【時を動かそう】日帰り文豪缶詰プランで〆切を詰められながら原稿を進めた話

はじめに

創作界隈の皆様、どうもこんにちは藍沢です。

突然ですが「己の中でいつかはやりたいと思っているが手を出せずにいる企画」はありませんか?

時間がない、日々他にやることがある、などと自身に甘い言葉をかけ続け、過ぎ去りゆく時を無為に過ごしているあなた!(私だ) 今回はそんなあなたに向けた「周囲の大人を巻き込み、止まった時を動かす」ためのライフハックになります。

※この記事では「やるべきこと=原稿」「創作者=先生」と表記させていただきます。

「どんな底辺でも頑張れるんだ!」という証左に、まずは私がどれだけ底辺であるのか、どれだけ先延ばし癖があるのかをご説明いたします。

「そんな御託は飛ばして文豪缶詰プランのことから知りたい!」という方はこちらから。

本題に入る前に

この記事のメソッドが向いているのは、「誰かに応援してもらえると頑張れる」、「他人からの視線が気になる」タイプの先生です。

プライドや申し訳なさといった感情をうまく自分のエネルギーに変換できると、更に進捗が増すこと間違いありません!

きっかけ

ーーあれはそう、およそ8年前。

私、藍沢にはとある夢がありました。

LINEスタンプを自分の書いた小説のキャラクターで描いてみたい

そのような欲望を持った私は、落書きノートいっぱいに下描きを描き、リリースされるその日を楽しみにコツコツとネタを書き貯めていました。

しかし、儚くもその夢は忙しない日常の中に埋もれることとなりました。学業! 就職! 転職! 何度か正気に返ってスタンプ案を作ることもあったのですが、結局走り切る元気がなく、何度も挫折した苦い思い出があります。

そして2022年4月。

幸いにもお仕事の関係でLINEスタンプを作る機会に恵まれ、「自分でLINEスタンプを作る作ると言いながら、ついに人のスタンプを作ってしまった」とTwitterに呟いてしまいます。

意気消沈ですね。そんな藍沢に救いの神が現れます。

後輩です。後輩は落ち込む藍沢に次のような言葉をかけました。

「自作のスタンプができたら買いますよ!」
「今回は声に出したので完成するかもです!」
「完成をお待ちしてます!」

聞いてください。この健気な応援。

これには藍沢は涙です。

あんまりにも感涙したのでしばらくTwitterのホームに目標を書いてピン留めをするぐらいには大事にしています。

Twitterのホームを見るたびにLINEスタンプを作るという目標を見て、心を入れ替えたものです。


そして、あっという間に半年ほどが過ぎ去り、冬になりました。

LINEスタンプはできておりません。

いや、なんでやねん。と思われる方も多いかとは思います。しかし、社会人の一年は早く、計画を立てて強い意志を持たなければ成せないことも多いのです。

しかし、このままでは後輩へのメンツが保てません。そこで藍沢はとある試みの中でLINEスタンプに挑戦することにしたのです。

それこそがーー文豪缶詰プラン。今回のテーマとなるわけです。

文豪缶詰プランとは?

文豪缶詰プランとは、鳳明出版社さん(※1)が主催する「自身が文豪となって旅館にカンヅメにされながら出版社の方々に執筆を応援してもらう」体験型滞在プランです。このプランは昭和94年(2019年)に初開催されてから不定期に開催されているそうで、コロナ禍にもめげず、昭和98年(2023年)現在まで元気に運営していらっしゃいます。

鳳明出版社とは?
「はばたく未来、おとすな原稿」を社訓に掲げているブラックな出版社。平成も令和もなく、昭和時代が続いており、作家の先生を旅館にカンヅメにして原稿を催促することで有名。尚、編集者の皆様の格好も昭和を醸し出しています。

※1:鳳明出版社さんは「大人のごっこ遊びを本気で考えている会社」こと株式会社八十介さんが運営している架空の出版社さんです。

公式Webサイトはこちら
https://www.yasosuke.co.jp/homeip

鳳明出版社さんの今までの活動の軌跡はこちら
https://note.com/yasosuke80/n/n776924be74a1

文豪缶詰プランでは、具体的に以下のような体験ができます。

  1. 趣のある旅館に閉じ込められることで、遊びの誘惑を断つ
  2. 旅館専属の編集者チームに事前に申請した進捗を定期的に聞かれる
  3. 文豪先生になった気分を味わえる

以下、公式WEBサイトのイメージ画像です。

創作を志す方なら一度は夢見たことがあるのではないですか?

作家先生として編集者さんに原稿を催促されながら執筆したい
チヤホヤされつつ、原稿を期待されたい
進捗を誰かに心待ちにして欲しい

……その夢、叶えてもらえます!

そう、ここまでお読みいただいた先生ならおわかりかもしれません。
これは大人の夢を叶える究極の追い込み合宿(ヨイショ有り)なのです!!

