電子書籍のメリット・デメリットについてアンケートで聞いてみた

スマートフォンやタブレット端末の普及により、ここ十数年で「電子書籍」という言葉はかなり身近なものになってきました。TwitterやWebメディア上では電子書籍のセール情報が飛び交い、すでにたくさんの電子書籍を買っている方もいるでしょう。

一方で、電子書籍のメリットやデメリットが分からず、まだ購入したことがないという方もいるはず。そういった方のために、本サイト「蓼食う本の虫」のTwitterアカウントでアンケートを実施してみました。

総回答数は83件。メリット・デメリットをそれぞれ集計しましたので、回答数が多い順に紹介していきます。

(なお、本アンケートは複数回答可となっており、得票パーセンテージを足しても100%にはなりません)

電子書籍のメリット

まずは、電子書籍のメリットからです。

かさばらない(64.3%)

電子書籍のメリットとして最も多かったのは「かさばらない」「保管場所が必要ない」といった意見でした。

紙の書籍の場合は蔵書が増えれば増えるほど家の中にスペースを必要としますが、電子書籍の場合は、1台の端末で多くの書籍を参照することができます。紙の書籍を電子書籍化する、いわゆる「自炊」と言われるものも、増え続ける蔵書に対処するための手段といえるでしょう。

どこでも読める(51.2%)

続いて多かったのが、「どこでも読める」「持ち運べる」といったもの。これは、最も多かった理由である「かさばらない」の恩恵を受けたものといえるかもしれません。

電子書籍を読む場合、多くの方はスマートフォンを使うでしょう。スマホはどこへでも持ち歩くことが多いため、ちょっと空いた時間にすぐ読んだりできます。紙の書籍の場合は特定の本を持ち歩く必要がありますが、電子書籍の場合は、思いついた本をすぐに探して読めるのが便利ですね。

セールがある(11.9%)

ここまでに比べるとぐっと割合が減りますが、第3位は「セールがある」「割引がある」というものでした。

紙書籍は、再販売価格維持制度があるので新刊が割引の対象となることはありません。どこでいつ購入しても同じ値段です。ところが、電子書籍はこの制度の対象外なので、電子書籍ストアごとにセールが開催されています。

本サイト蓼食う本の虫でも、Kindleを中心に電子書籍のセール情報を配信しておりますので、よろしければご覧ください。

また以下の記事では、なかなか探しづらいKindleのセール情報の探し方を解説しております。

Kindleセールはいつ開催されているのか 探し方・見つけ方を解説します

すぐ買える(11.9%)

同じく第3位になったのが、「すぐ買える」「すぐ読める」といった理由。

紙書籍の場合は、書店へ買いに行ったり、届くのを待ったりする手間があります。一方で電子書籍の場合は、思い立った時にすぐ買えてすぐ読めるというのが利点。ゲームもダウンロードコンテンツが当たり前になって、解禁後すぐに遊べるようになっていますが、これと似たような感覚でしょうか。

検索できる(10.7%)

第5位には「検索できる」という理由がランクイン。たしかに、該当する単語を覚えていればすぐに検索できるのは電子書籍ならではの魅力ですね。

専門書には索引がついているものもありますが、電子書籍であれば索引に頼らずとも気になるキーワードが記載された箇所を見つけることができます。

拡大できる(10.7%)

同率5位で、「文字などを拡大できる」と答えてくださった方も複数人いらっしゃいました。

紙の場合は版元によって文字サイズが異なっており、細い字だとあまり読書がはかどらなかったりするので、たしかに文字サイズが可変なのは嬉しいですね。

文字サイズは別に大きくなくても良いという方は、逆に「縮小できる」というのもメリットかもしれません。ページめくりの回数を抑えたりすることができます。

劣化しない(9.5%)

文庫本などを鞄の底でぐちゃぐちゃにしてしまうことがよくあり、たしかに電子書籍は汚くなりようがないので良いなと思いました。

暗いところで読める(6.0 %)

バックライトがあるので、暗くても読める! 布団の中で読んでいる方が多いようです。

本の管理が楽(6.0%)

