文芸好きのための読書ノートの書きかた

「購入」が書けなくなった私

皆さんは普段どのくらい手書きで文字を書いているだろうか? 私は書きものは、ほとんどPCで済ませている。

ある日、私の同人誌をお買い上げいただき、一筆箋を書こうと思ったところだった。

「ご購入ありがとうございます」

この「購入」が書けなかった。私はいちおう高等教育を受けているし、漢字検定の準2級も持っている。しかし手書きで文字を書かないと、その能力は次第に衰えていく。高校時代に「憂鬱」の書きかたを必死に覚えていたが、幾星霜。キーボードで文字を打つことに慣れすぎてしまった。

読書ノートを手書きで書くことのメリット

手書きで「購入」が書けなくなったことに私はショックを受け、とにかく手書きで文字を書く機会を増やせるように、長めの文章を書く習慣を身に着けるべきだと思った。

はじめは日記を書こうと思ったが、私の日常は平凡なものなので、毎日書かねばならない日記は挫折をしてしまいそう。そう思って、3~4日に1冊は読み終わる本についてのノートを書こうと決心した。

実際に読書ノートをつけはじめて、以下のような利点があると感じている。

①本の内容が頭によく入る
心を打たれた情景描写や心理描写が、するすると指から頭につながる感覚。このおかげか、文章の意味をより深く理解できるようになる。

②本の内容を忘れてもいい
あの本のあのぺージにはこんなことが書いてあったな、とノートを見ればすぐ思い出せる。
過去に読書アプリを何度か試してみたことがあったが、いずれもすぐに挫折した。それは物理的に読んだ記録が残らないからだ。読書ノートは、どれだけ本を読み、どう考えたかを、視覚的・瞬間的に教えてくれる。

読書ノートに必要なもの

とにかく文字を書くことにハードルの高さを感じてしまっていた私。
素敵に可愛く書かなくちゃ、字を綺麗に書かなくちゃ、デコらなくちゃ、などと雑念があった。しかし要は自分が読み返せればいいのだから、と最終的には開き直り、シンプルな形で読書ノートを書くことにした。

読書ノートを書くときには、以下のものを準備しておきたい。

当たり前すぎるが、読書ノートをつけるためには、まず読む対象となる本が必要だ。
今回はパトリシア・ハイスミスの小説『キャロル』と、梅棹忠夫の新書『知的生産の技術』を選んだ。

ペン

ペンは1色でいい。

ノートは色分けをした方がいいのか、と聞かれたら、私はNOと答えるだろう。

ペンは1色でいろいろな書き方ができる。線を引いたり、丸を書いたり、強調するときは字をなぞったりすればいい。色ペンを使って書き分けようとするとごちゃごちゃするし、読書ノートを書く頻度が高くない場合、何にどの色を使うのかといった規則性を忘れてしまう可能性もある。そのため、ペンは1色にしている。

私が使っているのは、お気に入りのカランダッシュのボールペン。

以前は無印良品良品の6角ボールペンを使っていたが、それを見かねた知人が昨年、このカランダッシュのボールペンを買ってくれた。

カランダッシュのボールペンは油性で、軸を変えられるという利点がある。

少々お高いが、私の好きな板チョコレートを模したペンで書くときはテンションが上がる。好きな筆記具を使うと、それだけで「書きたい!」という衝動にかられる。ちなみにカランダッシュのボールペン本体には様々な柄があるので、その中から模様を選ぶ楽しみもある。

しかし基本的にはペンは何でもいいと思う。

ノート

私は筆圧が強いので、裏移りが気にならないB5のルーズリーフを利用している。

出先で読書ノートを書きたいときに、ルーズリーフは一枚だけ持ち歩ける。荷物の量を減らしたいひとには最適だ。

最低限のメモをとるだけの場合、A5のノートもコンパクトでバッグの中でも邪魔にはならない。

付箋

最重要なのは付箋だ。

本の中に出てくる気に入った表現や言い回し、描写などに、とにかく付箋を貼りまくる。気になったら貼る。私は、今回取り上げる2冊の本に合計50枚の付箋を貼った。

本を読むことになるべく集中したいから、読書にノートを書くことはしない。けれど重要な点は押さえておきたい。そんな中で思いついたのが読んでいる途中で付箋を貼っていくことだった。