文豪缶詰プランは日帰りプランと宿泊プランの2つがあります。今回は日程の都合から日帰りで参加させていただくことにしました。ご友人の先生方2人と私の3人で一緒に、いざ申し込みです!

(なお、オプション内容や価格などは常に変動しているとのこと。事前にしっかり目を通してから申し込みましょう)

己を追い込む事前ヒアリング

文豪缶詰プランに申し込むと、事前に「何をする予定なのか(目標)」、「どのように接してほしいか(編集者との距離感)」についてのヒアリングがGoogleフォームやメールを介して行われます。

自分が抱えている問題を他者と共有することは非常に有用です。自分の頭だけで考えているTo Do リストに明確な〆切がない場合、いつまでもズルズルと先延ばしにしてしまうこと、ありませんか? 私は大いにあります。

まぁ? 藍沢はこの時だけは文豪先生なので?」(※偉ぶった感じでお読みください)

流石に8年寝かせているというのはヘビーなので軽微な嘘をつきました。(すみませんでした)

しかし、今回の藍沢は必ず原稿(LINEスタンプ)を世に出すぞという強い意志を持っているので、目標は高く設定しました。


確認のメールでは早速圧をかけられました。

初参加メールでこの圧!!! 相当のやり手です。この文面で何人もの先生を追い詰めてきたに違いありません(※後で公式WEBサイトをみたら250人は缶詰にしてきたそうです)。期待と好感が高まります。もっと追い詰めてほしいですね。

尚、追い詰められ度は事前ヒアリングのときに選べますので、優しさ重視の方やヒリつく関係をお求めの先生は事前にご相談されてみてください。

(なんで上から2つともが追い詰めて欲しいなんだろう)

ちなみに「途中まで下書きを書いておきます」という優等生のような申告をしたにも関わらず、藍沢は一枚も描きませんでした。

す、すみませんでした。

オプションについて

この事前ヒアリングの際に重要なものがあります。

オプションです。進捗コールを始め、編集者との思い出写真撮影など、当日の密度をあげる素敵なオプションを選ぶことができます。藍沢は食に飢えているので差し入れや夕食を含む全てのオプションをお願いしました。

そして迎えた当日!

見てください、この旅館!

昭和のかほり!

玄関では編集者チームや旅館の方々にお出迎えいただきました。

この旅館で13時から20時までの7時間! みっちり缶詰されてしまいます!

↑この写真は鳳明館公式サイト様よりお借りしました

↑手厚い歓迎を受けています。

レトロな雰囲気にスマホが手放せません。

写真はありませんが、小学校以来の共同流し場や、お手洗いのレトロスリッパなどもあります。

↑どうして絵になる部分を撮影していないんだ藍沢 紗智子。

今回、藍沢のチームは現役小説家の先生と現役漫画家の先生が参加することとなっていました。

藍沢、特に実績も肩書きもない一般人なので、大先生方の威光にたじたじしています。同行者の方々に目標を共有したところ、

下書きといわず、少数でも完成品を作りなさい

というありがたいアドバイスをいただいたので、ひとまずLINEスタンプ5個の完成品を用意することを目標にさせていただきました。

尚、今回の文豪缶詰プランでは、このように当日に目標を変更しても部屋にチェックインした時点で改めて目標を確認してくださるので安心でした。

編集者の山田さんがチームメンバーの目標を順次確認していく中、藍沢だけが事前進捗0でした。

すごい度胸ですね。胆力だけは大作家のようです。プランが始まる前から大文豪へのなりきりに、我ながら惚れ惚れします。

「3人の中で、あなたが一番心配です」

山田さんからは上のようなお褒めのお言葉を賜わりました。
※皆様は編集者チームの方々の手を煩わせないようにしてくださいね!

逆に、現役小説家の先生と現役漫画家の先生は半分程度終わらせてきていたので、実際にお仕事をされる方は予めある程度倒して消化戦に持ち込む方が編集者チームからの内申点が上がります。(※尚編集者チームからの内申点が上がっても良いことはありません)推薦入試だったら藍沢は負けていました。

また、各オプションへの参加時間などの確認もここで行われました。

もくもく? わいわい?

そして満を持して執筆タイムがやって参りました。

テレビはお部屋にありません。だって先生……テレビを見る時間あります?」と煽りの文言が事前にメールされていますが、遊べるものは本当に何もありません。己へと課した作業にひたすら向き合いましょう。

気を抜くとついついスマホでゲームをしてしまう先生は、必要であればスマホごと預かっていただくことも可能です。ご安心を。

我々のチームはほとんど喋ることもなく、黙々と作業を進めました。ガチです。ガチモノの漫画家と小説家の先生方に囲まれているので、藍沢も凄い圧を感じます。もうこの人達は編集者の方々の圧とかいらなかったんじゃないかな。

旅館によくある低めの台と座椅子に座って、お茶を飲みながら原稿を進めます。

藍沢達はパソコン勢でしたので、旅館から電源延長コードをお借りしました。お部屋のコンセントの位置•宿泊する人数によっては電源の取り合いになりますので、あらかじめ電源延長コードやたこ足電源タップを持参しておいた方が良いでしょう。

