遺伝子の謎とバッハの『ゴルトベルク変奏曲』をめぐって紡がれる、2組のラブストーリー / リチャード・パワーズ『黄金虫変奏曲』
遺伝暗号の解読と、バッハの『ゴルトベルク変奏曲』。この2つを軸に展開されるロマンス、そして壮大な知の世界。こんなに読み応えのある小説が他にあるだろうか? 本書『黄金虫変奏曲』を読んでいると、そう思わずにはいられない。世界…
遺伝暗号の解読と、バッハの『ゴルトベルク変奏曲』。この2つを軸に展開されるロマンス、そして壮大な知の世界。こんなに読み応えのある小説が他にあるだろうか? 本書『黄金虫変奏曲』を読んでいると、そう思わずにはいられない。世界…
『掃除婦のための手引き書』はいくつかの点において目を引く書物だ。まず小説らしからぬそのタイトル。それから装丁。モノトーンを基調とした表紙には、往年のハリウッド女優と思しき美女の、白黒のポートレートが印刷されている。 興味…
1920年代の「失われた世代」の作家の一人であり、アメリカ文学を代表する小説家、F・スコット・フィッツジェラルド(1896-1940年)。死後の再評価運動によってその文学的名声は確固たるものとなり、いまではヘミングウェイ…
フランスの天才詩人、アルチュール・ランボー(1854-91年)。 日本においても、彼の詩はいまなお読まれ続けている(最近、岩波文庫からフランス詩人選シリーズが刊行されはじめたけれども、その第1弾はランボーである)。 詩そ…
本書を読んだきっかけは、寺田寅彦だった。 それは書店で山積みになっていた本書をふと手にとったときのことである。ページをめくると、参考文献として寺田寅彦の全集および関連書が3冊挙げられているのが目に入り、思わず興味をそそら…
今節、ヴァージニア・ウルフ『波』の新訳(森山恵訳)が45年ぶりに刊行された。『波』は、1931年に発表された、ウルフの7作目の長編小説である。 ウルフの小説といえば『ダロウェイ夫人』や『灯台へ』がまず挙げられ、『波』は知…
ジョン・コナリー『キャクストン私設図書館』は、本や物語をテーマにした4編を収録した短編集である。いずれも読書家ないし愛書家の心をくすぐる作品だ。 表題作である『キャクストン私設図書館』は、さまざまな物語の登場人物たちが実…
2017年にノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロ。『クララとお日さま』は、受賞後にはじめて出版された長編小説になります。まるで絵本のようなタイトル、可愛らしいカバーイラスト。中を開けると、児童文学のような文体。これま…