紙の本は本棚のどこにしまったのか分からなくなったりしますが、電子書籍はタイトルで検索ができるので、所有している本の管理が楽ですね。

しかし逆に「電子書書籍は管理が面倒」という意見もあり、詳細はデメリットの方で……。

メリットまとめ

そのほか、「お風呂で読める」「マーカーを気軽に引ける」「売り切れ/絶版になりにくい」「他の人に何を読んでいるか悟られない」などの理由も挙げられていました。

電子書籍のメリットの根源は、やはり「物理的な制約がゆるいこと」にあるように思います。これによって何冊でも持ち運ぶことができ、いつでもどこでも読めるように。さらに、端末にバックライトや防水機能がついていることによって、暗いところやお風呂にも持ち込むことができます。

空いた時間をすべて読書に費やしたい、という方にとって電子書籍は強い味方になることでしょう。

電子書籍のデメリット

さて、次はデメリットについての紹介です。

所有権の不安(34.5%)

電子書籍のデメリットとして最も多くの方が挙げていたのが「所有権の不安」でした。

電子書籍購入サイトが無くなれば、所持していたはずの本も消えてしまうこと。

所有ではない(サービス終了や筆者のスキャンダルなどでアクセスできなくなる可能性がある)

データのため、クラウドや配信サイトの都合といった第三者の方針で閲覧不可、勝手に内容更新される可能性。

サービス終了になったときダウンロードできてなかったのが読めなくなった……(ガラケー時代)

一般的に、電子書籍は購入した書籍の利用権を得ているだけなので、販売元のサービスが終了すればその書籍を読めなくなるリスクがあります。もちろん、紙の書籍でも汚損や紛失のリスクはありますが、電子書籍の場合は一気に本を失う可能性があるというところが怖いところ。

そのため、電子書籍を購入する際は、サービスを長期的に運営できる体力があるところを選ぶのがおすすめです。とはいえ、やはりサービスがいつ終了するかは誰にも分からないので、このようなリスクがあるということは覚悟して使う必要があるでしょう。

貸し借りができない(25.0%)

続いて多かったデメリットが「貸し借りできない」というもの。

紙書籍の場合、1冊の本を複数人で貸し借りして読むことで経済的なメリットがあります。しかし電子書籍の場合は1人1冊買わなければならない。メリットのところでもゲームの話をしましたが、これも同じような関係性がありますね。パッケージ版は1本のソフトを皆で貸し借りして遊べるけれど、ダウンロード版は1人でしか遊べない……。

物理的な楽しみがない(23.8%)

3番目に多かったのは、紙書籍のような物理的な楽しみがないというもの。寄せられた意見を読んで、皆さん紙の書籍を「読む」以外に様々な方法で楽しんでいるんだなということが分かりました。

装丁の楽しみが薄れる

所狭しと並んだ背表紙からお気に入りを発掘する作業がないこと。

紙を捲る感触が指先にない

「お気に入りのタイトルを部屋に置くことで空間を掌握する」ことが出来ない

汚く読んで「自分だけの本」にしづらい。

吸えない

本の表紙や材質を楽しんだり、本棚に並べることでコレクション欲を満たしたり、紙をめくることで安心感を得たり、新刊の独特の匂いを嗅いだり、と紙の書籍でしかできないような楽しみ方がたくさんあることが分かります。

目的のページを探しづらい(21.4%)

「目的のページを探しづらい」という意見も20%超とそれなりに多かったです。

紙書籍の場合は、「あれはだいたいこの辺に書いてあったかな……?」とあたりをつけて開くことができますが、電子書籍にはそれができません。また、頭からスクロールしていくのが結構面倒くさい。

電子書籍のメリットに「検索できること」がありましたが、該当箇所のことをぼんやりとしか覚えていない場合は、検索ではなく紙書籍でパッと開いた方が便利。となると、広い意味での「検索性」は、電子書籍と紙書籍にそれぞれ一長一短がありますね。

本を買いすぎる(15.5%)

第5位として、「本を買いすぎる」「本を積みすぎる」という理由が挙げられていました。

電子書籍は物理的な存在がないので、どれだけ買っても罪悪感が薄いんですよね。さらに、セール情報などが流れてくると「今買っておかなければ損だ!」という気持ちがはたらいて、さらに買ってしまうことに。

