小説を書くのに初期投資はほとんどいらない。しかし、こだわろうと思えば道具にはいくらでもこだわることができる。
そんな中で、物書きが最も酷使する道具はキーボードだろう。ずっと文字を打ち続けるのだから、ここにどれだけ投資をするかで生産性が変わる。
外付けのキーボードは安いものだと1000円程からあるが、中には数万円する高級キーボードもある。今回紹介するのは、そんな高級キーボードの中でも特に有名なHHKBだ。
3万円の高級キーボード
僕が使っているのは、HHKBの中でも最上級のモデルであるType-s。HHKBはキーストロークが深いため、タイプする度に大きな音が鳴ってしまうのだが、このType-sは他のものに比べればそれほど音が気にならない。
さて、このキーボードのお値段はなんと約3万円。大人気のデジタルメモ「ポメラ DM100」が買えてしまう値段だ。ちなみに、あと5000円積めば現在のところ最新機種である「ポメラ DM200」も買えてしまう。
ポメラは、それ一台だけでテキストを入力して保存できる優れもの。しかし、HHKBは当然のことながらPCに繋がないとその威力を発揮することができない。そんなものに3万円も使うなんて…。はっきり言って馬鹿げている。しかし、使い始めると「買って良かった!」と思うのも事実である。
独特の心地良い打鍵感
HHKBの魅力として特筆しておきたいのがその打鍵感だ。キーの仕様は静電容量無接点。ストロークの深さは3.8mm。押すたびにスコッスコッと音が鳴る独特の感触が心地良い。
いつもはノートパソコンなどの浅いキーボードを使っている人は、最初にHHKBを使うときに戸惑うかもしれない。僕は仕事でMacbook Proを使っていて、あのペラペラのキーボードで打ってそれに慣れている状態で自宅のHHKBで入力をすると今でも少し戸惑ってしまう。ミスタイプも増えてしまうかもしれない。しかし、10分もタイプをしていれば、このHHKBの打ちやすさに気づくはずだ。
実は、HHKBはタイプする面がやや曲線を描いており、うまく指にフィットする構造になっている。それによって、吸い付くようなタイプの感覚を楽しむことができる。
非常にコンパクト
HHKBは、他の高級キーボードに比べると非常にコンパクトだ。それはまず、テンキーがついていないことが大きいだろう。しかし、僕たちは事務職ではないので、これは別に大きな欠点にはならないはずだ。むしろ、机を広く使うことができるというメリットもある。
さらに、HHKBは独特のキーボード構造をしており、使用頻度の低いキーはファンクション同時押しで機能するようになっている。
また、英語キーボードには独立した矢印キーがないので注意が必要かもしれない。しかし、英語キーボードはエンジニアには効率が良いかもしれないが、物書きには大したメリットがないように思う。日本語キーボードに慣れている人であれば、無難に矢印キーもついている日本語キーボードを買うのが良いだろう。
さて、このHHKB、非常にコンパクトなのでついつい外にも持って行きたくなる。主にMacbookの上に置いて使う(これを尊師スタイルと呼ぶ)のだが、傍から見るとかなり変態度が高い。しかし、そうまでして使いたくなってしまうのがHHKBなのだ。
執筆に対する意識が変わる
HHKBは見た目がそれほど派手ではないため、他の人に「これ、3万円するんだー」と言うとかわいそうなものを見る目で見られる。しかし、実際に使ってみればその実力に納得するはずだ。
そして、しっかりとした道具を使うと書く側の意識が変わる。たとえば、手書きをするときに100均で買ったボールペンを使うよりも、ちょっと良い万年筆を使った時の方が背筋が伸びて執筆できると他のキーボードと大きな違いを感じられない人もいるかもしれない。だから、購入する際はぜひ実機を触ってみてから買うことをおすすめする。
ただ、僕はこれまで色々なキーボードを使ってきたけど、HHKBで書くときが一番はかどるということは確かだ。
これを買えば、恐らくもう他のキーボードを買う必要はない。そう考えれば、3万円というのも大して高い金額ではないのかもしれない。
執筆の生産性を高めたいと思っている方は、ぜひ使ってみてはいかがだろうか。