1,000字書いただけで放り出した小説の続きを「AIのべりすと」に書いてもらった

小説を書くのが苦手です。いつも書き出しはうまく書けるのですが、それ以降が続きません。だいたい1,000字くらい書き終わったところで力尽きてしまいます。展開を考えるのがとても面倒なんですね。

最新の原稿をいつか書き足したいな……と思ってたびたび見返すのですが、数カ月の間進捗なし。このままだとまたお蔵入りになってしまう!

そんな僕の元に救世主が現れました。小説の続きを勝手に書いてくれると話題の「AIのべりすと」です。

「AIのべりすと」とは?

AIのべりすとは、最初のテキストを入力すると続きの文章を生成してくれる小説AIです。AIのべりすとのWebサイトでは次のように説明されています。

EleutherAIによる、TPU(テンソル・プロセシング・ユニット)向けオープンソースの自然言語処理AIフレームワークであるMesh Transformer JAXをベースとして、約500GBの独自コーパスで68.7億パラメータのAIを小説生成向けにフルスクラッチで訓練したものです(OpenAI GPT-3 Curieに匹敵するサイズとなっています。約5368億文字分、文庫本174万冊分の知識を68.7億パラメーターに圧縮したAIとも表現できます)。

何やら難しそうですが、文庫本174万冊の知識を搭載した凄いやつということは分かります。もっと凄さを知りたい場合は、以下の記事で詳しくインタビューされているのでおすすめです。

小説を書くAIをひとりで作った日本人がいるらしい | オモコロ

とにもかくにも、まずはテキストを入れてみてください。

すると、勝手にその続きを書いてくれています。

このAIは精度がめちゃくちゃ高くて、ちゃんと文脈を読み取って新しい文章を生成してくれます。あまりにちゃんとしているので、アルバイトを雇って人力で文章を作っているんじゃないかな……と未だに少し疑っています。

面白いのでもっと遊びたい! そう思っていたときに脳裏をよぎったのが、書きかけのまま数ヶ月も放置している小説のことでした。

書きかけの小説の続きを書いてもらう

書きかけの小説の冒頭は以下の通り。1,000字程度なので、全文掲載しておきますね。ドキュメントのタイトルは「ソワレ」となっていました。

 2日目のソワレは無事に閉幕した。もっとも、収容人数30人の小さな箱にお客さんが2人しか入らなかった夜公演を「ソワレ」と大仰な名前で呼ぶべきなのかは分からないけれど。
客出しを終えて30分の休憩の後、永井主導の小返しが始まった。
「ウモンベンガンスズガナド?タ?」
「はいはい、早く行くよ」
「スギ―ナ―! ハイハヨ、メルサポイトティッテウベンガヨ」
「うん、そういうことの方が多いけど、でも、そうじゃないことだってあるよね」
澤が演じるヨンデウス星人の手を、仁科さん演じる風俗嬢が引っ張っていく。これ何のシーンだっけ。二人で星を見にいくとかそういうところだった気がするけれど、あんまりよく覚えていない。仁科さんの長台詞を聞いているうちに退屈になってきて、僕はスマホで『スーパーフィスト・パンチマン」を読み始めた。20ページほど読み進めたところで永井がこちらをちらりと見た気がしたので、たまに舞台へ視線を送りつつ、スマホのメモ帳で小説を書くことにする。こうしていれば恐らく、今日来てくれたお客さんにお礼を送りながら小返しを気にしているように見えるだろう。
『百々瀬桃子の限りない嘘と純情』は、永井の主催する劇団「クララと犬」の第三回公演で、主に澤と仁科さんの二人芝居からなる。僕はヨンデウス星人を追いかける“大いなる意思”みたいな役と永井に説明されており、たまに登場しては台本上で10行前後の長台詞を計7回しゃべれば良い。しかし僕は台詞を6割くらいしか覚えられなくて、それについて本番前に永井に何度か怒られた。怒られた、というのは正確な表現ではなく、それこそ最初は「ちゃんと覚えてきて!」とやや釣り上がった目で小言を言われたものの、稽古も大詰めになると永井もそんなこと気にしていられなくなったらしく、僕のことを雨が上がった後で干からびたミミズを見るような目で見るだけに留まっていた。そのプレッシャーもあってか、僕はなんとか適当に長台詞をしゃべり切るところまでは持っていけた。毎回しゃべる内容が違っているけれど、2回以上観に来る人なんていないのだから問題ない。ちなみに、永井と仁科さんは付き合っている。
「満天の星空を抱いて、夜空は今日も呼吸を続けます。さてさて、問題です。私はあとどれくらい眠れば、あのお星様たちに仲間入りすることができるでしょうか」
「ポンマ?」
「いいから、考えて」
「パリハ〜、アラマテスマクライララッセ!」
澤のしゃべる言語はすべて台本上に書かれていて、澤は一字一句違わずにそれを覚え、発話している。何か規則があるのかとヨンデウス星人の台詞だけを集めて検討してみたことがあるけれど、一度だって同じ単語は出てこないし、何かしらの規則性があるわけではなさそうだった。永井もきっと適当に書いたんだろう。澤は、僕の100倍くらい真面目に演劇をやっている。
後輩の女の子から連絡が来た。
「明日は何時入りするといいいですか?」
そういえば、当日受付をお願いしていたのを忘れていた。
「13時半開場だから、12時くらいに来てもらえると!」
すると、数十秒後に「わかりました!」と返ってきた。
澤と仁科さんの小返しは1時間ほど続いて、その後に僕が出てくるシーンもまとめてさらうことになった。

演劇の夜公演が終わり、次の日に向けて返し稽古をしているシーンです。主人公が返しを眺めているところまでは楽しく書けたのですが、その後を書くのが面倒になって放り出してしまいました。

さて、この文章をAIのべりすとに渡して「続きの文を書く」をクリックしてみると……。

続きを書いてくれました!!!