自分の胸を打った文章、重要な表現だと思ったところ、作者が強調したいだろうところ、私が覚えておきたいところ。とにかくちょっとでも引っかかりを覚えたら、付箋を貼る。付箋が貼られた箇所を見返すことで、ノートを書く際に、読書中の自分がどう読んだか、何を感じていたのか、そんなことたちが、立ちのぼってくるようになる。

私は無印良品の付箋を使っている。。粘着力がしっかりしていて、2回ほど使いまわしがきく。

植林木ペーパー付箋紙・8本入 30×10mm・4色・8本・各100枚

付箋選びのポイントは、文庫本にあわせて幅や高さが小さめのものを選ぶことだ。

また、バッグやポケットの中でバラバラになるのを防ぐため、缶に入れて持ち運ぶのがおすすめだ。缶は蓋つきがいいと思い、スター・バックスのアフター・コーヒー・ミントの缶を再利用している。

とにかく気になる文章があったら、付箋を貼っていく。これが読書ノートを書く前に必要な作業だ。

バインダー

書いたルーズリーフをまとめるためのバインダー。私は無印良品のB5のバインダーを使っている。

私が無印良品のものを使って読書ノートをつけているのには、ささやかな理由がある。安価に揃えることができ、見た目の統一感があるからだ。

同じメーカーのノートやルーズリーフ、付箋などを使うと、整頓が苦手な私でも、綺麗に大切に使おうと思えてくる。

読書ノートに使うアイテムとして、基本はこれだけ。他にも、読書台、プリンタ、マスキングテープなどもあると便利だが、これは適宜に使うものなので、「絶対に必要!」というわけではない。

読書ノートを書く(小説編)

では、さっそく読書ノートを書いていきたいと思う。

書いていく項目は以下。

①本の情報(本の題名・著者・出版元)
②読了日
③あらすじ
④感想
⑤引用(必要なら)
⑥メモ(必要なら)

とにかく「いつ・どんな」本を読んだのかは、大事だ。私の読書ノートのとりかたは日記とは違って、記録に近い。文学的な表現をすることなく、最低限のことを書く、ということを目標を設定している。なので⑤引用や⑥メモは書かないときもある。

①本の情報

何を読んだが一目でわかる方法を最近知って、読書ノートに導入した。

それは、表紙を縮小印刷してノートに貼るという方法だ。

このようにするとノートが一気に見やすくなる。

そして本の情報を書く。私は、本の題名・著者・出版元を書くようにしている。

プリンタがない場合は、四角い枠を書いて本の題名だけ大きめに書いておけば見やすくなる思う。

②読了日

本を読み終えた日も記録しておく。ミッフィーのマスキングテープは私のなかに、かすかに残る乙女こごろ。読了日が見やすくする考慮と言っておく。

③あらすじ

読書ノートを書くにあたって、いくつか難しいことがある。何を書けばいいかわからなかったり、特に心が動かされなかったりした本はどうやって書くかだったり。そして私にとって一番難しいのは、はあらすじを考えることだ。

あらすじを飛ばして感想や引用を早く書きたい! しかし後から読書ノートを読み返すときにあらすじは重要になるので、残しておきたい。この問題の解決方法は、文庫本の裏側にあった。

文庫の裏表紙にはちゃんとあらすじが書いてある。私は、これをそのまま書き写すことにしている。

④感想

感想を書く際に、構造的かつ文学的な言葉で書く必要は全くない。本を読んだときの感想を自由に書くだけだ。多くのひとが頭を悩ませた読書感想文のように体裁を整える必要はないので、断片的であったり、1行だけであったりしてもいい。

小説を読んでで連想した他の作品の情報なども書いておく。

今回読んだ『キャロル』は2015年に映画化されており、そちらも見ていたので、本と比べて映画はどのように変わっていたか、また変わっていなかったか、を書いてみた。

また、岡崎京子の『恋とはどういうものかしら?』(マガジンハウス)に収録されている「BLUE BLUE BLUE」という作品を連想した。

キャロル同様、倦んだ専業主婦が酒に溺れつつ、若い男性と情熱的に愛しあう、という話だ。キャロルとテレーズが違う形で出会っていたら……と考えた。

ここまでが最低限の読書ノートの内容だ。この内容なら始めやすいし、小さいA5のノートでも構わないだろう。

⑤引用(必要なら)

