オンライン歌会ことはじめ / 概論編

最近になって短歌をはじめたばかりのあなた。そろそろ歌会に行ってみたくてそわそわしているのではないでしょうか。

でも、はじめての歌会に出るというのがどんな感じなのか、なかなか想像しづらいかもしれません。

筆者がはじめて短歌を詠んだのは5年ほど前ですが、その時「歌会デビュー」に失敗してしまいました。歌会では選歌と呼ばれる投票が行われるのですが、はじめての歌会で一票も入らなかったことにちょっと落ち込んでしまったのです。その結果、しばらくほぼ読み専になってしまっていました……。

それが今年になって、コロナ禍によってオンライン歌会が普及したことをきっかけに、再び短歌に挑戦しようと一念発起したのです。それから、インターネットで活動されている歌人のみなさまのおかげで、楽しい歌会をいくつも経験することができ、いまではすっかり短歌がマイブームです。

この記事は、一度は「歌会デビュー」に失敗した筆者が、これからはじめる皆さんに気持ちよく「歌会デビュー」してもらえるようにと、歌会を楽しむための手順やポイントを概説したものです。

今回は、実際に筆者が2021年6月22日(火)に主催したオンライン歌会を例として取り上げています。

ステップ0 歌会とは?

歌会(うたかい/かかい)とは、参加者がそれぞれ自作の短歌を持ち寄り、それについて語り合う会のことです。その際、互いに選歌と呼ばれる投票をすることも多いです。

歌会では、自分の短歌について意見がもらえることで詠む力が高まりますし、他のひとの短歌について意見を話し合うことで読む力も向上します。さらに、そのなかで短歌の仲間というのができていくこともまた醍醐味といえるでしょう。

ステップ1 歌会の準備

まず歌会を探すところからスタートです。上記画像のようにTwitterやTwiPlaなどで募集しているので、検索して申し込むとよいでしょう(筆者も毎月オンライン歌会を主催していく予定なので、Twitterで参加申し込みして頂けると大歓迎します)。他には結社や大学短歌会の歌会もありますが、メンバー限定になっていることが多いので、まずはTwitterやTwiPlaなどで募集しているものに参加するのがよいかもしれません。もしはじめて歌会に参加する場合は、そのように伝えて参加申し込みをするとスムーズです。

次に、詠草を作って〆切までに提出します。歌会に持ち寄る自作の短歌のことを詠草といいます(もちろん何も知らないところからいきなり57577で短歌を作ってもよいのですが、一冊くらいは短歌の入門書の類を読んでからチャレンジすることをおすすめします)。

基本的に求められる詠草には次の3つのパターンがあります。

  • 「題詠」:題として出された単語を含んだ短歌を作ります(例:題「海」)
  • 「テーマ詠」:テーマとして出された単語自体を含む必要はありませんが、テーマに沿った短歌を作ります(例:テーマ「こわい」)
  • 「自由詠」:どんな短歌でもOKです

その他にも、「吟行」といって特定の場所に参加者全員で出かけて即興的に短歌を作り、そのあと歌会をするという形態もあります。

今回は「自由詠」として、短歌を持ち寄ってもらいました。詠草は、主催に直接送付するパターンと、主催も作者が分からないようにグーグルフォームなどを活用するパターン(上記画像参照)などがありますが、今回は後者にしました。

歌会の当日になると、詠草一覧(下記画像参照)が事前に送られてくることが多いです。詠草一覧ではそれぞれの短歌の作者は誰かわからないようになっています。詠草一覧は、歌会の最中に書き込みができるように、あらかじめ印刷しておくことがおすすめです。歌会中に読みこみの時間を取らないこともあるので、ざっと目を通しておくのもよいでしょう。

ステップ2 歌会スタート

いよいよ歌会です。当日のタイムスケジュールは大体上図のようになることが多いです。

ステップ3 詠草の読み込み

詠草一覧をしっかり読み込みます。

まずは、どの歌に選を入れるのか決めます。選とは投票のことです。自分の短歌以外の中から、何首に何点ずつ入れられるのかは歌会によって異なります(選そのものをしない歌会もあります)が、今回は特選1首に2点、並選1首に1点入れるという形にしました。

選を決める基準は、自分がその短歌をよいと思ったかどうかです。こういう歌を選ばなくてはならないというルールはありません。もし迷ったら、歌会で自分が語りたい短歌を選ぶとよいでしょう(選を入れるとその短歌について語ることを求められます)。

次に、評を考えます。評とは歌に対する感想や批評のことです。特に選を入れた歌の評を重点的に考えておきます。

評を話すときは、なぜその短歌をよい/よくないと思ったかという理由を伝えると分かりやすいです。意味内容、語順、韻律(歌の音やリズム)などのポイントについて、歌のどの部分にをどう感じたかを説明できるとなおよいですが、もちろん最初から上手に話せる人はいないので、自由に話せばOKです。

ステップ4 自己紹介と選歌

順番に自己紹介と選をします。自己紹介はもしあれば短歌の結社や同人の所属と少しコメントをするのが普通ですが、歌会がはじめての場合は、そのように伝えるとよいでしょう。選は番号で伝えます。

重要なのは、自分の歌に選が入らなくても、落ち込まないことです。もし歌会に出るのがはじめてなら、「ひとつでも選が入ったらすごい」というくらいの期待を持っているのがよいでしょう。また、歌会で選が入る歌が良い歌で、選が入らない歌が悪い歌、とは限らないともいわれています。筆者のように勝手に落ち込んで短歌から遠ざかってしまうと、とてももったいないことです。

ステップ5 選評

順番に短歌を取り上げて、評を話し合っていきます。順番は選が入った数の順、または歌番号の順になることが多いです。

司会は対象の短歌に選を入れた人のなかから、最初の評をする人を指名をします。司会に指名されたら、まずその短歌を声に出して読み上げ(司会が読み上げた場合は不要)、そのあとで評を話します。2人目以降の指名者は短歌を読み上げずに、評を話してください。

選を入れた人が評を話し終わった後は自由なディスカッションになることが多いです。歌や評への意見だけでなく、何か質問や不明点があれば積極的に発言するとよいでしょう。

さて、やがて自分の歌の順番が回ってきます。その評が述べられているときは、黙って聞いているだけでもいいですが、作者ではないふりをして発言することもできます。

ステップ6 解題

詠草一覧に記載されている順番に短歌の作者を発表します。司会が番号を読み上げたら、自分で名乗りましょう。ここで司会から、自作の歌について作者にコメントを求める場合もあります。

ステップ7 二次会

歌会中にできなかった質問・疑問点を解消したり、ふだんはなかなか周囲の人とできない短歌の話をしたりします。もちろん全く無関係な雑談をすることもあります。参加・不参加は自由であることが多いです。

おわりに

ここまで歌会を楽しむための手順やポイントを概説しました。

たしかに歌を詠むことも読むことも難しいことではありますが、それ以上に楽しいことでもあります。もしこれからはじめての歌会に参加するなら、あまり難しく考えずに、全力で楽しむといいでしょう。

さあ、ぜひ今から歌会を探してみましょう!

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