執筆の手を止めないために
「ライン法」でプロットを作ろう!

こんにちは! 「思ってたより動くメロンパン」の阿佐翠です。

物書きのみなさん、これまでの執筆人生の中で、「プロット」という名の魔物に悩まされた経験はありませんか? あるいは今まさに、悩まされている最中だったりしませんか?

プロットには決まった形がありません。文体や言葉づかいが各人の自由であるのと同じく、プロットも人によってさまざま。それゆえに、自分なりのプロットの作り方を見つけ出すまでは、豊富な経験が必要になります。

かくいう僕も、長年アマチュア物書きをつづけてきたにもかかわらず、まともにプロットを作りだしたのはつい2年ほど前。

それまでは、

 

阿佐翠
プロットとかいらんわ~! ネタは頭の中にあるし~! その場のノリで書けばなんとかなるやろ~!

 

などと生意気を垂れていたのですが、プロットの重要性や意義を思い知ってからというもの、肝心の執筆もそこそこに、プロット作成法の開発に明け暮れる日々を過ごしています。

人によってまったく異なるプロット作成法。十人十色ならぬ十人十プロな世界で、いまだプロットの迷宮に迷いこんでいる方も多いはず。

そこで今回は、筆者流のプロット作成法『ライン法』を紹介させていただきます。迷える方々のプロット作成の参考にしていただければ!

『ライン法』に向いている人、向いていない人

『ライン法』はこんな人におすすめ!

・執筆の途中で手が止まってしまう
・行き当たりばったりで書く癖を直したい

 

一方で、

・プロット作成に時間をかけたくない
・作りこまれたプロットには手をつけづらい

という方には、やや不向きかもしれません。

『ライン法』ができるまで

執筆の途中で、いきなり筆が止まってしまうという経験はありませんか?
僕の場合、一度でも止まってしまうと急激にモチベーションが下がり、書き終えられないままの原稿を没フォルダにポイ、という経験を何百回かやってきました。

……すみません、ちょっと盛りました。しかし、それでも百何十回かはポイしています。

プロットを作らず、頭の中だけで話の流れを整理していたころは、どうして手が止まってしまうのかイマイチわからずにいました。

書いてる途中に作品に興味をなくしたとか、自分の作品をつまらないと思ってしまうとか、そういったことはほぼありません。書きたいという気持ちはあるものの、なぜか手が止まってしまう。そんな現象に幾度も悩まされる日々……。

しかし、プロットを作ってみるようになってから気がつきました。

僕の場合、プロット段階でちゃんと作りこむことができておらず、シーンとシーンのあいだにあたる『つなぎ』の部分で手が止まっていることがほとんどだったのです!

考えてみれば当たり前の話でした。「こういうシーンを書くぞ!」と思って考えたシーンは、「こういうシーンを書きたい!」という欲求からくるものがほとんど。筆が進むのは当然のことです。

一方で、『つなぎ』の部分は地味~なシーンが続きます。「書きたいから書く」というよりも、「書かなければいけないから書く」。するとなんだか嫌~な義務感が生まれてしまい、その結果、プロットの作りこみは薄くなり、モチベーションも保てなくなるのですね。

皆さんも経験ありませんか? プロットの中に「ここであいつ出しとけ」とか「なんか上手いことやっとけ」みたいな殴り書きが挟まってたりするやつ。僕はしょっちゅうあります。「がんばれ」とか。

 
 
 

なんだよ「がんばれ」って!!

 
 

未来の自分に面倒事を押しつけるんじゃない!!!!

 
 
 

ともあれ、この悩みをなんとかしなくては……と考えた結果、筆者は『ライン法』を編み出すに至りました。

まだまだ実験段階ではありますが、少なくとも以前よりは、はるかにリズムよく執筆を進められています。

『ライン法』とは何なのか?

僕が言うところの『ライン法』とはどんなプロット作成法なのか?
簡単にまとめますと、「作中のイベント(点)をすべてつなげて線にする」ことを重要視した方法です。

『つなぎ』の部分は多くの場合、執筆しながらノリで考え、適当に書いてしまいがちです。

しかしこの書き方はとても危険。言うなれば、落とし穴が大量に空いている道を、埋めもせずにずいずい進んでいくようなもの

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うん、書いてみて思ったんですけど、シチュエーションが奇妙すぎる。

ともあれ、どうすればそんな道を安全に進むことができるのか? と言えば、答えは簡単。歩く前に、落とし穴を埋めてしまえばいい。

つまり! 執筆するよりも前、プロットを作る段階で、『つなぎ』のところを考えつくしてしまおう! ということなのです!

 

例えば、次のような非常に簡潔なプロットがあるとします。

1、主人公が寝坊したことに気づく
2、学校に着く

プロットと呼ぶのもおこがましいようなものですが、たったこれだけの情報でも、とりあえずプロローグ部分を作ることは可能です。

ただこのプロット、主人公が起きて、次のシーンでいきなり時間が飛んで教室突入、としてしまうのは味気ないですよね。すると途中に何かを挟みたくなるわけですが、入れるシーンとしてはいろんな可能性が考えられます。例えば、

・母親と一言二言話し、食パンをくわえて登校する
・道の途中で、同じクラスの遅刻魔と出会う
・突如異世界に迷いこむ
・宇宙人にさらわれる
・宇宙船内にて人体改造をされそうになる
・改造の途中、実は宇宙を統べる帝王の血を引いていることが判明する
・宇宙人たちの計らいにより、次期帝王選挙の候補者のひとりに推薦されてしまう