これは僕の体験からくるアドバイスなのですが、紙書籍を積んでしまう癖がある人は、電子書籍に手を出すともっと積んでしまうと思うので、気をつけた方が良いと思います。本当に。

電子書籍のデメリットまとめ

そのほかのデメリットとしては、「目が疲れる」「文字が読みづらい」「複数のページを開けない」「売れない」「充電切れの不安」などがありました。

個人的に面白かったのは、「持っている本を把握しづらい」という方が7.1%もいらっしゃったことです。「本の管理が楽」をメリットとして挙げている方が6.0%だったことを考えると、ほぼ同数の方が電子書籍の管理に不満を覚えていることに。

その原因としては、主に「複数サービスを使う」ことに起因しているようです。たしかに色々なサービスを使っていると、「あれはどこで買ったんだっけ……?」と探すところから始まってしまいます。個人的には、本棚から探すのと複数サービスで検索をかけるのは同じくらいの手間だと思っているのですが、それは僕が主に2つしか電子書籍サービスを使っていないからかもしれません。

なお、複数の電子書籍ストアを使う場合は、ジャンルごとに分けてしまうのが一番管理しやすい方法かなと思います。具体的に、僕はKindleで小説などテキスト系を購入し、DMMブックスで漫画を購入するようにしています。Kindleはこまめにテキスト系の書籍のセールをするのでそこで積んでおき、DMMブックスは年に数回ある大規模セールの時にまとめて買っています。

KindleとDMMブックスの比較については以下の記事でも書いておりますので、よろしければご覧ください。

電子書籍はKindleとDMMブックスどちらがおすすめ? 比較してみました

デメリットを俯瞰してみると、やはり「電子書籍は物理的存在ではない」ということに起因するものが多いように思いました。本を「情報」として捉えるのであれば、大量にどこへでも持ち運べる電子書籍の方が便利なのですが、本を「もの」として捉えるのであれば、紙書籍の方が楽しみ方が多いといえるでしょう。

コメントまとめ

アンケートの最後に自由記述欄を設けましたので、そちらにいただいたメッセージを紹介していきます。

電子書籍・紙の書籍それぞれ違うベクトルでの自由度があるんだな、とアンケートで改めて考えることができました

アンケートを集計してみて、本当にこの一言に尽きるなと思いました。目的に合わせて、電子書籍・紙書籍を購入するのが一番幸せになれるような気がします。

漫画やビジネス書、雑誌など内容が高度でないものやあまり高頻度で読み直さないものは電子書籍、専門書や資料、辞書、一部の漫画など指差し読み、書き込みをするもの、紙で持ちたい物は紙の本を買っている。

電子書籍と紙書籍の使い分けとして、この方法はとても良いですね。僕もビジネス書は電子書籍で買って、空いた時間で少しずつ読んだりしています。専門書などじっくり読むものは、紙で買ったほうが集中できる気がしますね。これは気分の問題かもしれませんが、読書効率には気分が大事なので……。

本当は紙の方が好きだけれど、家が狭いので最近は電子書籍を買うようにしています。

僕も手元に四次元ポケットがあれば、電子書籍をやめて紙書籍ばかり買っているような気がします。

部屋に置いて風水のように磁場を良くしたい本は紙で買って、ただ読みたいだけの本は電子書籍で買うようにしています。全て電子書籍に移行したいと引っ越しの最中に思ったりもしますが、「自分だけの最強の本棚を育てる」のが趣味なところがあり、今は完全に移行するのではなく使い分けています。

本棚を育てるのとっても楽しいですよね。引っ越しの時に「これを運ぶのにとんでもないお金がかかるんだけど……?」とびっくりしたりもしますが、家の中に大量の蔵書があるのはやはり楽しいものです。好きなイラストレーターさんが表紙を描いている本は面陳する、みたいな楽しみ方もできて最高。

電子書籍専用端末を買ってから、基本的に小説などは電子派です。 まだ紙の本に比べたら快適ではないところもあるけど、紙を見てるのと同じくらい目にやさしくて読みやすいですよ。 「電子書籍を利用したい、でも液晶で目が疲れるのはちょっと……」って人にも、電子書籍専用端末って選択肢があるよって伝えたいです!