ここから付箋の役割がさらに重要になってくる。まずは、ぺたぺたと貼った付箋のところを読み返す。

こうすることで、自分にとって大事なところを再読していることになる。

今回の『キャロル』総ページ数462ページ。私は17枚、付箋を貼った。

その中から3~5したり内容を、気になった文章をピックアップして書き写す。さすがに17箇所すべての内容を書くのは大変だ。自分が本当に大切だと思える文章を選ぶことで、取捨選択したり内容をまとめたりする能力も伸ばせる。『キャロル』のページ数なら、今回は3箇所。そのくらいが妥当だと思う。前後の文脈もメモしておく。

書き写すときに大変なのが、本のページを開いておくことだ。

そこで導入したのが読書台。読書台というと立派で、高いというイメージがあったが、私の使っているのはDAISOで買った200円のもの。使用しないときはコンパクトに折りたためる。

とにかく最低限の道具で読書ノートを書くことを心がけている。

⑥メモ(必要なら)

小説本文を読み終わった後、本をそのまま閉じてしまうのはもったいない。

本の最後に書かれているあとがきや解説文には、本文からは読み取れない、小説が書かれた時代背景などの情報が多い。それらの情報をメモしておくのも重要だ。

今回は、訳者あとがきで『キャロル』の発表当初の題名は別のものであったという大きな発見があった。

あとがきや解説をあなどってはいけない。

完成したノートがこちら。

謙遜ではなく本当に乱筆だが、読書ノートは日記のようなもの。自分が読み返せればいいので、字が下手でも気にしないのが基本だ。

読書ノートを書く(思想書・評論編)

次は評論本を読んでみよう。今回は、『知的生産の技術』という新書を選んだ。

付箋を貼った数は34枚。批評や評論には、作者の意見を主張が満載である。知らないことも多く、小説よりも付箋を貼る枚数が多かった。

この本は知人から借りた本なので、折り目や書き込みは厳禁だ。こういったときに付箋の特徴が生きてくる。

さっそく読書ノートを書いていこう。

①本の情報(本の題名・著者・出版元)
②読了日
③目次
④要約と考えたこと
⑤まとめ

①と②は小説と同じなので、割愛する。

③目次

小説と違って評論系の本は目次が大事で、そこには最低限の著者の主張が載っている。
目次を書くことによって、④の「要約と考えたこと」が書きやすくなる。

④要約と考えたこと

付箋の数が少ないときは本文の一部を抜粋して書くのもいい。しかし要約の方がわかりやすいときもある。

私も今回、目算を誤って最初の方は引用していた。

しかし要約のほうがいいと思い、途中から要約に切り替えた。

よくよく考えたら要約どころではない。簡略化なのかもしれない。他人が読んでもわからないだろう。

思想書・評論本の初読時に重要なのは、「どこに何が書いてあったかを把握する」ことだ。本全体の流れを読み、重要な単語や固有名詞を書いておくのが重要だと、私は思う。

写真を見ていただければわかると思うが、☆や〇が書いてある。

これは目次に沿って、各章ごとに☆=考えたこと 〇=思ったこと という風に区別している。

⑤まとめ

本全体の要約または簡略化を書く。思ったことも、まとめて書いてもいい。

今回、私は書き言葉の近代の歴史に興味を持った。様々な表記の仕方に、今、自分が書いている文章がある、と思うと書き言葉の重みを感じた。

書きあがりがこちらだ。

新書なので2ページに収まったが、長い評論本を読むときにはもっとページ数が必要だろう。

ノートに書くページはなるべく少ない方がいいと思う。だらだらと書くのは、本の流れを遮断する。400ページある本でも、せめてもルーズリーフ6枚に収めたい。

おわりに

読み終わったら、付箋はすべて取り外す。

再読するときに、どうしても付箋が気になってしまう。なので、読了後は付箋は外す。私は付箋をはがす快感のために読書ノートをつけているようなものだ。

自分の読書ノートは日々、進化する。臆することなく、私の提案した読書ノートの書き方を改良して欲しい。私も変えていくつもりだ。


表紙をカラー印刷することと、あらすじを裏表紙から写すというアイデアはYouTuberのふたばさんの動画から拝借した。このアイデアを今回の記事に使うことを快諾してくれた、ふたばさんに感謝を。