音楽はイヤホンを使えば聴けるので、音楽がないと作業が出来ない先生も安心です。
(※ただし、音がうるさくて他の先生方の集中を乱す場合は編集者が乗り込んでくるようです)

窓から逃げ出さないか監視!&写真撮影&差し入れ

オプションを依頼したので、指定時間にイベントを実行していただきました。

これは本気のアドバイスなのですが、オプションは頼んで損はありません。缶詰中は「原稿をやる」か「お手洗いに行く」以外は本当に何もやることがありません。

集中力が続かないという先生のために、編集者チームの方々は笑いあり、驚きありのオプションで適度に休憩を入れてくださいます。いやー、原稿のために身体を張ってくださいますね!!(何様)

尚、「カンヅメ思い出写真」オプションを頼まれた方! カメラ慣れしていない方は事前にどんな追い詰められ写真を撮られたいか考えておくと良いでしょう。

途中、15時に差し入れのお菓子(※有料オプションです)、16時に差し入れの夕飯お弁当(※有料オプションです)をもぐもぐしながら、ひたすらに原稿を進めます。この差し入れの時間は自由に設定が可能だそうです。

↑これは差し入れのお弁当です。

進捗のチェックが入ります

ーーチェックインから3時間後。

編集者チームの方から進捗のチェックが入りました。

調子はどうか、目標の何割ほど進んでいるかなどをヒアリングされます。

ここまで黙々と「LINEスタンプ」を描いていた藍沢ですが、このターンには思わずときめきを覚えてしまいました。

だって、考えてもみてください。

やろうやろうと思って手がつけられていない企画というものは、大体、特に誰からも認知されず〆切も設定されていないものが大半です。

それなのに進捗を聞かれるということは、誰かが自分の作品を待ってくれているということなのです!

(私のような弱小作家の新作を期待されているなんてーーキュン)

と、胸を打たれること間違いなしです!

ぜひ、自らの進捗を自信を持って告げてみてください。

間違っても「0%です!」と叫ぶことのないように、しっかり作業をしましょうね。

(尚、この時点で今回の最終目標を達成していた藍沢は「一番心配だったのに!」というお言葉をいただきました。内心ドヤ顔です)

何かが起こる……?

開催回によって異なるようですが、缶詰プランには「毎回何か」が起こるようです。先生方はこの「何か」に参加しても良いし、スルーしても良いという選択の自由が与えられます。

今回の「何か」は以下の二つでした。

茶番劇
→本妻と愛人と編集社で作家先生の取り合い!(カオス)

とある文学賞
→事前に提出したタイトルだけの作品で文学賞を狙う催し!

どちらも劇団顔負けの編集者チームの名演技が見られる素敵なイベントでした!
とくに、とある文学賞では編集者チームの面子をかけたアドリブ対決は、見ているこちらが冷や汗をかいてしまうほどの緊張感に包まれました。

尚、藍沢。まさかのとある文学賞大賞をいただきまして……。


とある文学賞の全容はこちら

Googleフォームからの感想(架空)もありがとうございました! お陰様で一時的にマジモノの先生になれた気がしました。げへへ。

【とある文学賞】受賞発表


ラストスパート!

茶番が終わると、本格的に空も暗くなり、残された時間はあと1時間程度となりました。

ここで本日の悔いを残さぬよう、しっかりと原稿を進めていきます。

ラストスパートをかける同行の先生方! 私も真面目にLINEスタンプの量産を続けます。

決して他の部屋で頑張っているであろう先生のTwitterを覗き見とかしてないです。本当です。

目標を達成したからといって、決して余裕アピールをしてTwitterで他の先生方にプレッシャーをかけてはいけませんよ。(戒め)

尚、この緊張感に耐えられず、部屋の外に出ると楽しいサプライズがあったりしますが、それはぜひご自身の目でお確かめください。

また、チェックアウト時間になるとお見送りもしていただけました!

顔出しパネルでの撮影や、お土産の購入など、素敵な缶詰の思い出が出来ますので、最後まで先生になりきった気持ちでご堪能ください。


まとめ

若かりし頃に行った「高校の課外合宿(面白い先生付き)」のような緊張感で、今まで手が付けられなかった原稿に手をつけることができました!

大人になると、他人に期待されることや応援されることが少なくなっていくので、たった一日だけでも誰かに作品を気にかけて貰えるのは嬉しいものです。

限られた時間の中で成果を出す練習にもなりますので、PDCAサイクルに慣れていない方は始めの一歩にされてみてください。

最後に、同行してくださった先生2人、そして鳳明出版社の方々に感謝を! ありがとうございました!


おまけ

今回追い詰められた藍沢 紗智子の「私を労え♡LINEスタンプ」の発売開始予定日は5月5日です。前倒しリリースする可能性もあります。

正直「お陰様でLINEスタンプリリースしました!」のご報告と同時に記事掲載の許諾を取りに行きたかったのですが、人生とはそのようなものです(圧)!!

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