こんにちは。創作サークル綾月の進常わんぷです。
こちらの名義ではパッとしませんが、別名義では商業レーベルで二作ほど出版し、また某小説コンテストで特別審査員を務めさせていただきました。 作文の実力はともかく、ある種の経験値はあるといえましょう。
その経験から、ひとつの提案をさせてください。
ウェブ小説の昨今
ここ二、三年、プロではない方々のウェブ投稿小説を読んでいて感じるのは、そのレベルの高さです。いまや読むに堪えない下手くそなんていう方は珍しいほうで、全体の一割にも満たないのではないでしょうか。
ネットを介して読みやすさ重視の小説作法が伝播し、また書き手のほうも読者を意識して、それらの作法に従った結果でしょう。全体的に悪文が減り、読みやすい作品が増えました。
そのいっぽうで、次のような声が囁かれはじめています。
『没個性であじわいがない』
昔は読みやすい文章を書く、書ける、というのはそれだけで作家の個性とみなされていました。現在では全体的なレベルが上がり、そうもいえません。
多くの方が読みやすい文章を書けるようになった結果、誰の作品を読んでも同じように見える、面白味が減った、というのです。
確かに、そういう面が目立ちはじめたようにわたしも思います。ここでひとつ、昨今流行りの文体、読みやすいとされる文章を書くための注意点を復習してみましょう。
読みやすい文章とは
読みやすい文章とは、いったいどんな文章でしょうか?
- センテンスを短く
- 平易な言葉で
- わかりやすく表現
- 語尾に変化をつける
短くまとめるとこんなところでしょう。
じつのところ、これらのコツは知ってしまえば実践するのに難しくなく、なおかつ非常に効果的な文章作法です。これから文章を書いて発表していきたいとお考えの方には参考にしていただきたいと思います。
常に読者を意識し、たくさんの練習を重ねて読みやすい文章を書けるようになっても、今度は「個性がない」「あじわいがない」と言われてしまいます。
どうしたものでしょうか。
すべての人に向ける必要はない
何百万部も売るラノベは、一作で女子小学生から中年男性をも魅了するのかもしれません。しかし、ウェブ小説を好む読者の方々はそういう優しすぎる話にうんざりしているような傾向が見えます。
ウェブ小説の読者は読み慣れています。少々センテンスが長かったり、難解な言葉を使ったりしても、魅力を感じてくれれば読んでくれます。
その魅力とは「個性」でしょう。個性を発揮するために、もっと自由に書いていいと思います。
わたしが提案したい文章作法、ルールはたったひとつだけです。
『誰がなんと言ったかだけははっきりさせる』
これだけですが、これが意外とできていない。
演出でわざとそうしている場合を除き、誰が言ったセリフかはっきりわからないというのは、読者にとって大きなストレスです。紛らわしい故に読者が読み違いをしてしまっては話の意味まで変わってきます。
「誰が言ったセリフか」は、読んでいてすぐ、頭を使わないでもパッと理解できるようでなければなりません。いちいちこのセリフを言ったのが誰なのか推測しなければならないのは、楽しい経験ではないでしょう。
簡単な方法でそのような状況を避けられます。
読者の混乱を避けるテクニック
このように読者の混乱を避けるためには、 じつに単純な方法があります。
「」の前に、○○は言った、と書いてしまえばいいのです。
「わたし、このやりかたが合ってるみたーい。どう思う?」
あかねは呆れたように答える。
「あんたってホント変態……」
「ひどい! 見下げ果てた目つきってそういうの?」
「顔に出ちゃうよね、正直だから……」
これなら間違えようがありません。あまり美しくない、という理由でこのような記述を嫌う人もいます。しかし、そういう人は往々にして、「誰がなにを言っているかわからない小説」を書くのです。
さらに洗練されたテクニック
「いーよー、もっと足開いてー」
「えー、もう限界だよー!」
「なにいってんの、まだまだでしょー」
だいたいの人は「いーよー、もっと足開いてー」をあかねの台詞だと読み取ってくれたのではないでしょうか。実際、そのように想定して書いたものです。
ポイントは「台詞」の前に、台詞を言う人物の行動なり描写なりを配置する、ということです。
先に述べた「○○と言った」という記述を避けたい人々は、こういう描写がしたいようなのですが、基本ができていないので、うまくいってなかったりします。
基本を押さえた先の自由
今回提示させていただいたテクニックは、昨今流行りの「読みやすい文章」を書く方々がさらに読みやすい文章を書くテクニックとして使えます。それももちろん良いことなのですが、提案の本意は別のところにあります。
ウェブ小説の読者は、「誰がなにを言ったか」だけはっきりさせておけば、かなりぶっ飛んだ文体でも読んでくれます。魅力さえあれば。
ですから、読みやすい文章を書けるようになった先に、個性を追求していってもらいたいのです。
ルールはひとつだけ。あとは自由に突き進んでみるのも、おもしろい結果をもたらすかもしれませんよ。
まとめ
『読みやすいだけ』では作品が埋もれてしまいがちです。
『誰がなにを言ったか』だけははっきり示して、ほかは自由に個性を追求してみましょう。
じつのところ、商業デビューを狙っている方にしても、この点は重要なものだと思います。
それでは、エンジョイ創作ライフ!
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