偽物のように広がる青空が今でもたまにこわいんでしょう。
上書きの記憶ばかりが鮮明になっていくのを拒めないから、
僕たちは途切れ途切れの優しさが脆いと知っててすがってしまう。
できすぎた入道雲を追いかけて田んぼまみれの道を走った。
急カーブ曲がったところでぶつかったガードレールの凹みを撫でて、
スカートが長くてダサくてやだねって笑った君の声が遠のく。
なにひとつ手に入らない毎日が特別だって気づかなかった。
痛みとか苦しみだとか、そんなもの知らないままでいたかったのに。
本当は悲しかったよ。
泣き方はとっくの昔に忘れちゃったよ。
今はもうまばたきすらも無意識にできないんだよ。
おかしいでしょう。
自転車の荷台の銀がうつくしく反射するたび
季節は巡る。
ごまかして笑ってばかりいる僕を
君が見てたらなんて言うかな。