘイスケは高校卒業後、小説の専門学校に入学するために上京。一方、弟・コウスケはラスト1年の高校生活を謳歌することに。地元への様々な思いや、恋愛、友情、などなど。真逆のようでどことなく似ている2人が人との関わりを通じて成長し、これからについて考えていって……。

関西弁でテンポのよい、コミカルな会話にクスッと笑えます。実家からの自立や、恋愛、友情、進路選択など、多くの課題に向き合う姿が描かれているため、同じようなことに悩んでいる方、人生の岐路にいる方におすすめ。ユーモアと明るさに元気が出ます。

瀧羽麻子『うさぎパン』

文庫本には、表題作の『うさぎパン』のほか、書き下ろしの『はちみつ』が収録されています。今回は、表題作をご紹介。

継母のミドリさんと暮らす優子は、小・中と私立の女子校で育ちでしたが、高校から共学に通うことに。両親が離婚している同級生・富田君とパン屋巡りをしたり、家庭教師の美和ちゃんに勉強を教えてもらったりと、充実した毎日。そんなある日、死んだはずの「母」である聡子が美和ちゃんの体を借りてあらわれて…。

死んだはずの母が現れる、という不思議なことが起こりますが、周りの人たちからの、特に家族からの愛に心温まる物語です。おいしそうなパンが作中に出てくるので、読むと少しおなかがすいてしまいます。優しい気持ちになりたい人におすすめ。タイトルの『うさぎパン』に読後、ほっこりするはず。

越谷オサム 『階段途中のビッグノイズ』

若さを武器に勝負できるのはせいぜい十代のうちだから、少々不躾だけどお願いがありますっ(本文より)

先輩2人の不祥事により、所属する軽音部が廃部の危機に追い込まれた高校2年生の神山啓人。幽霊部員だったベース担当の伸太郎に加えて、音楽に厳しいが楽器の腕は確かな勇作、元吹奏楽部でパーカッション担当だった徹といった個性豊かなメンバーとともに、風変わりな国語教師のカトセンを顧問に迎え入れ、文化祭でのステージ『田高マニア』出演のために奔走して……。疾走感あふれる青春物語。

バラバラだった部員たちが、様々な困難を乗り越えて1つになっていくところが見どころ。それぞれの個性が少しずつ調和して、それが演奏にも反映されていきます。音楽が好きな人、何かに打ち込んでいる青春小説が読みたい人にお勧めの1冊。読んだ後や読んでいる途中に、作中に出てくる曲を聴きたくなってしまいます。

おわりに

いかがだったでしょうか?

読書を通して、自分自身の青春とは違う世界を楽しんでみるのも、また一興かもしれません。

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