「夜の街」という表現はどこにも使っていなかったのですが、「星空」などから場面が夜であることを類推しているのでしょうか。また、主人公の台詞覚えが悪かったり、永井に怒られがちであるところまでちゃんと描写されています。凄い。

設定項目としては、「デフォルト」「セリフ」「ナラティブ」を選んだり

プリセットの文章スタイルを選んだり

詳細オプションでめちゃめちゃにいじったり

なんてこともできますが、最初のうちはデフォルトでやりつつ、徐々にいじってみるのがおすすめです。

添削をしながら書き進める

AIのべりすとも完璧ではないので、与えたテキストと食い違う記述があったり、思った展開にならなかったりすることもあります。

杉野って誰だ。

小返しが終わっちゃったし、終演後の挨拶はその前にやって〜!

しかし、何度か繰り返していると「そういう方向性に進めるのありだな〜!」と思えるような表現が出てきます。続きとして何を書けば良いか分からなくなっていた僕にとっては、これは非常にありがたいこと。

テキストを生成して、気に入った展開が出てきたら保存し、少しずつ添削も加えて書き足していく……ということを数回繰り返した結果、このような続きを書くことができました。

 澤と仁科さんの小返しは1時間ほど続いて、その後に僕が出てくるシーンもまとめてさらうことになった。このシーンは、ヨンデウス星人が風俗嬢を連れて夜の街を歩いている途中、すれ違った僕が彼女の顔に見覚えがあることに気づいてしまうというものだ。相手きっかけの台詞ではないため覚えるのが難しく、永井に何度も怒られていた部分だ。僕のシーンすべてを合計で4回ほど通し、終わるころにはもう日付が変わっていた。最後の方はほとんど記憶がない。

劇場を出る。今日くらいは贅沢をしようと言いながら、みんなでタクシーに乗り込んだ。僕は後部座席の端っこに座って、窓の外を流れる光を眺めていた。家に着くなりベッドに飛び込んで眠りこけてしまいたかったけれど、そういうわけにもいかない。客演の身にもかかわらず台詞を覚えられていないのは、さすがにちょっと気が引ける。
僕は目を閉じて、まぶたの裏に今日の舞台を思い浮かべた。永井の脚本を、自分のセリフを、そして、他のキャストたちの演技を。まず、永井の戯曲。彼は本当にすごい。永井の書く脚本には、いつもどこか、彼でなければ書けない世界があった。それは例えば、永井が演劇を始めたころからずっと大切にしてきた、彼が人生をかけて追い求めているテーマそのものであったり、あるいは、彼の持つ才能や感性そのものが放つ輝きであったりした。
次に、僕の出番。僕は、確かにうまくはない。でも、少なくとも、永井より下手ではない。僕は、それなりに、舞台の上で存在感を出すことができる。だからこそ客演として呼ばれているのだ。もっとも、台詞を覚えられないので役者に向いているとは言えないけれど。
最後に、澤の演技。彼女は、間違いなく天才だった。いや、正確には、今でもまだ進化の途中にあると言った方がいいだろう。彼女ならどんな役を演じても立派にこなしてしまうように思えるし、実際、彼女が演じるとすべてが素晴らしいものに見えてくる。ただ、もちろんそこには限界があって、どこまで行っても彼女にはできない役というものが存在する。しかし、それを補って余りあるほどの圧倒的なポテンシャルを持っているのもまた事実なのだ。だから、彼女はこれからもどんどん成長するはずだ。
そこまで考えたところで、急に疲れが出てきた。今日はここまでにしておこう。
***
「ねえ、もしよかったらなんだけど」
公演後の打ち上げを終えた後、僕は永井

書き換えた部分も大いにありますが、小返しのシーンを終えて劇場を出るところも、その後タクシーに乗り込むのも、長い回想に入るのも、「***」を入れて次のシーンへの転換を求めてきたのも、すべてAIのべりすとの手柄です。こんなものが無料で使えて良いんですか?

AIのべりすとにはプレミアム会員も用意されており、登録すればさらに使いやすくなるのですが、フリー会員でも十分な機能を備えています。テキストは約3,000〜4,000文字まで同時に認識してくれ、一度に出力できる文字数は約210文字。

設定を与えればあとは最後までAIが書いてくれる……とまではいきませんが、今後の展開に悩んでいる場合に使ってみると突破口が見えてきます。

おわりに

AIのべりすとのこと、最初は正直舐めてました。マルコフ連鎖を使った文章生成AIなどはこれまでも見てきていたのですが、小説に使うにはまだまだだな〜と思っていたんです。

しかしAIのべりすとは、僕の予想を遥かに超えてきました。これは本当にヤバいものが出てきてしまった。まだ使いこなせているとは言えませんが、設定を使いこなせれば半自動で小説を書くことも夢ではないかもしれません。

AIだけで小説を書く未来はまだ遠いかもしれませんが、AIを執筆の道具として使える時代はもう到来しています。みなさんも、ぜひお試しを

AIのべりすと

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