うわごとのように好きって言ったとき歪んだ目尻に気がついていた。
下手くそな嘘はついたらだめだってあんなに教えてあげたのになあ。
まあどうせ、ちゃんと綺麗に笑えないわたしもだめってことなんでしょう。
目的地にたどり着かないまま終わる物語でも許してほしい。
ゆるやかで凪いだことなどないような静かな水面を撫でたあのとき、
どこまでも広がる波紋の行く末を信じたかった。
それだけだった。
魂の温度が同じだったこと、なくした後で思い知ってね。
分け合った光の反射を追いかけたあの日の声は忘れていいよ。
泣かないで。誰も悪くはないんだよ。
君もわたしも、焦げた卵も。
うつくしい空の青さの裏側にいつも確かな消滅がある。
もう君の無邪気な嘘を愛せない。
今はそのことだけが寂しい。