電子書籍専用端末は結構良い製品で、僕も所持しています。自宅で使うとかなり便利なのですが、外で読みたいときはスマホとは別に持っていかなくてはならないので、そこが多少デメリットかなと思っています。でも、そんなこと言ったら紙の場合はその本を持っていかなくてはならないし……。あ、でも紙の書籍は電池のこと気にしなくて良いから……。といったことをいつも考えています。

なお、電子書籍専用端末については、以下の記事もありますのでよろしければ。

電子書籍にじっくり向き合いたい人のための読書専用端末 Kindle Oasis

書籍含む購入したコンテンツがサービス統合時に全部無しにされ、クレームを入れてもご容赦くださいで終わったことがあります。なのであまり買いたくないです。

電子書籍は、やはりこれが一番怖いなと思うんですよね……。僕はまだ経験したことなので自分事になっていないのですが、実際に起こったらトラウマになりそうです。

小説は電子でもいいけど、漫画は縦書きのものでなければ、未だに見開きのシーンで躓くので場所を取ろうが紙がいいと思ってしまう。

僕も同じような悩みを抱えていたのですが、iPadで読むと見開きでも表示できて、「むしろページまたがっていないのでこちらの方が体験良いのでは……?」と思ったりしました。追加で出費が必要なので、そこまでする必要があるのかと悩むところではありますが。

表紙などを含めた本一冊丸ごと楽しみたいので本は全て紙書籍で揃えてますが、唯一の難点は引越しが物凄く大変で困ります。沢山の本を楽に移動できる技術があれば心置きなく買えるのですが……。 実用書や参考書は電子で小説や漫画などは紙という感じで使い分けてます。

最近引っ越しをしたのですが、本が多くてたしかに大変でした。これを機会に処分したのですが、古本として売っても値段がつかない場合も多いので、これなら「売れない」というのも個人的にはデメリットになりづらいなあと思いました(処分した際の顛末は以下の記事にまとめています)。

引越しの見積もりが怖かったので700冊の古本を宅配買取してもらいまいした

巻物から綴じ本になる時にもこういう話してたりしたのかなぁ、て思ってフフって笑ったりしてます。昔『作者に黙って電子書籍を配信して出版社が利益全取りしてた』と聞いた頃は電子書籍なんか買うかって思ってましたが、あまりの利便性に負けました。とにかく部屋を圧迫しないのが本当に有り難くて、本置く場所がない人は全員電子デビューしたらいいんじゃないかと思いました。 あと私は電子推しですが、好みの本は紙でも買うので、『両方』という選択肢があると思います。

巻物は使ったことがないのでメリットが分からないのですが、たしかに当時の人からしてみると、僕らの想像もつかないようなメリットや愛着があったのかもしれませんね……。両方買うということに関しては、僕も文芸誌で買ったものを単行本で買ってさらには文庫で買ったという経験もあるので、用途によって電子・紙どちらも買うのはかなりありだなと思っています。

書籍を買えば電子書籍も付属するサーヴィスがほしい

僕も同じことをよく考えるのですが、電子書籍だけ欲しい人が紙書籍の方をすぐに売るみたいなことがあるので、難しそうだなあと思います。ただ、hontoには「読割50」といって、対象の紙書籍を購入してから5年間は電子書籍が50%OFFで買えるサービスもあるので、こちらを使ってみるのも良いかもしれません。

さいごに

電子書籍にはメリット・デメリットの両方がありますが、紙書籍と使い分けて適材適所で使っていくのが良いのかなと思っています。

個人的に、小説は紙で読まないと読んだ気がしないのでまだ紙で買っていますが、電子書籍に慣れていくにつれてそちらで買うようになっていくのかな……と思ったりしています。しかし、レビューを書く時に目的のページが探しづらいので、やはりしばらくは紙かも……?

いずれにせよ、電子書籍と紙書籍のどちらが優れているということもないので、電子書籍をなんとなく敬遠していたという方は、これを機に何か1冊電子書籍で買ってみるのはいかがでしょうか。

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