などなど……考えられる可能性は無限大ですね。

その後の展開によってどんなシーンを入れるかは変わりますが、なんにしても、「どんなシーンを入れるか」を執筆中に考えていると、執筆のリズムは崩れやすくなります。そうならないために、プロット段階で詳しい展開を考えておくのです。

このことを念頭に置いて、先ほどのプロットを作り直してみましょう。

1、主人公が寝坊したことに気づく
2、学校へ急いでいると、宇宙人にさらわれる
3、宇宙船内にて人体改造をされそうになる
4、改造の途中、実は宇宙を統べる帝王の血を引いていることが判明する
5、宇宙人たちの計らいにより、次期帝王選挙の候補者のひとりに推薦されてしまう
6、なんやかんやあって、学校に着く

こうなりました。

 
 
 

待て。

 
 

「なんやかんや」ってなんだ。

 
 
 

先ほどのプロットよりも要素は増えましたが、それでもまだまだ危うい部分があるのがわかります。はい、誰がどう見ても「なんやかんや」のとこですね。隠せてないよこの落とし穴。もうちょいがんばれ。

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しかしながら、これはなにも「なんやかんや」のところだけに限りません。
1と2のあいだはどんなシーンでつなぐか、2ではどんな場所でどうやってさらわれるのか、4の内容はどういう経緯で判明するのか、それから……という風に、曖昧な点はまだまだ多数残っているのです。

ここで、『ライン法』の大きなポイント。

 
 
 

ほんの少しでも不十分なところがあれば、とにかく作りこんでしまうべし!

 
 
 

主人公が寝坊に気づく。それからどうする? まず服を着替えるのか、洗面所に行くのか、リビングに向かうのか。家族と会話するか。会話するなら、誰とどんな会話を交わすか……といった感じで、隅々のさらに隅々まで考えつくしておくのが、『ライン法』の重要なコツです。

さっきのプロットは6つの項目からできていましたが、この作業を何度も何度も繰り返していくと、項目数は10を超え、100を超え……長編ともなれば1000、いやもしかすると10000くらいの項目が出来上がることと思います。

最初に考えたいくつかの点を、新たな点によってつなげていく。その点のあいだにできた隙間も、さらに新たな点でつなげる。最終的には、大量の点がずらっとつながって、まるで一本の『線』のようになる――これこそが、このプロット作成法を『ライン法』と名づけた所以なのです。

『ライン法』の長所・短所

長所

『ライン法』は、話の流れを極限まで作りこんでしまうことによって、執筆のリズムを崩さないことを一番の目的としたプロット作成法です。

実のところ、この方法の長所はそれだけではありません。

『つなぎ』を細かく作りこむことによって、キャラクターの性格や設定などを描写する機会が増え、作中の人物たちの存在に厚みをつけることができます。また、ところどころにちょっとした伏線を散りばめておけば、作品に適度な緊張感を持たせることも可能です。

また、結局のところは「書きはじめる前にひたすら考えよう!」というだけの方法なので、特殊な作業などもなく、誰でもいつでも始めやすい。つまり、執筆初心者にもやさしいプロット作成法となっているのです。

短所

そんな『ライン法』ですが、難儀な部分もあります。なんといってもこの方法、とにかく時間がかかるのです

先ほどもちらっと書いたように、この方法ではプロットの項目数が非常に膨大になります。5項目くらいの内容でようやく1000字ほどの分量、なんてこともざらにあるほど。20000字書くだけで100項目ですから……いかに労力が必要になるか、おわかりいただけるかと思います。

筆者はアナログの紙に書く形でこの方法を実践していますが、大量に紙を消費する上、何度も見直し・書き直しをする必要が出てきてしまうので大変です。デジタルなら書き直す必要はないですが、それでも何度も同じプロットを洗練しなければならないので、大変なことに変わりはないでしょう。

ですから、「プロットで力尽きそう……」とか、「プロットを作りこむよりも執筆時間を増やしたい!」といった方々には、不向きな方法に違いありません。

また、これは僕が以前そうだったのですが、プロットが隅から隅まで固まってしまっていると、それだけでモチベーションを失くすという方もいらっしゃるのではと思います。

時間をかけて温めたアイデアよりも、その場その場でひらめいたアイデアの方が面白いってパターン、往々にしてありますよね。それを引き出すのが得意な方にとっては、この方法はむしろ執筆の邪魔にしかならないかもしれません。

まとめ

どんな方法でプロットを作るにしても、やはり一番重要なのは、「自分に合った方法で書くこと」だと思います。『ライン法』を試してみて、自分に合う方法だと思ったら、ぜひ継続してみてください。

物書きならきっと誰もが、自分なりの執筆スタイルを確立させるために努力を続けていることでしょう。小説は自由度が高すぎるために、自分なりの手法を誰かと共有することも少なく、いわゆる「メイキング」などもほとんど見かけることがありません。

しかし、それでもどこかには、自分と通じるスタイルを持った迷える誰かがいるはずです。

今回の記事がそんな方の目にとまり、悩みをうまく解消できたとすれば、これほど嬉しいことはありません。

そしてこの記事を読んでいる皆さん! 「自分にもこんな方法論があるぞ」という方は、ぜひ身近な誰かに話したり、ネットで公開したりしてみてください。それはきっとどこかの誰かにとって、進むべき道を照らしてくれる希望の光となるはずですから。

あ、もしよかったら「蓼食う本の虫」にも寄稿などしてみてくださいね(宣伝)。それでは!

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